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p.94 抽出テキスト

第9章 腎動脈狭窄

表59 腎動脈狭窄(RAS)の管理の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

両側RAS の場合,ACE 阻害薬またはARB の使用を考慮してもよい.ただし,腎機能悪化があり得るため監視下で使用する1, 880, 881). IIb B動脈硬化性のRAS に対する血行再建は,下記のような特段の理由がない場合には推奨されない882-885). III No benefit A動脈硬化性の場合,薬物療法でコントロール困難な高血圧,心不全の既往,進行性腎機能障害に対して腎動脈ステント留置を考慮する882-885). IIa B腎機能低下もしくは高血圧を認めるFMD では,バルーン拡張術を考慮する886). IIa B

1 疾患の概要

RASは,腎動脈内腔が狭小化(一般的に60%以上)し腎臓への血流障害をきたす疾患である2).その90%以上は動脈硬化性であり,大動脈,冠動脈,など全身の動脈硬化の一環で発現している1).欧米では65歳以上で6.8%にRASがみられたという報告2)があり,わが国では心臓カテーテル検査を受けた患者の7%,欧米では30%に

● 腎動脈狭窄(renal artery stenosis: RAS)に対して

は,禁煙指導,脂質異常症,糖尿病,高血圧,肥満の管理など動脈硬化のリスク管理を行う. ● RASによる降圧治療は,アンジオテンシン変換酵

素(angiotensin converting enzyme inhibitor: ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker: ARB),カルシウム拮抗薬またはβ遮断薬を組み合わせる.

ステートメントRASを認めたという報告がある880, 887, 888).また,病変の部

位としては,動脈硬化性RASは腎動脈入口部から近位部1 cmで,両側性が20~30%である.RASは,線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia: FMD)や,高安動脈炎,腎動脈解離,外傷でも発生する.

FMDは,非動脈硬化性,非炎症性の小・中動脈疾患で,内腔への血管壁の増殖を特徴とし,原因は不明である881). FMDは腎動脈に多いが,頸動脈などの他の動脈にも発生する.82%は女性で,平均年齢46歳,86%は高血圧を呈する889).病変は腎動脈の中央から末梢1/3に起こりやすく“string of beads”の形態が特徴である.病態は,腎動脈狭窄によるrenin-angiotensin-aldosterone(RAA)系の活性化による治療抵抗性・悪性の高血圧であり,脳心血管合併症や腎機能低下を引き起こす.一方,病変の自然消退も報告されている.

1.1 自然経過

RASの自然経過は進行性とは限らず,特に無症候性の患者ではほとんど病変が進行しないという報告がある.一方,全身の動脈硬化が強い高血圧や腎機能低下などの患者群は進行するという報告がある.

1.2 病態

RASの主病態は進行性の腎血流の低下による腎障害とRAA系の活性である.RAA系の活性で,心臓や全身の血管にremodelingが起こりさらに血圧上昇が増悪する.また,腎血流の低下により腎内での糸球体濾過機能の障害や炎症反応の惹起による細胞障害が腎機能低下を招くとされるが,慢性状態においてどのプロセスが主要な働きをしているかは不明である890).