p.77 抽出テキスト
(≧80歳)と低アルブミン(<3.0 g/dL)であった739).さらに二次大切断後2年の歩行率は25%であった.わが国における後ろ向き観察研究による歩行維持率に関する検討では,膝下切断後では33%,膝上切断後では0%との報告がある740).わが国のCLTI患者は,高齢で,長期間透析によるアミロイドーシスによって手の巧緻性が失われ,糖尿病網膜症によって視力低下も認められる患者が多いため,義足装着が困難な患者も多く,その結果諸外国の報告に比較して歩行維持率は低い傾向にある.したがって若年者の事故や腫瘍切除後の患者のように,大切断術後に義足をつけて歩行が可能であるとの考え方は,わが国のCLTI患者においては当てはまらない.このように歩行機能が失われる可能性が高くなることや,創離開や周術期合併症があるため,安易に大切断を選択できない. 透析患者において大切断を選択し大切断によって歩行機能が失われると,外来透析クリニックへの通院が困難になり,透析ができる施設へ入所するなど患者の社会的な環境が大きく変化する.大切断によって在宅での生活が失われる可能性も十分考慮する必要がある.したがって患者が在宅での生活を強く希望する場合には,創傷と付き合いながら疼痛管理と感染制御などの緩和医療を在宅で行うということも,わが国においては選択する場合もある. c. 小/大切断後の創傷治癒率 切断部位により追加のデブリードマンや切断は4~40%に必要とされる741–743).足趾・足部切断後の再入院率は約20%と報告され,その大半は1ヵ月以内とされる741–743).潜在的にリハビリ困難症例に対して,複数回処置を必要とする切断は推奨されない.一方で,膝下切断後の一次治癒率は約60%であり,15%で膝上切断を要する741, 744).膝上切断は最も一次治癒率が高い切断手法であり,歩行機能維持可能性が低い症例においては検討すべきである.近年の米国からの報告では,膝下切断後12.6%,膝上切断後8.1%,英国からの報告では,膝下切断後1/6,膝上切断後1/8に術後30日での治癒不全を認めた745, 746). d. 大切断術後の生命予後(周術期及び晩期) 大切断術30日後死亡率は4~22%,大切断後5年の生命予後は30~70%と報告されている737–739).また膝下切断術後より膝上切断術後で予後は悪く,両側切断後の5年予後は40%未満とされる747).これら予後不良の要因は,複数の併存疾患やフレイルに起因する.糖尿病を併発したCLTI症例の大切断後予後は,非糖尿病症例より悪く,切断後生命予後は1,3,5,10年で,78%,61%,44%,19%と報告されている748). 2020年に報告されたUK national vascular registryを用いた大切断後の周術期予後調査では,周術期死亡は9.1% に認めた.また周術期死亡上昇に関与する独立予測因子は, 1緊急手術,2両側手術,3年齢,4ASA(American Society of Anesthesiologist’s grade)スコア,5術前心電図異常,6白血球上昇もしくはクレアチニンの上昇,であった.一方,周術期死亡に対して保護的な因子は,1膝下切断(vs. 膝上切断),2アルブミン値上昇,3高体重(vs. 低体重),4同側肢に対する切断歴,であった749).周術期死亡に至らなかった大切断後患者の晩期予後に関しては,1年で30~50%,5年で56~77%の死亡率と報告されている737).晩期予後予測因子は,1年齢,2どこから入院したか(施設 vs. 自宅),3血管手術歴,4小切断歴, 5脳血管疾患既往,6腎疾患既往,7心疾患既往,が報告されている718). 切断部位が高位になれば,その後の歩行維持率は低下する.諸外国と比較しわが国のCLTIは高齢及び維持透析合併率が高く169, 747),大切断後予後は不良である.後ろ向き観察研究による歩行維持率に関する検討では,CLTIに対する膝下切断後では33%,膝上切断後では0%との報告もあり740),諸外国の報告に比較して歩行維持率は低い.また特に低心機能症例は大切断に対する耐術能が低く,周術期死亡リスクは上昇する739).安易な大切断選択により不測の転機を辿る症例も少なくないため,これらすべての点に鑑み大切断の適応を適切に検討すべきである. e. 大切断術後の対側肢予後 大切断術後の対側肢大切断率に関する報告はさまざまで2.2%から44%と報告されている.また大切断術後の対側肢大切断リスクは,1腎不全,2動脈硬化性疾患(糖尿病性神経症の合併有/無いずれも),3初回切断が大切断(小切断ではない)とされている718).対側肢大切断の主な理由は,動脈硬化性疾患の進行である.一側大切断後症例において,抗血小板薬やスタチン服薬が約1/3で施行されていない報告がある719).大切断後症例に対しては,至適薬剤服薬下に少なくとも年1回のフォローは,対側肢大切断予後を防ぐ観点でも重要である. 4.4 血行再建術後の薬物療法(図16) 症候性LEAD患者に対する血行再建後抗血栓療法の目的は,心血管・下肢・血管イベント抑制である.上述通り抗血小板薬単剤療法(single anti-platelet therapy: SAPT)は,二次予防目的で終生投与が推奨される.一般的にアスピリンもしくはクロピドグレルが投与される(アスピリンはわが国において下肢閉塞性動脈硬化症に保険適用がなく, CADを併発している患者に投与されることが多い).一方