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p.19 抽出テキスト

たと同じような100 人が同じ手術を受けると,2 人が心臓合併症で死亡し,5 人が心不全を合併します」)のほうが理解されやすいとされる17).こうした説明法がカナダ心臓血管学会診療ガイドライン2017 では推奨されている14).本診療ガイドラインでも,リスクが自然頻度でも表現できるように,各パートで可能なかぎり予測発生率(%)で示した.

5 非心臓手術前の心疾患に対する 侵襲的な介入の是非を考える際の 注意点

非心臓手術術前に,侵襲的治療の適応がある心疾患が明らかになる場合がある.たとえば,多枝冠動脈疾患,有症状の重症大動脈弁狭窄症などである.通常であれば,前者には冠動脈バイパス術(CABG),後者であれば大動脈弁置換術(外科的,経カテーテル的)がクラス I 適応である18, 19).

その選択肢として,以下の4 つが考えられる. 1 非心臓手術の術前に循環器疾患に対する侵襲的治療を

行う2 循環器疾患に対する侵襲的治療をせずに,非心臓手術

を実施する3 どちらも行わない4 どちらかのみを行う

それらの選択には,非心臓手術のリスクだけでなく,循環器疾患の重症度,緊急度のほか侵襲的治療のリスク評価も重要である.そのようなリスクをSTS score 20) やJapan

SCORE 21),EuroSCORE II 21a) などを活用し定量化することが可能である.さらに,その介入により非心臓手術は延期となり,その延期によるリスク,害も考慮に入れる必要がある.例として,癌であれば,進行するリスクが存在し,高齢者大腿骨骨折ならば48 時間以上の延期により死亡,合併症,褥瘡22, 23) およびADL 依存リスク23) が上昇し,何よりも疼痛も持続する.PCI,弁膜症手術後は抗血栓薬が必要になり,その周術期の継続や中断による出血,血栓症リスクも考える必要がある.このような多方面からの包括的評価が重要である(図3).必要に応じて関係する多専門科集学的チームで協議することも重要である.

こうした侵襲的治療を俯瞰的に捉えた代表的な大規模臨床試験としてCARP 試験が存在する24).血管手術を控えている安定冠動脈疾患患者が対象となり,術前の冠動脈血行再建の効果を検証したランダム化比較試験(RCT)である24).プライマリ・エンドポイントは長期死亡率であったが,周術期の予後も検討された.冠動脈疾患があれば,周術期リスクは増加する25) が,CARP 試験では,術前血行再建を施行しても,未施行群と比較して術後30 日の死亡率は減少しなかった(3.1% vs 3.4%).さらに,非心臓手術術前に,血行再建群で10 例(3.9%,血行再建の合併症で4 例,原疾患の悪化で6 例),非血行再建群では1 例(0.40%)が死亡した24).この研究の術前死亡と術後死亡を合わせると,死亡率は血行再建群で6.6%,非血行再建群で3.6% となる.血行再建や手術延期のリスクを加味する

循環器疾患A の周術期リスクを評価する

周術期リスク

心疾患なし心疾患A があり,

リスクが高いパターン1パターン2パターン3

心疾患の周術期リスクへの影響心疾患に対し術前介入の影響

疾患A に対し術前介入し,それが成功すればリスクが減少するか考察する•  介入の合併症,副作用•  手術延期による負の影響を推定する

手術を延期し,疾患A に介入するパターン1介入が成功すればリスクは減少するが,介入の合併症,副作用,手術延期の負の側面が大きい.

パターン2介入が成功してもリスクは減少しない.介入の合併症により,リスクはより高くなる.パターン3介入が成功すればリスクは減少する.さらに,介入の合併症,副作用,手術延期の害が小さい.

パターン1,2 の場合は、介入しないほうがアウトカムがよい.パターン3ならば介入群のほうが,アウトカムが改

善する.図3 非心臓手術術前に心疾患へ介入する場合の周術期リスク