p.76 抽出テキスト
PQ 10 な治療である52).CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去である.繰り返される再治療と長い治療期間からの解放,可能であれば歩行維持を目的とした義肢の作製やリハビリテーションを大切断術により提供されるべきである. a. 大切断の適応 CLTIに対しては血行再建術が第一選択治療であるが,以下の状況においては大切断(一次大切断[primary amputation]:血行再建術を施行せず大切断,二次大切断[secondary amputation]:血行再建術を施行も不成功のため大切断)を検討する. 1再建不可能な血管疾患を有する状態大切断が選択される主たる理由として,血行再建術の不成功もしくは血行再建困難な場合が一般的である721).CLTIの最大20%に血行再建が困難なoutflow disease(below-theankle disease: BTA)を認めるとされている722, 723).足関節以下run-offが不良であると,EVTおよびバイパス術での成績が低下するため724–727),治療戦略を決定する際に血管病変の適切な評価を行うとともに血行再建以外の治療方針についても検討されるべきである. 2非機能肢(神経損傷や脳卒中による麻痺がある状態や関節拘縮により下肢機能が著しく障害された状態)血行再建術の適応は限定的であり,大切断は有効な治療である. 3足部の主要な運動負荷部位の壊死または制御不能な感染足の主領域の破壊はCLTIによる広範な壊死に加え創部の感染によって引き起こされることが多い.重症の創部感染は糖尿病に伴う末梢神経障害と関連が大きい728, 729).中足骨レベルでの切断では治癒が見込めない壊死・感染の拡がりや骨髄炎・深部感染症,踵を含む広範な壊死では大切断が考慮されるべきである. 4重篤な併存疾患や限られた生命予後しかない状態に対し回復まで長い期間を要するハイリスク手術の回避.重篤な併存疾患を有する患者や長期生存が見込めない患者においては大切断が適応となる場合がある.これには非歩行患者や認知症の患者が含まれる.日常生活を送るために何らかのサポートを必要とする患者など1年間の生命予後が50%程度しか見込めない患者群においては血行再建による恩恵が得られないとの報告もある169, 730).治癒率が低い治療を複数回行うことは重篤な合併症を引き起こすリスクを高め52, 731),長期入院は生活の質を低下させる732, 733).これに対して一次大切断は長期にわたって繰り返される再治療や長期に創傷ケアを必要とする状態を回避することで入院期間を短縮し,生活のレベルを治療前の状態に早期に戻せる可能性がある. b. 治療の選択と意思決定 大切断はCLTI治療の一つの選択肢であることは間違いない.一次大切断と二次大切断を比較した研究は複数報告あるが,バイパス術不成功後の死亡率が高いとの報告もある552, 734).患者の意思決定を支援し適切な治療法を選択することを可能にするためには,各治療法の期待される結果と予想される期間について正しく情報が共有されるべきである.下肢切断を受けた患者に対する調査研究では,意思決定プロセスとQOLに関わる要因として,切断のタイミング,shared decision making,切断後のサポートが重要であったとする報告がある735).また他の下肢切断を受けた患者への調査研究で,臨床経過においてより早い段階での切断を希望していた患者群も存在しているとする研究もあった736). 長期にわたるハイリスクな治療再介入の繰り返しや,創傷ケアの継続,疼痛の持続は患者の目標と必ずしも一致しない場合もあり,予見される治療効果や期間などの情報を共有し,適切な意思決定を支援していくことは極めて重要である.治療の各段階においても大切断や緩和医療を含めたあらゆる選択肢について話し合われるべきである. すべての非機能肢・血行再建術困難症例に対しては大切断術をすべきか? Answer非機能肢・血行再建術困難症例に対して,大切断術(一次・二次)ではなく緩和医療を選択する場合もある. CLTIの治療では血行再建術が第一選択である.しかし,わが国のCLTI患者は高齢,るい痩,低栄養,フレイルを伴うことが多く,糖尿病や維持透析患者の割合も多く,膝下以下単独病変など特殊な患者背景・病変背景を有する.高齢患者や寝たきり・進行した認知症患者,極度のるい痩,透析患者および心脳血管障害を有するCLTI患者の生命予後は2年程度またはそれ以下とされ205),血行再建術施行が困難な患者や血行再建術の恩恵が少ない患者もいるのが現実である555).そこで血行再建術により症状改善が困難な場合,あるいは生命予後が短い場合は,一次大切断術を行うか,緩和医療を行うことを検討する必要がある169). 大切断術30日後死亡率は,諸外国では4~22%,大切断後5年の生命予後は諸外国では30~70%と報告されている737, 738).わが国では,単施設の報告であるが,二次大切断術30日後死亡率は9%,二次大切断後2年の生命予後は49.6%であった.二次大切断後2年のリスク因子は高齢