p.72 抽出テキスト
CLTIについて知識を有するリハビリテーションスタッフが,専門医との連携の下,術後早期よりリハビリテーションを行うことで有害事象なく歩行能力およびADLの改善が得られたことが報告されている640).術後早期のリハビリテーションにより,患肢の浮腫軽減や,廃用予防が可能となるが,装具の着用や生活動作(正座や胡坐,床からの立ち上がり等)で再建後の血流が阻害されないよう注意する656). 感染創を有する場合,関節運動は相対的禁忌となる.腱上膜が破壊されると,細菌が腱に侵入し,単一線維に沿って細菌が近位側に拡散することが検証されている(invitro) 657).したがって,感染症状がみられる創については,歩行あるいは他動運動により腱が伸張され感染が拡大する可能性があるため,感染が収束するまでは腱の移動を伴う運動を制限する. d. 大切断後のリハビリテーション 一次切断後は,疼痛の緩和や下肢関節の拘縮予防,歩行再建が可能な場合は,移動能力の維持・歩行獲得を目的にリハビリテーションを行う(予後・歩行獲得率は「4.3.9大切断」を参照).大切断が決まった時点で術前から理学療法士(PT),作業療法士(OT),義肢装具士(PO)が関わることで移動能力が高く保たれることから641)リハビリテーションスタッフを含むチームにて集学的治療を行うことが推奨されている52). 切断術後に歩行が可能となった場合,在宅での運動や行動変容介入によって,退院後も1日あたりの歩数の増加と座位時間の短縮が得られることが報告されている658). 大切断後のリハビリテーションの進行は幻肢痛の有無によって左右される.大切断後の幻肢痛の出現頻度は78.8%に及ぶとの報告もあり659),神経障害性疼痛に対する治療660)が必要となる.幻肢痛に対する鏡療法・仮想現実を用いたフィードバックに関するシステマティックレビューでは下肢切断後の幻肢痛改善効果も示されているため661),大切断後のCLTI患者に対しても適応可能かもしれない. 4.3.8 薬物療法・補助療法 CLTIに対する第一選択治療は血行再建術である.しか ● CLTIに対して薬物療法や補助療法のみで予後を改善 したエビデンスはない. ● CLTIに対する薬物療法や補助療法は,補完的な役割 である. ステートメントし実臨床では血行再建術に適さない,もしくは血行再建を 行っても虚血の改善が十分ではない症例は多く存在し,それらに対しては薬物治療や補助療法が行われている.これらにより症状緩和や潰瘍治癒を目指すことになるが,エビデンスは十分ではない662, 663). a. 薬物療法i. プロスタグランジン製剤 細胞膜上のアデニル酸シクラーゼを活性化することでサイクリックAMP(cAMP)を増加させることで末梢血管拡張作用および抗血小板作用を発現する664).かつては,プラセボを対象としたいくつかの研究のメタ解析において,潰瘍治癒,疼痛緩和,AFSにおいてプロスタグランジン(PG)製剤使用による良好な結果が示されていた665, 666).しかし近年発表されたコクランレビューおよびメタ解析にてPG製剤はプラセボと比較し安静時疼痛や潰瘍治癒に有効性を示したが大切断や死亡に対する効果は示すことができなかった.また統計学的に有意な副作用出現が認められた664, 667, 668).CLTIに対して血行再建が不十分であった場合に残存する疼痛緩和や潰瘍治癒の促進を目的としてPG製剤の使用は考慮されるが,血行再建術が不可能な患者に対するCLTI患者の大切断を減らすためのPG製剤の使用を支持するデータは乏しい.よって,特に血行再建適応が考えられるCLTIに対しては,専門医紹介前にPG製剤継続投与による創傷治癒を期待し適切な治療タイミングを逸することは厳に慎むべきである. ii. シロスタゾール シロスタゾールによる跛行改善効果は明らかで,かつ多くの研究が存在するが,CLTIに対する研究は多くはない.しかし,いくつかの比較試験でシロスタゾール非使用群と比較しAFSが改善したとする結果も報告されている669–671).潰瘍治癒に有益であったとする報告672–676)やSPPが上昇するとする報告670)があるが評価方法が一定ではなく,大規模な研究データは十分ではない506, 671, 677). b. 補助療法i. LDLアフェレーシス LDLアフェレーシスは,血漿を分離した後にリポソーバーシステムもしくは二次膜を用いたシステムによりLDLコレステロールを分離,除去する治療法である.LDLコレステロールだけでなくVLDLコレステロールやLp(a),フィブリノーゲンも除去されることで酸化ストレス改善効果678–680)や血液粘度・血液流動性の改善681),抗炎症作用678, 681),血管拡張物質の産生682, 683),内皮機能改善680)などの効果が報告されている.LEAD患者に対して跛行症状の改善による歩行距離の延長効果が認められているが,潰瘍を有するCLTI患者に対して単独治療での潰瘍改善効