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で,非心臓手術となると,厳重に血行動態を管理し,血行動態が悪化したときには対応できる施設で手術することが理想的である.どちらも,どこの施設でも可能というわけではないと推察した. I 推奨のグレーディングI.1 パネル会議 AS があると心不全リスクが上昇する可能性があるため,「術前にAVR をしないことを提案する」ことは困難ではないかという懸念が示された.一方,手術遅延は,死亡リスク,高度疼痛リスク,身体機能低下,せん妄リスク上昇のため,早期手術がよいとされる.これらのアウトカムの重大性は,心不全よりも患者にとって重大,とパネル会議で判断した. 修正デルファイ法(RAND 法)を用いて投票を行った.上記,推奨文に対し,投票率100%,中央値8.0,見解不一致指数0.192,同意率92%(7 以上の割合)で承認された. I.2 パブリック・コメント1) 厳格な血行動態の管理に関し管理場所をICU にするこ とを明示するという提案があった.推奨文に「厳格な血行動態の管理」について付帯事項として盛り込んだ. 2) 重症AS 患者の大腿骨近位部骨折手術の適応を多職種 で吟味する重要性を指摘された.骨折手術に期待できることは,疼痛改善,機能改善(寝返り,座位,歩行),ケア時の疼痛(移動時や排泄介助の疼痛)改善,それによる生命予後改善,褥瘡,感染症予防などである.すでに疼痛もなく,手術しても機能改善が見込めないときなどには手術のメリットがない可能性がある.患者や家族(介護者)が期待しているゴール,それが手術で得られるかなどを多職種で吟味することが望まれる.ただし,これに関し推奨を作成することは,この診療ガイドラインの範疇になく,考察としてここに記すことにとどめる. J 関連する他の診療ガイドラインの記載 高齢者大腿骨近位部骨折患者の重症AS の推奨に関する診療ガイドラインはみつけることができなかった. K 治療のモニタリング 術前にAVR を行わない場合,術前にできるかぎり血行動態の安定化を行い,術前,術中,術後は,厳重なモニターを行い,前負荷,後負荷変動を抑える.心房細動発症で血行動態が不安定化することもあるので,厳重なモニター,早期介入が必要である. L 監視と評価 周術期の不安定な血行動態発生率,心不全発症率,心臓死亡率を監視,評価する. M 今後の研究の可能性 1) これまでは小規模研究,後ろ向き研究であり,確実性 が低い.重症AS が大腿骨骨折周術期のリスクになるか,大規模な前向き観察研究が必要である. 2) 日本での患者,家族の価値観を調査する. 3) 術前TAVI の効果を検証したRCT(例 P:高齢者大 腿骨近位部骨折患者,I:TAVI,C:TAVI なし,O:死亡率,心筋梗塞率,AHF 率,身体機能,歩行予後, ADL 自立,せん妄,疼痛,感染症,褥瘡,QOL,手術延期日数)が必要である.ただし,患者は高齢者で,その多くは高度の疼痛があり,実現の可能性は低いかもしれない. A 高齢者大腿骨骨折に関する一般事項A.1 わが国での発症率 大腿骨頸部骨折ならびに大腿骨転子部骨折を総称して大腿骨近位部骨折と表現するが,転倒で起こる骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折の代表格である.日本整形外科学会の全国調査で,2018 年の発症数は年間約10 万4 千例(回収率68.4%),女性が77%,平均年齢は男性78.5 歳,女性83.5 歳と報告された484).年間17 万件476)という報告もある.日本の高齢人口の増加とともに本骨折の発生数は今後20 年さらに増加することが予想されている487). A.2 死亡率 わが国での,大腿骨近位部骨折後の30 日死亡は1% 488), 1年以内の死亡率は10% とされる489).骨折自体で死亡するわけではなく,心疾患,呼吸器疾患,悪性疾患,認知症が主な死亡原因である 490). A.3 合併症 高齢者が多く,肺炎や尿路感染症,静脈血栓塞栓症,せん妄,褥瘡などが急性期に合併しやすいといった問題がある 22). A.4 治療 いずれの骨折型でも,わが国の診療ガイドラインでは手術療法が推奨されている478).日本整形外科学会の調査でも,全症例の94% が手術療法を受けていた484).その目的は骨折を手術することで除痛が得られ,リハビリテーショ Background question 大腿骨近位部骨折の手術タイミングはいつがよいか? 手術延期は,死亡率上昇,身体機能低下,急性期の高度疼痛,せん妄,褥瘡,感染症のリスクであり,なるべく早期に手術をすることが重要である.