p.82 抽出テキスト
PQ 12 ~20%程度(全体の5~10%程度)は組織欠損を有する状態で生存していた276, 547).創傷治癒が得られた後もCLTI再発のリスクに注意して観察する必要がある. 4.5.5 CLTIに対する血行再建後の対側肢の予後 片側性にCLTIを呈する患者が,術後の経過中に対側肢にCLTIを発症することは珍しいことではない.1990~ 1995年に片側CLTIに対して血行再建術が施行された382例において,術後2年の対側CLTIの累積発症率は20%であった770).わが国の片側CLTI 96名の検討では,対側肢のCLTI発症率は1年で20.8%,3年で44.8%,5年で54.2%,創傷発生率は1年で8.7%,3年で21.2%,3年で21.2%であり,SPP 40 mmHg未満・透析が創傷発生と関連していた790).糖尿病合併CLTI症例533例(95.3%が血行再建術を施行)を対象とした海外の検討では,対側肢のCLTI発生率は,1年で17.9%(14.9% ~21.4%),3年で28.8%(25.0% ~33.0%),5年で42.3%(36.7% ~48.3%)であった791). 片側CLTI患者における無症候対側肢に対してどのように対処すべきか? Answer将来CLTIを発症するリスクが高く,慎重な経過観察を要する.ただし無症候肢に予防的な手術治療は原則行うべきではない. 片側CLTI患者では対側肢にも重度の虚血が存在する可能性は高く,近い将来,対側肢にCLTIを発症することはまれではない770, 790, 791).ただし無症候肢に予防的な手術治療を行うことは原則推奨されていない(「4.1 無症候性慢性下肢動脈閉塞」を参照).対側肢の慎重な経過観察が求められる.また患肢の保護・免荷に際しては,対側肢に過剰な負荷がかかり受傷の誘因となることのないよう十分な配慮も大切である. 4.5.6 CLTIに対する血行再建後の心血管イベント・ 生命予後 CLTIに対する血行再建術後の死亡率は,1年で15~ 20%程度,2年で20~30%程度,3年で30~50%程度と報告されている203, 204, 206, 208, 276, 773, 777, 778, 791).報告によって差を認めるのは,症例背景の違いによる可能性がある.後述するように,組織欠損や末期腎不全は死亡のリスク因子として知られるが,わが国と海外ではこれらの頻度が異なる.わが国では組織欠損例が80%を超えることも珍しくないが,海外の報告では80%未満のことも多い.また,末期腎 不全の頻度も,わが国では40~50%程度に対し,海外では1~10%程度のことが多い203, 204, 206, 208, 276, 773, 777, 778, 791).こうした違いが報告される死亡率に差をもたらしている可能性はある.CLTI患者の死因は,心血管関連死(心臓死,脳血管障害,腸管虚血を含む)が約半数,感染(敗血症,肺炎を含む)が約3分の1を占めている204, 206, 208, 780). CLTIの治療戦略を立てるうえで死亡リスクは重要な判断材料となるため,その予測モデルがいくつか提唱されている203, 204–206, 791).死亡リスク上昇に関連する因子としては,高齢,組織欠損やその重症度,低栄養状態,ADL低下,腎障害,心不全(または左室機能低下)などが挙げられる199, 203–206, 208, 778, 780, 791, 792). 低栄養状態に関しては,BMI低値199, 203–206, 208),低アルブミン血症199, 780, 792),低中性脂肪値199),低コリンエステラーゼ値206)などと死亡リスク上昇との関連が報告されているほか,総合的な栄養指標であるGNRI(血清アルブミン値と体重[対理想体重]から算出)やCONUT(血清アルブミン,総コレステロール,リンパ球数から算出)が死亡リスクと関連するとの報告もある207, 635).これらの報告はいずれも血行再建時の値と術後遠隔期の死亡リスクとの関連を検討したものであるが,術後追跡期間中のGNRIが血行再建時のGNRIとは独立して死亡リスクと関連したことも報告されており207),適切な栄養介入が生命予後の改善につながる可能性もある. ADL低下は多くの報告で移動能(自立歩行が可能かどうか)により評価されているが203, 204, 206, 208, 780, 791, 792),移動能に限らないADL全般の指標であるBarthel index 632)や,フレイルの側面から評価したClinical Frailty Scale 156)を用いて死亡リスクとの関連を示した報告もある.また,大腿筋肉量で評価したサルコペニアが死亡リスク上昇と関連したとも報告されている793).介助を要するCLTI症例の検討では,併存疾患や下肢の重症度よりもフレイルの重症度が死亡リスクと大きく関連していた794). 糖尿病は生命予後と関連しないとする報告が多いが199, 203–206, 208, 780),米国のVascular Quality Initiativeに登録された38470名の後ろ向き検討では,糖尿病は死亡リスクのわずかな上昇と関連していた(調整済みハザード比1.07 [95%CI 1.01~1.13]) 791).喫煙,慢性閉塞性肺疾患,CAD, CVDについては死亡リスク上昇と関連するという報告もある一方,関連しないとする報告もある199, 203205, 208, 780, 791).心疾患に関しては,CADの重症度よりも左室駆出率で評価した心機能の方が死亡リスクと関連したという報告もある776).下肢血管病変や血流障害の重症度と生命予後との関連については,関連を示唆する報告がある一方203),関連がないと