p.21 抽出テキスト
第2章 術前評価 1 麻酔科的視点 麻酔科的視点での周術期注意点をまとめる. 1.1 リスク評価:ASA-PS 分類 術前の麻酔科医による患者のリスク評価としてASA-PS分類がある43).周術期リスク予測スコアのACS NSQIP Surgical Risk Calculator,NSQIP MICA にも含まれている.術前の患者の状態を「健康な状態」から「瀕死の状態」までを5 分類,臓器移植ドナーの状態をあわせて6 分類で評価される.緊急手術症例については「E」を併記する(表8) 43).これは主観的な指標のため,それぞれの評価者間で評価が異なる可能性が指摘されていたが,米国麻酔科学会 より具体的な例を呈示することで一定の評価が可能となるように改善されている43). 1.2 麻酔法と血行動態 1.2.1 全身麻酔 全身麻酔の三要素は「鎮静・鎮痛・無動」である.プロポフォールのような静脈麻酔薬や吸入麻酔薬,フェンタニルやレミフェンタニルのようなオピオイド,筋弛緩薬が用いられるバランス麻酔が主に行われている.静脈麻酔薬や吸入麻酔薬は心抑制作用があり,オピオイドは交感神経抑制作用により血管拡張を来す.そのため全身麻酔を実施すると一般的に血圧が低下するので,必要に応じて輸液負荷や昇圧薬を使用する.また,全身麻酔での呼吸管理は一般 表8 ASA-PS 分類:術前の麻酔科医による患者のリスク評価 ASA-PS 分類定義成人例(この例に限定されるものではない) ASA I通常の健康な患者健康で,非喫煙,アルコールは飲まないか少しだけ飲むASA II軽度の全身性疾患を有する患者重大な機能的制限を伴わない軽症の疾患.現在喫煙者,付き合い程度の飲酒,妊娠,肥満(30 <BMI <40),コントロール良好な糖尿病/ 高血圧,軽度の肺疾患ASA III重度の全身性疾患を有する患者重大な機能的制限:すなわち,1 つ以上の中等度,重症の疾患.コントロール不良の糖尿病または高血圧,COPD,病的肥満(BMI ≧40),活動性肝炎,アルコール依存症または中毒,ペースメーカー,駆出率の中等度低下,定期的に透析を受けている末期腎不全,発症後3 ヵ月超経過した心筋梗塞,脳血管障害,一過性脳虚血発作(TIA),冠動脈疾患/ ステント留置ASA IV生命を常に脅かす重度の全身性疾患を有する患者発症後3 ヵ月未満の心筋梗塞,脳血管障害,一過性脳虚血発作(TIA)または冠動脈疾患/ ステント留置,進行中の心筋虚血または重度の弁機能障害,重度の駆出率低下,ショック,敗血症,DIC,急性腎不全または定期的に透析を受けていない末期腎不全ASA V手術をしなければ生存が望めない瀕死状態の患者腹部/ 胸部動脈瘤の破裂,重症外傷,頭蓋内出血(mass effect あり),重篤な心疾患または多臓器不全を伴う虚血性腸疾患ASA VI脳死状態の臓器移植ドナー注)緊急手術の場合は,E を添える:(緊急の定義は,手術の遅れが生命の危機,体の一部を失う危機を増す状態) (ASA House of Delegates. 2014 43)より抜粋) Excerpted from ASA House of Delegates. ASA physical status classification system. 2014. https://www.asahq.org/resources/clinical-information/asaphysical-status-classification-system. (accessed 1/17/2022) of the American Society of Anesthesiologists. A copy of the full text can be obtained from ASA, 1061 American Lane Schaumburg, IL 60173-4973 or online at www.asahq.org.