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p.98 抽出テキスト

感,冷感が生じる患者もある.高血圧を合併する患者では,上肢血圧は体血圧を反映しないことに留意する. II型:胸腹部閉塞型(高血圧を中心とした多彩な症状)

胸腹部大動脈や腎動脈の狭窄病変による高血圧が問題となり(異型大動脈縮窄症,腎血管性高血圧),患者は頭痛や心悸亢進を訴える.異型大動脈縮窄症では,わずかな運動でも200 mmHgを超える高血圧がみられる.高血圧がコントロールされずに長期間続くと心不全につながり,生命予後に影響を及ぼす.大動脈の狭窄病変では下肢虚血に伴う間歇性跛行が,上腸間膜動脈や腹腔動脈の閉塞性病変では腹部アンギーナ症状が出現することがある. III型:広範囲閉塞型

I型とII型が合併した複雑な病態である. IV型:動脈瘤型

大動脈瘤の大部分を占める変性による動脈瘤と比較して,高安動脈炎の動脈瘤は胸部大動脈とその分枝に発生することが多い.破裂するまで症状がないことが多い点は,変性による動脈瘤の場合と同様である.また,上行大動脈の拡張による弁輪拡大ないし弁尖自体の変性による大動脈弁閉鎖不全を約3分の1の患者に認める907).大動脈弁閉鎖不全は心不全につながり,本疾患の予後に大きな影響を与える.

3.3 診断の指針

初期においては症状が非特異的であるため,診断が困難な場合が多い.進行期においては閉塞された血管によって多彩な臨床症状を示す.本来確定診断は病理組織所見によるが,外科的治療の対象は瘢痕期の病変であるうえに,標本を得ることも困難なため,血管画像診断が最も役立つ.厚生労働省の難治性血管炎に関する調査研究班896),米国リウマチ学会897)などから診断基準が示されている.

3.3.1 検査所見

a. 血液検査所見

本症に特異的な血液検査所見はない.非特異的炎症所見である赤沈亢進,白血球増多,軽度の貧血,γグロブリン上昇,CRP上昇などで高安動脈炎の活動性を評価する.保険適用外ではあるが,血中ペントラキシン(pentraxin: PTX)-3の値が疾患活動性のマーカーとしてより優れているとの報告もある898).このほかリウマチ因子陽性,抗核抗体陽性を呈する患者もある.HLA-B*52陽性例では陰性例に比較して病変の程度が強いとの見解もある. b. 画像診断所見

若年女性に単純X線写真で大動脈の石灰化がみられた場合は,本症の疑いが濃厚である.確定診断となるのは血管画像診断で,CTA(CT angiography),MRA(magnetic resonance angiography),DSA(digital subtraction angiography)で大動脈の内腔不整,大動脈およびその主要分枝の閉塞性病変,動脈の拡張性病変を認める935).多発病変が多いため,大動脈とそのすべての分枝で病変の有無を確認する必要がある936, 937).断層像による評価も重要で,造影CT平衡相–後期相や造影MRIでは,狭窄・拡張性病変が生じる前でも動脈の壁肥厚を検出できることがある.造影CTでは同時に肺動脈病変の有無も評価する.病変のある動脈には高度の内膜肥厚が認められ938–940),超音波検査(US)も有用である.頸動脈エコー検査での所見は「マカロニサイン」とよばれる.

FDG-PETを用いた大動脈の炎症の画像化が診断および病状評価で有用視されている941). 18F-FDGの集積の程度は,臨床的活動度と相関するともされている942).わが国では2018年の診療報酬改定に伴い, 18F-FDGの大型血管炎への保険適用が加えられた.ただ,すでに診断がついていてほかの検査によって病変部位や活動性の判断がつかない場合に適用となること,また大血管炎疑い症例のスクリーニングには使えないことを留意しなくてはならない. c. 眼底所見

高安動脈炎に特徴的な眼底所見として,宇山の分類がある943).慢性に進行する脳血圧低下によって毛細血管が拡張する.さらに進行すると毛細血管瘤が耳側周辺部眼底から始まり,眼底全体にみられるようになる.重度の虚血では動静脈吻合が形成され,視神経乳頭を取り巻いて馬蹄形または花環状となる.

3.3.2 鑑別診断

鑑別疾患としては,狭窄・閉塞・瘤化を伴う病変として動脈硬化症が真っ先にあげられる.また梅毒,結核といった特異性炎症および感染による血管炎に加えて,巨細胞性動脈炎を念頭におく必要がある.海外では高安動脈炎よりも巨細胞性動脈炎の頻度が高く,大動脈炎としてその違いを示した文献が多い.両者の予後は異なり,高安動脈炎の方が狭窄病変を対象とした再治療が多く,巨細胞性動脈炎は瘤形成しやすいが寛解もしやすいという報告がある944).組織学的には高安動脈炎の方が,大動脈壁が厚く肉芽形成が多く内膜の炎症が少ない.外膜のscarringは巨細胞性動脈炎にはないことは鑑別の手がかりになりうる945).先天性血管異常は大動脈縮窄を認めるが,壁は平滑であり炎症所見の差異から鑑別が可能である.炎症性腹部大動脈瘤