GL検索 v0.1.0
画像は 24 ページを描画したものです
page 24

p.24 抽出テキスト

だし心合併症発症率単独での比較はされていない.鏡視下手術と開腹・開胸手術でどちらの心合併症発症率が低いかという問題については,現時点では優劣をつけるに至っていない.

2.4 手術緊急度とリスク: 手術の緊急度による分類

手術の緊急度を知ることは重要である.緊急度によっては,術前の心血管リスク評価にあまり時間をかけることはできない.評価できる時間がある場合は,循環器緊急状態(急性冠症候群,重症不整脈,急性心不全,症候性心臓弁膜症)(第2 章11 術前検査のアルゴリズムを参照)がないかを吟味する.緊急手術のほうが予定して行われる手術よりも心合併症が2 ~5 倍多いとされているので,周術期は十分にモニターする必要がある71).

ACC/AHA 周術期診療ガイドライン2014 では,6 時間以内に手術をしないと生命の危険,四肢を失う危険があるものを緊急手術(emergent surgery),6 ~24 時間以内に手術が必要なものを準緊急手術(urgent surgery),1 ~6週以内に手術が必要なものを時間的制約のある手術(timesensitive surgery),1 年以内まで延期可能なものは待機手術としている72).大動脈瘤破裂や大腸穿孔などは緊急手術になり,悪性腫瘍は延期しすぎると原疾患の進行のリスクがあり,時間的制約のある手術である.高齢者の大腿骨頸部骨折は,延期により死亡率などが上がるため,英国NICE の診療ガイドラインでは翌日までの手術23),日本整形外科学会・日本骨折学会診療ガイドラインでは早期に手術をすることが推奨されている73) ため,準緊急手術または

時間的制約のある手術に分類される.

World Society of Emergency Surgery study group では,エキスパートオピニオンとして緊急手術の適切な手術タイミングを5 段階に分類している74).この分類では,準緊急手術として扱われている高齢者の大腿骨頸部骨折は5 段階目(24 ~48 時間)に分類されると考えられている(表11) 74).ACS NSQIP の後ろ向きのデータからは,緊急度が高いほど死亡率・合併症のリスクが高まることが示されている75).一般論として,緊急度の高さと心合併症リスクの相関性はあると予想されるものの,緊急性が問題であるのか,緊急手術を要する対象者の基礎状態,術前状態が問題なのかは不明である.

3 自己申告に基づく運動耐容能

運動耐容能の評価方法には,1自己申告をもとに,診察した医師による主観的判断,2定型的質問票を用いた自己申告の客観的評価,3運動負荷試験(トレッドミル,心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary exercise testing: CPX))による評価などさまざまな方法がある.運動耐容能は推定代謝率(Metabolic equivalents: METs)で評価される.こうした評価をもとに周術期リスク評価を行うという試みは以前より行われているが,確立されたエビデンスはさほど多くない76).

表11 緊急手術における理想的な手術までの時間

理想的な手術のタイミング

(診断からの時間)想定される状態(エキスパートオピニオン〕備考

即時手術大量出血に対する手術即時の救命を要する外科的介入,蘇生的手術

1 時間以内嵌頓ヘルニア,消化管穿孔,汎発性腹膜炎,敗血症を伴う軟部組織感染症蘇生処置後,可能なかぎり外科的介入(1 ~2 時間以内)診断がつき次第,抗菌薬を遅滞なく投与する6 時間以内敗血症を伴わない軟部組織感染症(膿瘍形成)診断がつき次第,抗菌薬を遅滞なく投与する12 時間以内急性虫垂炎(限局性腹膜炎)急性胆嚢炎(オプション)診断がつき次第,抗菌薬を遅滞なく投与する24 ~48 時間セカンドルック手術,高齢者大腿骨頸部骨折あらかじめスケジュールし,日勤帯で行う(Kluger Y, et al. 2013

74)より改変) Kluger Y, et al. World society of emergency surgery study group initiative on Timing of Acute Care Surgery classification (TACS). World J Emerg Surg. 2013;8(1):17. doi: 10.1186/1749-7922-8-17. © 2013 Kluger et al.; licensee BioMed Central Ltd. This is an Open Access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0), which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original work is properly cited.