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p.30 抽出テキスト

6.8 低リスク群にさらなる 循環器関連検査をすることの是非

RCRI で低リスクとされた場合,さらなる循環器関連検査の妥当性が検証されている.BNP に関しては,RCRI を含むリスク評価モデルで低リスクと分類された患者では, BNP 高値で適切に高リスクと再分類されたものが1.1%,不適切に高リスクと再分類された患者が8% と,さらなるリスクの層別化への意義が低いことが示された139).冠動脈CT や心エコーに関しても同様のことが報告されている25, 90)(第2 章5 安静時経胸壁心エコー図検査,9  冠動脈CT を参照).RCRI で低リスクとされた場合,ルーチンではさらなる心臓精査は推奨されない(推奨クラスIII No benefit,エビデンスレベルB).

周術期リスクスコアに関する推奨とエビデンスレベルを表18 に示す.

7 BNP,NT-pro BNP の役割(表19)

主として心室で合成される心臓ホルモンであるB 型ナトリウム利尿ペプチド(BNP),およびB 型ナトリウム利尿ペプチド前駆体N 端フラグメント(NT-pro BNP)は循環器診療において広く使用されているバイオマーカーである.こうした指標を周術期の心血管イベントの術前リスク層別化に用いることについて検討が行われている.アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬はBNP 値に影響を与える可能性があり注意する140).

7.1 術前のBNP,NT-pro BNP 値と 周術期心血管合併症

下記のようなエビデンスが示されている. NT-pro BNP 値277.5 pg/mL 112), 300 pg/mL 139), BNP 値92 pg/mL 139), 116 pg/mL 112) とカットオフにばらつきがあるが,それら以下であれば,周術期の全死亡,急性心筋梗塞,心臓死の発生率はいずれも低くなっている79, 112, 139, 141, 142).一方,高値であればリスクは上昇する.10,402 例の非心臓手術(血管手術,非血管手術)の前向きコホート研究(VISION 研究)で,術前NT-proBNP 値が<100 pg/mL, 100 ~200 pg/mL, 200 ~1500 pg/mL, >1500 pg/mL と上昇するとともに,周術期全死亡は0.3%,0.7%,1.4%, 4.0%,急性心筋梗塞(術後ルーチンにトロポニン測定)は1.5%,2.5%,6.7%,12.6% と上昇した141).

非心臓大手術を受ける40 歳以上で心合併症のリスクを1 つ以上有する1401 例を対象に行われたMETS 試験で,術前NT-pro BNP 値は,副次評価項目である術後30 日以内の死亡もしくは心筋傷害,および術後1 年以内の死亡の有意な予測因子ではあったものの,主要評価項目である術後30 日以内の死亡もしくは非致死的心筋梗塞の予測はできなかった(RCRI で調整)

79).本試験におけるイベント発

生率が,わずか2% と比較的低リスク症例を多く含む試験であったことが,予測できなかった一因の可能性がある.

7.2 術前BNP,NT-pro BNP の カットオフ値

周術期心血管イベント予測のためのBNP/NT-pro BNP至適カットオフ値は試験ごとに算出されているが,その値は患者背景や,エンドポイントによりさまざまである.18の試験を用いて行われたメタ解析で,術後30 日の死亡および非致死的心筋梗塞を予測するBNP/ NT-pro BNP カットオフ値は,BNP 92 pg/mL(95%CI 38-133),NT-pro

表19 術前BNP とNT-proBNP に関する推奨とエビデン

スレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

中,高リスク手術において,臨床的リスクにて上昇リスク群(例 血管手術でRCRI 1 項目以上,非血管手術2 項目以上)では,さらなるリスクの層別化にBNP またはNT-pro BNP の測定を考慮してもよいIIb C BNP: B 型ナトリウム利尿ペプチド,NT-pro BNP: B 型ナトリウム利尿ペプチド前駆体N 端フラグメント付帯事項:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬はBNP値に影響を与える可能性があり注意する.RCRI(Revised Cardiac Risk Index)「低リスク群」に測定する意義は低い

表18 周術期リスクスコアに関する推奨とエビデンスレベ

ル

推奨クラスエビデンス

レベル

術前リスク評価にはRCRI を使用するI B非血管手術ではRCRI 0 ~1 項目,血管手術では0 項目であれば,ルーチンには,さらなる心臓に関する術前精査は推奨されないIII No benefit B