p.84 抽出テキスト
NASCET(North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial)狭窄率を基準とする800). 頸動脈狭窄率:(1-狭窄部の最小内腔径/内頸動脈が平行になった部位での内腔径)×100(%) まず行うべき検査は無症候性,症候性とも,頸動脈カラードプラ超音波検査である.超音波検査ではPSV(peak systolic velocity)が狭窄度の指標として有用であり,PSV 230 cm/secでNASCET 70~79%に相当する801).頸動脈分岐部よりも中枢側,あるいは末梢側の病変評価が必要な場合は,超音波検査に加えてCTA(CT angiography)あるいはMRA(magnetic resonance angiography)を行う.石灰化によって狭窄度が評価困難な場合にはDSA(digital subtraction angiography)を考慮する.症候性頸動脈狭窄とは,6ヵ月以内の脳梗塞,TIA(transient ischemic attack)を伴う頸動脈狭窄を指す. 1.2 症候性頸動脈狭窄に対する治療基準 表49 症候性頸動脈狭窄の治療基準の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 狭窄率50% 以上の症候性頸動脈狭窄に対しては,非代償性心疾患や脳神経障害のリスクが高くなる手術既往や外照射により頸部組織が瘢痕化しているなどのCEA の禁忌がない限り,CAS よりもCEA を選択する.周術期合併症と死亡が6% 以下でなければ,手術の有効性は失われる800, 802). I A狭窄率50% 以上の症候性頸動脈狭窄で永久気管瘻を有する場合,頸部組織が以前の手術や外照射のため瘢痕化し線維化している場合,脳神経障害の既往がある場合,第2 頸椎より末梢まで病変が存在する場合は,CEA よりCAS を考慮する803). IIa B症候性頸動脈狭窄で手術適応の患者には,症状出現後2 週間以内に手術を行う802). I A狭窄率50% 以上の症候性頸動脈狭窄で治療できないCAD,うっ血性心不全,あるいは慢性閉塞性肺疾患を伴っている患者では,CEA よりCAS を行うことを考慮してもよい804, 805). IIb B狭窄率50% 未満の患者の手術は行うべきではない802). III Harm A 1.3 無症候性頸動脈狭窄に対する治療基準 表50 無症候性頸動脈狭窄の治療基準の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 狭窄率60% 以上の無症候性頸動脈狭窄に対しては,3~5 年の生命予後が期待され,周術期脳梗塞/死亡が3%以下と考えられる場合,CEA を考慮する806). IIa B狭窄率60% 以上の無症候性頸動脈狭窄に対してのCAS の有用性を支持するエビデンスは十分ではなく,合併症率が3% 以下であることが証明されたハイボリュームセンターにおいて,慎重に選択された患者に対してのみ考慮してもよい807). IIb B無症候性頸動脈閉塞に対する血行再建は行うべきではない808). III Harm C 欧米では全脳梗塞のうち,狭窄率50~99%の頸動脈狭窄症から脳梗塞が引き起こされる確率は10~15%とされるが45),わが国でも,動脈硬化に起因する脳梗塞は増加しており,頸動脈病変を適切に治療することは極めて重要である.頸動脈狭窄症の治療目的は,脳梗塞や一過性脳虚血発作の予防であり,その治療法は内科治療と,外科治療であるCEA,血管内治療(endovascular therapy: EVT)であるCASとに分類される.内科治療には,抗血小板療法に加え,高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙などのリスクファクターに対する治療が含まれる. CEAの有効性は複数の無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)で証明されている800, 806, 809–812).一方,CASはいくつかのRCTでCEAとの非劣性が示されているが,その効果とエビデンスレベルは限定的である. SAPPHIRE試験により,CEAハイリスク群におけるCASのCEAに対する非劣性が示されたが,CAS群でcomposite endpoint の一つであったNSTEMI(non ST-elevation myocardial infarction)の減少が多く見られ,塞栓合併症を比較していないという問題点が指摘されている803).その後,欧州でCEA通常リスク群の症候性病変を対象として実施されたRCTであるEVA-3S試験813, 814),SPACE試験815),ICSS試験816)では,いずれもCASはCEAに劣る結果であった.これらの試験では,遠位塞栓保護デバイスの使用率の低さとCAS実施医基準が厳格でなかったことが課題としてあがった.これらの問題点を克服したCREST試験が米国で行われた.同試験は狭窄率50%以上の症候