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p.86 抽出テキスト

1 定義と分類

「いわゆる血管腫」とよばれる脈管病変は大きく脈管奇形と脈管性腫瘍に分類される.このことは1982年にMullikenとGlowackiが乳児血管腫と脈管奇形が異なる病態であることを示した報告に端を発している827).その後,International Society for the Study of Vascular Anomalies(ISSVA)が創設され,これまで多岐にわたる病名が存在していた「いわゆる血管腫」の分類用語の統一を目的に.1996年にISSVA分類が提唱された.

1.1 脈管奇形

脈管形成は胎生3~6週頃に始まるとされる828).脈管形成の過程において,遺伝的因子や薬物,感染症,放射線被曝などの外的因子を原因とするさまざまな異常が発生する.人体には脈管成分は豊富に存在し,動脈系,静脈系,毛細血管系,リンパ管系とそれぞれ多様な形態と機能を有している.そのため,これらの脈管を起源とする奇形病変にも多様性があり,このことから診断の困難さ,治療方針の不確定さが生じている.

2018年に改訂されたISSVA分類829)では,脈管奇形を構成される脈管に応じて毛細血管奇形,リンパ管奇形,静脈奇形,動静脈奇形と分類している.しかし,それぞれの病変は孤立性に発生するのみでなく,それぞれが複合して発生する場合もある.また,血管外科領域では主要血管の形態異常を伴う病変がその性状により分類されており,起始,

● 血管腫・血管奇形の診療では,治療の選択に際し

て専門的な知識を必要とするため,可能な限り血管腫・血管奇形の診療を専門とした医師へのコンサルトを考慮する.

ステートメント走行,血管径,弁の異常,胎生期血管遺残などが列挙さ

れている.その他,血管以外の種々の先天異常を併発する病変を症候群として分類している.

1.2 脈管性腫瘍

先天的な形態異常とは異なり,脈管細胞の増殖による腫瘍性病変である.腫瘍であるため起源となる細胞の状態により種々の病変が存在する.視覚的には脈管奇形病変と類似した病変もあり,このことが臨床での混乱を招く原因のひとつになっている.しかし,病変の成因が脈管奇形と異なることは治療方針に大きく影響を与えることになる.

また,脈管性腫瘍は良性,悪性,境界型の3つに分類され,良性群に乳児血管腫などが,悪性群として血管肉腫などが含まれている.なお,わが国においてもISSVA分類に基づいた診療ガイドラインが発行されている830).

2 主な病変と病態

2.1 脈管性腫瘍(狭義の血管腫)

2.1.1 乳児血管腫(いちご状血管腫)

脈管性腫瘍の代表的疾患である.生後1週間頃から発生し,次第に増大する病変であり,罹患率は1%程度と一般的な病変である.生後6ヵ月頃から増大は停止し,退縮期に入り色調も隆起も次第に改善する.そのため,経過観察でよいとされていたが,近年,早期および晩期合併症の回避を目的に色素レーザーを用いた早期レーザー治療がわが国において施行されつつある.なお,咽頭部の巨大病変による気道狭窄例や眼瞼部病変による視性刺激遮断弱視例などはalarming hemangiomaと呼称され,早急な治療が必要とされる.

第6章 血管腫・血管奇形(血管形成異常)