p.85 抽出テキスト
性病変と狭窄率60%以上の無症候性病変を対象としており,一次複合エンドポイント(周術期脳梗塞/心筋梗塞/全死亡またはランダム化4年以内の同側脳梗塞)において, CASのCEAに対する非劣性が示された.周術期成績では脳梗塞はCAS群で有意に多く,NSTEMIを含む心筋梗塞はCEA群で有意に多い結果であった.症候性の有無や性別による差を認めない一方,前述したSAPPHIRE試験でCEAハイリスクとして含まれていた高齢者については,一次複合エンドポイントの発生率が70歳以上ではCEAの方が低いという結果が報告された817).2016年にEVA-3S・SPACE・ICSS・CRESTの統合解析が報告され,70歳以上の症候性病変ではCEAはCASと比較し有意に成績良好であり,これは70歳以上のCAS群において周術期合併症(脳卒中/死亡)がCEA群と比較して有意に高いことに起因していた818). 前述したRCTの結果をもとに,狭窄率50%以上の症候性狭窄病変に対して,SVSガイドライン,ESVSガイドラインともにCEAが標準治療で,CASに対して慎重な姿勢をとっており,CASを行う際には塞栓症の予防デバイス使用を考慮すべきと言及している2, 808, 819).症候性頸動脈狭窄で手術適応の患者には,手術の効果を最大限化するために症状出現後2週間以内に手術を行う820).50%狭窄以上の症候性病変のうち,永久気管瘻,同側頸部手術の既往,頸部放射線治療の既往,脳神経損傷の既往,鎖骨より中枢または第2頸椎より末梢に及ぶ病変,重症冠動脈病変,重症心不全,慢性閉塞性肺疾患を有し,治療介入の適応がある場合はCASが考慮される819). 狭窄率60%以上の無症候性頸動脈狭窄に対して血行再建を行う際には,CEAが第一選択であるが,周術期死亡/脳卒中発生率が3%未満の施設で治療が求められる806, 821).無症候性頸動脈狭窄に対するCEAとCASを比較したメタアナリシスでは,長期成績に両群で差を認めないものの,周術期でのすべての脳卒中,後遺障害を伴わない脳卒中,死亡ではCASで多い傾向にあったと報告されている807).無症候性でCEAがハイリスクと判断される場合には,その自然歴の良さゆえに薬物療法を選択するのが適切と判断されることが多い.現時点では,すべてのRCTでCASでは周術期脳梗塞の 発生率がCEAより高いことが示されており,標準治療としてCEAがCASより優れていることは明らかである.わが国では欧米に比べて頸動脈分岐部が高位である傾向にあることと,CEAハイボリュームセンターが少ない事を考慮し,CASが選択される症例が欧米に比して高い822, 823).その一方で,近年の内科治療の進歩も目覚ましく,狭窄率50%以上の無症候性頸動脈狭窄への内科治療に伴う同側脳卒中の年間発症率は減少傾向にある824).治療に伴う合併症の発生率が高いと,手術の有用性が失われ,内科治療を選択したほうが安全で治療効果が高いということになる.ガイドラインが定める基準よりもそれぞれの施設での周術期合併症が高い場合は,治療適応の判断,治療方法,治療技術に問題がないかを検討し,合併症率をガイドラインの基準以下に抑えるよう努力する. 2 頭蓋外椎骨動脈狭窄 表51 頭蓋外椎骨動脈狭窄の管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 抗血栓薬,脂質降下薬,その他のリスクファクターの治療薬などによる内科的治療にもかかわらず症状が治まらない症候性頭蓋外椎骨動脈狭窄に対して,EVT,バイパス手術を考慮してもよい825). IIb B狭窄度に関係なく,無症候性椎骨動脈狭窄の血行再建術は行うべきではない2). III Harm C椎骨動脈狭窄に対する治療適応は頸動脈狭窄ほど厳密には規定されていないが,頭蓋内血流の改善や椎骨動脈からの塞栓予防を目的として治療が行われる.頭蓋外椎骨動脈狭窄を認め,内科的治療にもかかわらず椎骨脳底動脈領域の虚血症状が持続する場合や,TIAや脳梗塞を繰り返す患者には,侵襲的治療の適応があると考えられる825, 826).