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p.53 抽出テキスト

PQ 5

他領域から血流が補われるが,多枝が閉塞するとその灌流領域もしくは分水嶺にあたる領域に虚血が生じ,側副血行路の発達が不十分の場合には潰瘍や壊死に陥る可能性が高くなる.治療にあたってはangiosomeを考慮して血行再建を行うことがより効果的との報告がある505, 506).一方で, angiosomeに基づく血行再建でなくとも改善が期待できるとの報告もみられ507, 508),その臨床的意義にはいまだ議論がある.

腸骨,大腿,下腿動脈の2領域以上に血流障害があるとCLTIに陥ることが多いが52)わが国に多い糖尿病や透析を背景に持つ患者では,膝下単独病変でCLTIに至ることも多く,約半数が膝下単独病変であるという報告もある509). Japan Critical Limb Ischemia Database(JCLIMB)の集計で,外科的バイパス術の50%以上を下腿動脈バイパスが占めることも,それを反映している362).また大腿深動脈は浅大腿動脈閉塞時の重要な側副血行路であるため,浅大腿動脈に加えて大腿深動脈が閉塞していると下腿以遠の虚血がより重症となる510).同様に膝窩部のネットワークも重要で,下腿3枝閉塞においては,膝窩動脈から分岐する腓腹動脈などが唯一の側副血行路となっていることもある511). iv.  機能検査(第2章「下肢閉塞性動脈疾患に対する検査」を参照) CLTIの機能評価には,足関節血圧(AP)や足趾血圧(TP),経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension: tcPO2),皮膚灌流圧(SPP)などの無侵襲検査で得られる測定値の絶対値を用いる.tcPO2やSPPはより皮膚に近い部分の血流を反映し,CLTIの良い指標となるが,測定条件によって影響されることもある.潰瘍や切断端などの創治癒においてはTPとSPPを組み合わせることでより予測しやすくなり69),WIfI分類の虚血重症度判定にも,AP, TP,tcPO2だけでなく,SPPも考慮することにより精度の向上が期待できる67)(PQ6参照).

CLTI症例の虚血評価においてABI(anklebrachial index)評価で十分であるか? Answer ABI評価で不十分な場合(動脈高度石灰化例や足部動脈病変例など)は,TP,TcPO2,SPPなど,他の血流評価法を用いることを推奨する. SPPは,足部の血流評価に加え,潰瘍治癒予測指標として有用である.

APは文字通り足首にマーシェットを巻いて測定して求めるものであるので,足関節以下に有意動脈病変を認める場合にはABIは足部の血流を反映しない.また,マン

シェットを巻く部位の主幹動脈に高度石灰化が存在する場合,加圧しても動脈が閉塞できないと血圧測定ができない,もしくは,できたとしてもAPの数値が不正確となる.

足部末梢の血流を直接評価するための方法として,TP, TcPO2,SPPなどが現在一般の診療で使用可能であり,それらは相互に概ね良好な相関を有している69).透析患者で足趾レベルの動脈まで石灰化があるような例があるが,各種測定法の中でSPPが透析患者において最も虚血重症度の診断能が高いと報告されている. 295)

2014年に提唱されたWIfI分類において,3つのコンポーネントのうち,“I grade”は,ABI,AP,TP,TcPO2によって区分されている(SPP値については定義されていない). 23) WIfI分類はその後複数のガイドラインでもその利用が推奨され,日本でも広く普及されつつある一方,日本で広く普及しているSPP値による区分がなされていないことは日常診療でWIfI分類やWIfI gradeを決定する際に甚だ不便である.

このような背景から,本ガイドラインがその区分を提唱する役割を担う必要があると考え,これまでSPP測定に関するエビデンスを集積し67-69, 512),WIfI分類で提示されているABI,AP,TP,TcPO2値との比較や創傷治癒可能性との検討を加え,その結果,表32のSPP値を本ガイドラインとして提唱する.

v. 画像検査

理学的所見から推定される血管病変部位を画像検査で確認する.病変の広がりが単区域か多区域か明らかにし,血流障害の責任病変を推定することができる.非侵襲的検査にはドプラ超音波法,CTA,MRAがある84, 513).患者背景,各施設の特徴,各検査法の利点欠点を考慮して選択する.ドプラ超音波法は最も非侵襲的であり血流速度により血行動態の評価を行えるが,使用機器や術者によって精度が異なる.またドプラ超音波は石灰化病変に対しては音響陰影のため十分な評価ができず514),下腿から足部動脈病変の正確な評価は困難である.CTAやMRAの精度は向上しているが,ヨード系造影剤による造影剤腎症やガドリニウム系造影剤による腎性全身性線維症のリスクがある.

表32 WIfI ischemic grade に対応するSPP 値(推奨)

WIfI ischemic grade SPP value

I-0 ≧50 mmHg I-1 40~49 mmHg I-2 30~39 mmHg I-3 <30 mmHg