p.26 抽出テキスト
METs =[(DASI スコア× 0.43) + 9.6] / 3.5とされ,大まかな目安として10 点=約4 METs,34 点=約7 METs となる.患者の自己申告からの医師による運動耐容能の主観的判断は,検者間のばらつきが大きく77), DASI スコアと比較して運動耐容能を過小評価されやすいことが報告されている82). METS 試験では,患者の自己申告に基づく医師の主観的評価による運動耐容能やCPX による客観的運動耐容能評価では,イベント発生を予測できなかったが,DASI による評価のみイベント発生の予測をできた79).そのサブ解析では,DASI スコア34 点(7 METs 相当)が周術期心臓合併症の予測の最適な閾値として報告された80).ただし,平均年齢64 歳,急性心筋梗塞発症率が1.7% と,低リスクの患者が大多数を占めており,高齢患者や,合併症を有するよりリスクの高い患者群での妥当性は今後検討が必要である.また,リスクはオッズ比でのみ示され,絶対値で評価されていないこともあり,感度,特異度は不明である. 自己申告の運動耐容能の取り扱いに関する推奨とエビデンスレベルを表13 に示す. 4 12 誘導心電図 術前検査の目的は,1リスク層別化,2リスクの軽減策(マネージメント変更など)を講じ,3結果としてアウトカムを改善することである.12 誘導心電図検査について説明する. 4.1 術前ECG の異常所見によるリスクの 層別化 28,457 例の手術に関して術前ECG の異常が院内心血管死亡のリスク予測になるか後ろ向きに解析された83).院内 心血管死亡率0.7% で,ECG 異常があると,そのリスクは増加した(1.8% vs 0.3%,調整OR 4.5(95%CI 3.3-6.0).中リスク未満の手術でECG 異常の有無によるリスクの差は0.5%(0.7% vs 0.2%)で,中~高リスクの手術でECG異常があると心血管死は高くなった(5% vs 1.1%).中~高リスク手術では,リスク層別化に役立つ可能性が示唆された83). 4.2 術前ECG 施行による マネージメントへの影響 Munro らは,心電図で異常がみられたのは4.6 ~31.7%,それによりマネージメントが変更されたのは0 ~2.2% と報告した84).Bhuripanyo らの報告では,病歴,身体所見で異常のない40 歳以上の患者の術前ルーチン心電図で,異常が31.7% にみられ,このうち臨床的に意味があったものは6.4%,マネージメントに影響を与えたものは2.2% であった85). 4.3 術前ECG 施行による 周術期心血管イベントリスクへの影響 日帰り予定の整形外科手術,形成外科手術,一般外科手術,泌尿器科手術,白内障以外の眼科手術,脊椎手術を受ける1061 例の患者を,基礎的な血液検査,12 誘導心電図,胸部X 線を行う群と行わない群にランダム化した試験が実施された(除外基準:3 ヵ月以内に急性心筋梗塞,心臓手術や冠動脈形成術の既往,カナダ心臓血管学会(CCS)分類3,4 の狭心症,軽度の労作で呼吸困難がある患者,血液疾患,肝疾患,腎疾患の既往など重要な症状や既往歴がある患者) 86).27% に高血圧症,16% に糖尿病の既往歴があった.両群で合併症発症率(急性心筋梗塞,心不全,突然死などを含む)などに差はみられなかった.7.2% に心電図異常がみられたが,術後の合併症との関連を認めなかった86). 白内障手術を受ける約19,000 例を,術前検査(12 誘導心電図,採血)施行群と未施行群にランダム化した試験でも,周術期イベント数(心血管イベント数)に差がみられなかった(31.3 イベント/1000 手術) 87). このように日帰り手術,白内障手術に関しては,ルーチンの術前12 誘導心電図の有無で周術期の予後に差がみられなかった.低リスク手術のルーチンの12 誘導心電図の意義は少ないが(表14),病歴や身体所見で,心血管疾患が疑われ,周術期でなくても適応になる患者には心電図は 表13 自己申告の運動耐容能の取り扱いに関する推奨とエ ビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 自己申告の術前運動耐容能評価として, DASI スコアの利用を考慮するIIa C自己申告による運動耐容能が7METs 以上なら,さらなる術前心血管精査をしないことを考慮するIIa C自己申告による運動耐容能が4METs 以上なら,さらなる術前心血管精査をしないことを考慮してもよいIIb C