p.23 抽出テキスト
診療ガイドラインでは,分野・領域ごとに分けて並べ直し,上段ほどリスクの高い分野・領域にして,それぞれの高,中,低リスクの術式を配置した(表10) 7, 57). 血管外科ではステント内挿術や小手術以外はすべて高リスク群に属する7).呼吸器外科では,肺葉切除術は心筋損傷のリスクとされ,高リスクと考える60).移植外科では,より侵襲度の高い肺・肝移植が高リスクとされる61).消化器外科手術では,食道・膵臓・肝臓は高リスク,胃切除・大腸切除術は中リスクと考えられる59).分野ごとにみると,脳神経外科手術は消化器外科全般と比較するとリスクが高く,表10 には記載しないが,一部ハイリスクな術式はある57, 58).泌尿器科・整形外科・内分泌外科手術は,分野としてのリスクは比較的低いといえる7).婦人科手術は,重篤な心脳血管合併症率は0.3% と低く,安全な分野に位置する57).その他,局所麻酔下の手術や,全身麻酔下であっても体表臓器の手術は安全といえる.日帰り手術での急性心筋梗塞発生率は0.03% とされており,これは調整した非手術時の発生率と変わらない62). ハイリスクとされる血管外科や呼吸器外科症例では糖尿病・喫煙・運動耐容能との相関が指摘されており63),婦人科手術では若年健康者が多い.リスクの差異は術式そのものの侵襲度以外に患者の基礎状態が影響している可能性 がある.血管外科における血栓除去術,整形外科における下肢切断術などは術式自体が危険というよりは,これらの手術の対象者の基礎状態が不良であることを反映していると考えられる64). 2.3 手術アプローチとリスク 低侵襲的アプローチ法として近年盛んに行われている鏡視下手術は,小さな切開創のため早期回復・早期退院を実現している65).しかし,腹腔鏡については高度肥満者で,気腹による心拡張能の低下,末梢血管抵抗上昇,心拍出量低下が指摘されている66).Trendelenburg 位をとる骨盤内臓の手術(直腸・子宮・膀胱など)では,平均血圧・中心静脈圧・末梢血管抵抗が上昇するため,開腹手術に比べて心合併症リスクが低いとは言えない67, 68).一方で,70 歳以上の高齢者は腹腔鏡手術のほうが開腹手術に比べて周術期の心合併症が少なかったとするシステマティック・レビューがある69).胸腔鏡補助下手術(VATS: video assisted thoracic surgery)では,開胸手術を比較して死亡率に差はないが,合併症率は低かったとするメタ解析がある70).た 表10 心合併症発症率からみた非心臓手術のリスク分類 高リスク群(>5%)中リスク群(1~5%)低リスク群(<1%) 血管外科大動脈および主幹血管手術血栓除去術血管内治療末梢動脈形成術呼吸器外科肺全摘除術肺葉切除術胸腔内小手術移植外科肺移植・肝移植腎移植脳神経外科脳神経外科大手術頸動脈手術(神経症状を有する)頸動脈手術(神経症状を有さない)消化器外科食道切除術膵頭十二指腸切除術肝切除および胆道手術消化管穿孔に対する手術腹腔内操作を有する手術(胃切除術,結腸切除術,脾臓摘出術,食道裂孔ヘルニア手術,胆嚢摘出術)鼠径ヘルニア泌尿器科膀胱全摘術泌尿器科大手術泌尿器科小手術整形外科下肢切断術整形外科大手術(股関節・脊椎)整形外科小手術(膝関節鏡)内分泌外科副腎摘出術甲状腺手術産婦人科婦人科大手術婦人科小手術その他頭頸部外科大手術乳腺手術形成外科手術口腔外科手術眼科手術体表の手術患者の合併疾患を考慮に入れない手術自体のリスク(Kristensen SD, et al. 2014 7),Smilowitz NR, et al. 2017 57)を参考に作表)