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p.27 抽出テキスト

表14 術前12 誘導心電図に関する推奨とエビデンスレベ

ル

推奨クラスエビデンス

レベル

低リスク手術でのルーチンの術前12 誘導心電図は推奨されないIII No benefit B

必要である.

5 安静時経胸壁心エコー図検査

経胸壁心エコー図検査(TTE)は簡便かつ非侵襲的にリアルタイムに心機能,弁膜症の重症度などを評価することができる.

5.1 術前TTE と周術期アウトカム

カナダの健康保険データベースで中~高リスク手術患者を対象に傾向スコアをマッチさせた2 群(術前心エコー施行群 vs 未施行群)で比較したところ,施行群で未施行群よりも死亡率が低下することは示されなかった88).

5.2 術前TTE 異常所見と 周術期心血管イベントリスク層別化

冠動脈疾患を有する患者または冠動脈疾患リスクが高い患者を対象に術前TTE の異常所見(左室駆出率低下や壁運動異常)の意義について前向きコホート研究で検討された.こうしたエコーの所見が,術後心血管イベント予測臨床モデル(血管手術,不整脈,冠動脈疾患,ジギタリス使用)に付加的な価値を示すことはなかった89).

一方,中~高リスク手術患者では,術前TTE で左室収縮能低下(左室駆出率55% 未満),左室肥大(中隔か後壁の壁厚が13 mm 以上),中等度以上の僧帽弁閉鎖不全症の存在,大動脈弁位での最大圧較差(40 mmHg 以上)が周術期の心血管合併症(心筋梗塞,うっ血性心不全)と関連するという報告もある90).

このように術前TTE 所見とリスクの層別化の関連に関しては一貫した結果は得られていない.

5.3 Revised Cardiac Risk Index(RCRI) と術前TTE

RCRI などによるリスクの層別化に術前TTE が,さらなるリスク層別化に役立つかについて報告されている.RCRI

における上昇リスク群,すなわち,クラスIII(RCRI 2 項目), IV(RCRI 3 項目以上)の患者群では,TTE にて異常所見を認めた患者で周術期心血管合併症が有意に多く(4% vs 16%),TTE によるリスク層別化の可能性が示唆された90).一方,Class I(RCRI 0 項目),II(RCRI 1 項目)の患者群ではTTE 異常所見の存在とイベントとの間に有意な関連性がなかった90).

このように上昇リスク群(RCRI 2 項目以上)では,さらなるリスク層別化に役立つ可能性がある.

5.4 術前TTE の適応と注意点

他国の診療ガイドラインでは,ルーチンの術前TTE に関して以下のような推奨になっている.ACC/AHA2014 ではルーチンの左室機能評価は推奨されない13).ESC/ ESA2014 では低~中リスク手術術前にルーチンの心エコーは推奨されない7).カナダ心臓血管学会2017 でも周術期リスク層別化のための心エコーは推奨されない14).

本診療ガイドラインでも,ルーチンの術前TTE は推奨されないとする(表15).

第1 章2 術前マネージメントで述べたように,手術の施行の有無にかかわらず,臨床的にTTE が適応になるような状況では検査を考慮してもよい.すなわち,原因不明の呼吸苦が存在する患者や,既知の心不全があり症状の悪化を認める患者に関しては術前TTE を施行することを考慮する13).

術前TTE から得られる情報は手術術式,麻酔方法の変更,術後管理において有用な情報を含んでいることがある.たとえば,高齢の大腿骨頸部骨折患者で術前TTE を行ったほうが,短期だけでなく,12 ヵ月後の予後も改善しうるという報告がある.これはTTE の結果に応じて術式の変更や周術期管理を行い,その際指摘した心不全,弁膜症に関して術後にも密な経過観察および治療介入できたことが要因とされる91, 92).総論として,より安全に非心臓手術を

表15 術前経胸壁心エコー図検査(TTE)に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ルーチンの術前経胸壁心エコー図検査は推奨されないIII No benefit C付帯事項:臨床的にTTE が適応になるような状況では検査を考慮してもよいが,心エコー図検査のためだけに必要な手術が遅れないように注意する