p.65 抽出テキスト
PQ 7 の標的血管の選択に関する統一した見解はまだない.患者・患肢背景に加え,1手技成功率,2得られる血流量,3期待される遠隔期開存,4将来の外科的バイパス術に与える影響などを勘案し,選択されるべきである. 2)EVTの実際 複雑なIP病変では,順行性アプローチのみでは十分な手技成功率は得られず,逆行性アプローチが必要となる.逆行性アプローチでの第一選択は,標的血管の遠位真腔を逆行性に穿刺するdistal punctureである585).穿刺部の多くは外科的バイパス手術の吻合部と一致するため,穿刺による血管障害を考慮する必要がある.一方,「経側副血行路アプローチ」は,前述の穿刺部合併症のリスクを負うことなく行える586)が,側副血行路の傷害により,手技不成功時や遠隔期の足部血流を手技前より悪化させる危険性が否定できず,またリスクに関するまとまった報告はない.複雑な側副血行路を経由したガイドワイヤーは操作性に劣る事が多く,第一選択とし難い.遠位部穿刺が困難・不可能な症例に対して考慮してもよい. 技術やデバイスの進歩に伴い,IP領域の手技成功率は向上したが,手技不成功に終わる症例も散見される.わが国から報告されたJ-BTK CTOスコアによると,1遠位真腔が可視できるかどうか,2病変長,3血管径,4近位閉塞端の石灰化の有無,5エントリーの形状,から層別化を行ったところ複雑な病変はガイドワイヤーの通過率が低いことが示された587). 3)複数の下腿動脈病変に対する介入 IP病変のうち1本に対してEVTを行うことがCLTIに対する血行再建の基本であり,多枝に及ぶIP病変の治療介入に関しては明確なコンセンサスはない.海外で施行されたRCTでは複数枝への治療が,高い創傷治癒率を示したが,手技時間,造影剤量,放射線被曝量が増加した579).わが国からの単施設研究でも同様に高い創傷治癒率が示されたが580),欧州からの報告は相反する結果588)であり,複数枝治療の有効性や介入のタイミングに関する結論は出ていない. 4)足関節以下病変に対する介入 わが国から報告されたRENDEZVOUS研究では,IM病変へのEVTで大切断回避率,AFSの改善は見られなかったが,創傷治癒率・創傷治癒期間は有意に改善した563).またシステマティックレビューにおいても創傷治癒率を改善させる可能性が示された581).透析・糖尿病の罹患率の高いわが国のCLTIではIM病変の合併率が高く,これら病変の取り扱いや治療介入の必要性,介入時期に関しては,データの蓄積が待たれる. iii. ハイブリッド血行再建 EVTと外科的血行再建を組み合わせて行うものである.外科的血行再建単独での治療と比較し,1手術時間の短縮と出血量の減少,2術後創関連合併症リスクの低減,3使用するグラフト長の短縮,により術後合併症頻度や在院期間を短くすることが期待される.またEVT単独での治療と比較し,1EVTの技術的初期成功率の改善,2長期開存性の改善,3創傷治癒率・創傷治癒期間の改善,が可能となりうる.ハイブリッド治療にはこうした役割が期待されるが,EVT,バイパスの特徴,長所・短所を理解することが肝要である.AIへのEVTは,解剖学的複雑性にかかわらず,治療成績が良好であることが知られているため,この領域のEVTにCFAへのTEAや鼠経靭帯以下のバイパスを行うことは推奨される.またFPのEVTを施行した上で膝窩動脈をinflowとするバイパス術を行うことは理にかなっていると考えられるが,EVT後の長期開存が期待できる病変であることが前提である.しかし,どのような病変へのEVTが,バイパスにとって信頼できるinflowとなりうるか,まだ一定の見解はない589). CLTIに対して外科的バイパス術とEVTをいかに選択すべきか? Answer CLTIに対する血行再建術選択は,1全身状態と予想される生命予後,2グラフト使用可能な自家静脈の有無, 3創傷及び解剖学的重症度,により決定される. CLTIに対する血行再建術選択は,EVTにて許容可能な治療成績を得られるようになった今日において,外科的バイパス術に適した症例をいかに見極めるかが重要となる. 2005年に報告されたBASIL試験結果より,予想される生命予後が2年以上かつ使用可能な自家静脈を有するsevere limb ischemia症例が,外科的バイパス術の恩恵を受ける可能性があることが報告された562).2017年に発表されたESC/ESVSガイドラインでは,長区域の閉塞があり,かつ大伏在静脈が使用可能で,かつ手術に適する(手術の非適応でなく,適切な吻合部位・run-offが存在する)症例が,外科的バイパス術が第一選択治療とされている45).ここでは,創傷の重症度は加味されていない.一方で,2019年に発表されたGVGにおいては,PLAN(patient, lower limb and anatomical complexity)approachにて血行再建術手法を選択すべきとされている52).GVGでは,血行再建術の適応があり,推定2年生存率が50%以下または周術期死亡率が5%以上の高リスクCLTI症例はEVTを考慮し,それ以外の標準的リスク患者では,代用血管としての静脈の