p.93 抽出テキスト
慢性腸間膜動脈閉塞が疑われる場合には閉塞病変の確認や他疾患を鑑別するためにCTA を行う873). I C慢性腸間膜動脈閉塞が疑われる場合,腎機能低下症例などでは画像診断としてMRA を考慮してもよい873). IIb C 診断に特異的に有用な血液検査所見はない.病変は起始部に形成されることが多く,高度狭窄病変では腹部にbruitを聴取する.USによる描出も可能であり,熟練者では70%以上の狭窄または閉塞病変の正診率は約90%とされる872). CTAやMRA(magnetic resonance angiography)も診断目的として行われることが多いが,末梢領域の描出は困難である873).血管造影では確定診断が得られやすいが,画像診断機器の発達に伴い,診断的価値は低下している. Riolan弓の発達は,SMAもしくはIMAいずれかの狭窄や閉塞による血流低下ともう一方が側副血行の供給となっていることを示している.このため1本の病変で有症状になることはまれで,CA,SMA,IMAの3本すべてに高度な狭窄性病変がある場合に自然予後が悪いことが示されている874). 3.2 治療 表58 慢性腸間膜動脈閉塞の治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 症候性の複数動脈の閉塞を呈する慢性腸間膜動脈閉塞症例には,血行再建を行う874). I B血行再建が必要な症例においては,開腹手術の良好な長期成績とEVT の良好な術早期成績を考慮して治療選択を行う862). I B 無症状症例への予防的血行再建は適応とはならず,有症状症例においては,栄養状態の改善・腸管壊死予防を目的に速やかな血行再建が推奨される. 画像技術の進歩により診断が多くされるようになるとともに,低侵襲を理由として慢性腸管虚血に対するEVT数が急増している862).術後早期死亡が開腹手術に比べて少ないため,多くの施設で経皮的血管形成術(PTA)やステント留置が第一選択となっており,開腹手術はEVTの不成功症例に行われるようになってきた.しかしEVTの再狭窄率と再治療率が高いことも示されており,開腹手術の 方が良好な遠隔期成績を示している862).従来のステントに加えて,ステントグラフト(SG)も使用可能となり,後者では再狭窄率が低いことも示されてきたが875),現時点ではわが国では保険収載されていない.EVT不成功例,広範な閉塞症例,高度な石灰病変を伴う症例や若年の非動脈硬化性病変などはバイパス術を主体とする外科的な血行再建が選択される45). 4 腹腔動脈起始部圧迫症候群 正中弓状靭帯による圧迫でCAに血流障害を生じ,腹痛などの虚血症状をきたす疾患である.解剖学的な腹腔動脈の圧迫変形は全人口の20~70%に存在するとされるが876),SMAからの側副血行によって臓器虚血症状を認めない場合が多く,CA圧迫による血行障害と腹腔動脈起始部圧迫症候群が同義ではない.CA系にSMAからの側副血流が増加することにより膵十二指腸アーケード領域の内臓動脈瘤が頻出し,注意深い観察が必要である. 4.1 診断 典型的症状は食後の腹痛で80%以上の症例に認められる.そのほか嘔吐・嘔気(56%),腹満(40%),体重減少(50%)を認める877, 878).CTAでは弓状靭帯による圧迫を反映して,CA起始部の急峻な尾側への走行と狭窄・閉塞が認められる.血管造影でも同様に側面,斜位像でCAの狭窄・閉塞が認められ,特に深呼吸時に狭窄が高度となれば有意な所見である. 4.2 治療 腹部症状の原因として他疾患が否定され,血管造影で明らかな狭窄所見を認める患者では,手術治療も考慮する. CA根部の露出と正中弓状靭帯の切開が第一選択であるが,十分な血流改善が得られない場合にはバイパス術も考慮する.腹腔鏡下正中弓状靭帯の切開も可能である.術後85%の症例で症状改善が認められると報告されるが879),術後症状が消失しない患者が少なからず存在する.