p.73 抽出テキスト
果は明らかではない684).わが国において2021年3月には閉塞性動脈硬化症用吸着式血液浄化用浄化器が保険収載された.血行再建が不適応もしくは不応答な病変を有する潰瘍に対して使用し,従来治療より高い病変治癒率が得られた.従来のLDLアフェレーシスは高LDL血症がなければ使用できなかったが,LDLの値に関係なく使用可能となった685). ii. 脊髄刺激療法(spinal cord stimulation: SCS) 難治性慢性疼痛の治療に使用されていたSCSであるが, LEADにも使用可能である. 電極を腰部硬膜外腔に挿入し,感覚線維を刺激し鎮痛効果を発揮する686).2013年のコクランレビューでは, CLTIでのSCSの効果について分析されている.救肢率はSCS使用群で有意に高い結果であり,疼痛緩和効果も見られたが潰瘍治癒率には有意差は見られなかった687). iii. 高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy: HBOT) HBOTのメカニズムは赤血球の数とは無関係な血漿での酸素輸送,白血球酸素依存性ペルオキシダーゼシステムの機能改善などである688).また細菌感染がある場合,細菌の細胞構造を破壊するフリーラジカルを生成し,抗生物質の酸素依存性輸送を改善する689).CLTIを対象としたRCTにおいては,虚血に対する治療を行った上でのHBOTは微小循環の改善および潰瘍治癒,大切断回避において有効性を示した690–692).しかし大規模研究においてHBOTの有効性を示せない,もしくは大切断の増加と関連すると結論づけられた研究もあり693, 694),その評価は一定ではない.議論の余地は残るがHBOTを使用して,従来の創傷ケアに反応しなかった軽度虚血糖尿病性潰瘍の治癒を加速する役割があるかもしれない.ただし,HBOTは単独治療で四肢大切断を防ぐものではなく,CLTI患者の血行再建術の代替として使用すべきではない. iv. 腰部交感神経節ブロック 腰部交感神経節ブロックは,交感神経の過緊張を低下させることにより,疼痛緩和と側副血行路の血管拡張からの下肢血流増加を目的とする695).CLTIを対象とした研究で疼痛緩和の報告はあるが,切断のリスクを軽減する明確エビデンスはない696, 697). v. 間歇的空気圧迫療法(intermittent pneumatic compression: IPC) IPCは,下腿あるいは足部の間歇的な圧迫によって動静脈圧較差の増大や血管拡張物質の放出および側副血行路の形成を促進すると考えられている698, 699).CLTIを対象とした研究で,疼痛緩和や足趾血圧の上昇700),潰瘍治癒率の上昇701)等の報告はあるが,わが国において保険診療下では施行できない. 4.3.9 再生医療 LEAD患者に対する血管再生治療として,1990年代より血管増殖因子のタンパク・遺伝子治療,2000年代からは細胞治療が試みられてきた.これらに共通する治療コンセプトは,患肢における新規血管形成による微小循環の改善である. 2017年ESCガイドライン2)では,遺伝子治療及び細胞治療の推奨度はクラスIIIとされた.2019年GVG 52)において,遺伝子治療及び細胞治療の推奨度は,登録された臨床試験における限定使用がグレード1(強い推奨),エビデンスレベルB(中等度)とされた. わが国では,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」で再生医療等製品という審査カテゴリー,条件および期限付承認制度が新設され,また「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」,「先進医療制度」,「先駆け審査指定制度」等の法整備により,再生医療の薬事承認・実用化が推進されている. わが国での薬事承認事例,先進医療・治験実施事例の臨床試験について,海外でのRCTも加えて紹介するが,いずれの臨床試験もCLTIという概念が導入される以前にCLI患者あるいはLEAD患者を対象に実施されたものであり,本項ではCLIとして表記する. a. 遺伝子治療i. 肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor: HGF)血管新生作用を有するHGFを発現するプラスミドDNAを下肢筋肉細胞内に取り込ませ,細胞内で転写・翻訳されて,HGFの産生・分泌を促す. わが国でのCLI患者に対する第I/II相試験では,2ヵ月後から2年後に及ぶABI,潰瘍サイズ,下肢疼痛の改善702, 703)が報告された.米国704)およびわが国705)での二重盲検無作為化試験では,下肢切断率に有意な差は認められていないが,安静時疼痛・ABI・潰瘍サイズ等の改善を認めた(表45) 704–706).これらの臨床試験では,特記すべき 副反応は報告されていない. 2019年にわが国では初のHGF遺伝子治療薬ベペルミノ ● CLTIに対する遺伝子/細胞治療では,虚血組織にお ける微小循環の改善が期待される. ● CLTIに対する遺伝子/細胞治療の一部は,わが国で 保険診療や先進医療として受けることができる. ステートメント