p.87 抽出テキスト
2.1.2 カサバッハメリット現象 生後早期に発覚することが多い播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome: DIC)を発症する凝固異常症である.房状血管腫(tufted angioma)やカポジ肉腫様血管内皮腫(Kaposiform hemangioendothelioma)に伴う特徴的な現象とされる.致死率は高く,専門的な治療を要する.一方,その他の巨大血管性病変に伴う凝固異常症はLIC(localized intravascular coagu lopathy)とよばれ,DICとは異なる病態である.LICでは術後出血などで治療に難渋する場合があるので注意を要する. 2.2 非中枢性の脈管奇形 2.2.1 毛細血管奇形 分類上は血管奇形となるが,他の血管奇形病変と異なり比較的一般的な先天性の紅斑である.浅在性の毛細血管の形態異常であるため,主に色素レーザーの照射が治療の中心となる. 2.2.2 リンパ管奇形 病変を構成する嚢胞の大きさによってさらに細かく分類され,嚢胞が大きいmacrocystic型(嚢胞状)と嚢胞の小さいmicrocystic型(海綿状),そして両者が混在するmixed cystic型の3つに分類される.それぞれ治療方針が異なるため,この分類の意義は大きい.macrocystic型の場合は硬化療法が治療の第一選択となることが多く, microcystic型の場合は切除術が選択されることが多い.しかし,リンパ管奇形は病変の部位や大きさ,そして構成される形状により種々の病態と症状を呈するため,治療が困難となる症例も多い. 2.2.3 静脈奇形 病変の形態が海綿状であることから海綿状血管腫とよばれていた病変である.全身のいたるところに発生し,多発することもあり,部位と大きさにより無症状のものからさまざまな症状を呈するものまである.主な症状は疼痛と病変の腫大による変形であり,治療法として圧迫療法や切除術,そして硬化療法が選択される.硬化療法の際に用いられる硬化剤として,わが国ではモノエタノールアミンオレイン酸塩,ポリドカノール,無水エタノールなどがあるが,各薬剤の特徴を熟知した専門家による治療が推奨される. 2.2.4 動静脈奇形 動脈から毛細血管網を経由せずに直接静脈に流出する動静脈シャント(nidus)の存在により病変が形成されている.動脈に由来するため高流速型の病変であり,着実に進行し病状の変化を認める.そのため,本病変特有の病期分類が存在し,Stage Iでは紅斑,皮膚温上昇,Stage IIでは隆起,拍動などを認め,Stage IIIでは疼痛,潰瘍,出血を生じるようになる.Stage IIIになると積極的な治療介入が必須となり,場合によっては致死的な結果に至る.なおStageIVは高拍出性心不全である.その場合は病変への血液流入量を減じる必要が生じる. 2.3 主要血管の血管奇形(血管の形成異常) 2.3.1 膝窩動脈捕捉症候群 膝窩動脈の走行異常や腓腹筋の付着異常などにより膝窩動脈が捕捉されることで,狭窄や閉塞が生じ下肢に血流障害が生じる.若年発症の間歇性跛行が主な症状である(第18章「膝窩動脈捕捉症候群」を参照). 2.3.2 遺残坐骨動脈 坐骨動脈は胎生期に内腸骨動脈を起始として膝窩動脈以遠の動脈を形成しているが,胎生3ヵ月頃から大腿動脈が発達することで坐骨動脈は消退する.大腿動脈の発達不全や坐骨動脈の消退不良により坐骨動脈が遺残することがある.遺残坐骨動脈はしばしば瘤化し,坐骨神経の圧迫や瘤の血栓塞栓症で急性下肢虚血を認めることがある(第19章「遺残坐骨動脈」を参照). 2.3.3 ナットクラッカー症候群 左腎静脈捕捉症候群ともよばれる.大動脈と上腸間膜動脈により解剖学的に腎静脈が挟まれ狭窄を生じることにより発生する.血尿を認め,左精索静脈や左卵巣静脈の逆流による骨盤内うっ滞症候群の原因となることがある831). 2.3.4 線維筋性異形成 (fibromuscular dysplasia: FMD) 腎動脈や頸動脈に好発する中・小動脈の非動脈硬化性,非炎症性の動脈疾患であり,動脈壁の線維性肥厚および平滑筋の不規則な増生と変性を特徴とする.このため,動脈狭窄,動脈閉塞,動脈瘤,動脈解離を形成する.女性に多く発症し,部位別発生率は腎動脈60~75%,脳血