p.70 抽出テキスト
PQ 8 CLTIに対する栄養状態のゴールをいかに設定 すべきか? Answer栄養への介入がCLTI予後を改善することにおいてのエビデンスは乏しく,具体的な栄養マーカーの数値目標設定は現段階では困難である.栄養士も含めた多職種チームにて定期的に,患者ごとの栄養状態を把握し介入していくことが望まれる. 本ガイドラインでも記載されているようにCLTIにおける低栄養状態と患肢および生命予後悪化との関連については多くの報告がある14, 199, 508, 632, 633).栄養状態評価指標としては,従来,BMI,アルブミン値が使用されており,これら研究でのカットオフとしてBMI 18.5 kg/m 2,血清アルブミン値2.8~3.0 g/dLが使用されてきた.また近年では複合的栄養評価であるgeriatric nutritional risk index(GNRI: 血清アルブミン値と体重〔対理想体重〕から算出)やcontrolling nutrition status(CONUT: 血清アルブミン,総コレステロール,リンパ球数から算出)が使用されている554, 607, 634, 635). CONUTにおいては原著636に基づき栄養状態を層別化しているが207, 634, 635),GNRIにおいては,先行文献から群分けしたもの554, 635)や研究コホートの中央値607)やROC曲線に基づいて623)決定したもの等,そのカットオフ値は82~92とさまざまである.これらの研究では,血行再建時の栄養状態をもとに検討している.しかし併存疾患の重症度・罹患歴や,虚血性創傷の程度,罹患期間等がこれらの指標に影響を与える可能性が考えられ,栄養の介入が予後を改善するかは不明であった. しかし最近,血行再建時GNRIとは独立して血行再建後のGNRIが死亡リスクと関連したことがわが国多施設前向 き研究結果から報告されており,血行再建後においても適切な栄養管理により予後が改善する可能性も示唆されている207).とはいえ,これは観察研究であり現在のところ, CLTI血行再建後の栄養介入が予後を改善するかについての詳細な検討はない. 他の慢性創傷治癒と栄養介入については,いくつか介入試験がある.例えば,糖尿病性足病変患者の潰瘍治癒効果について,ビタミン,ミネラル,微量元素とともに20 gのたんぱくを投与した場合,6ヵ月後の創傷治癒効果が良好であったとのRCTがある637).また褥瘡においても栄養介入によって治癒が改善したとのRCTがある638).CLTIにおいても同様の研究が待たれるが,わが国のCLTI患者は透析患者が半数以上を占めるため,たんぱく投与量に関してもこうした他疾患でのプロトコールをそのまま使用するには問題がある. CLTI治療には多職種チームで治療が有用であることは知られ,栄養士もこのチームに加わることが望ましい52).血行再建後の患者に栄養カンファレンスを行い,併存疾患により腎臓内科,糖尿内科医師とも相談しながら,食事量,栄養指標マーカー等をもとにしばしば適切な補助栄養を付加する.アルギニン含有補助栄養に関しては足部感染の有無も判断し考慮することとなる.このように栄養介入にあたっても職種によるチーム医療の実践が必要である.しかし,医療者側の提案どおり,なかなか思うように栄養がとれないケースもしばしばあり,プレアルブミン,トランスフェリン,コレステロール等適宜栄養スコアをモニタリングしながら,定期的に再検討することが重要と考える. 上記のようにCLTIに対する栄養管理についてはエビデンスも少なく不明なことが多い.またCLTIにおいては併存疾患等患者リスク,患肢の状態も多岐にわたるため,患者ごとで必要なエネルギー,脂質,タンパク,微量元素等も異なると考えられる.栄養状態のゴールをいかに設定するか,というのは非常に難しいが,「併存疾患,患肢の状態(創傷の大きさ,感染の有無),ADL・廃用の程度,患者の嗜好性等をもとに多職種で検討して,目標を決定する.その後も食事量,栄養指標をモニタリングしながら継続していくことで少しでも栄養状態の改善をめざす」が肝要と考える. a b感染(骨髄炎) 炎症(骨髄浮腫) a 単純X線写真所見:末節骨に透亮像を認めた. b EVT後のMRI(T1強調)所見:末節骨に骨髄炎像と骨髄浮腫像を 認めた. 図15 単純X 線写真およびMRI による骨髄炎画像診断