p.46 抽出テキスト
ている401).最も大規模なRCTでは,跛行治療におけるシロスタゾールおよびペントキシフィリン(初の跛行治療薬として1984年に米国FDA(Food and Drug Administration)承認を得た薬物)の効用が比較され,シロスタゾール群で有意に最大歩行距離の延長が示された411).心不全がない場合の跛行症状改善の第一選択とされてきた. 一方,わが国ではLEADに対する保険適用はないものの,SVS2015やESC2017のガイドラインにおいて高い推奨度とエビデンスレベルに位置づけられているのがスタチンである2, 365).LEAD患者の全死亡や脳心血管イベントの減少が示されていることがこのような位置づけになった根拠である398–400).スタチンは跛行改善効果が示された薬剤のなかで,最も歩行距離の延長が期待できるとされているが412–414),欧米では用法用量が大きく異なることを留意する必要がある. ii. 運動療法 運動療法は,跛行症状やQOLを改善し,最大歩行距離を延ばすことが示され,高いエビデンスを有する415).2012年に報告されたCLEVER試験では,大動脈– 腸骨動脈病変を有する跛行患者を薬物療法単独群,薬物療法+監督下運動療法*群,薬物療法+血管内治療群に無作為に割り付け,6ヵ月の時点で薬物療法+監督下運動療法群で最も歩行時間の延長を認めた416).運動療法はABIを改善させるものではないが,その効果発現のメカニズムには既存の側副血行路の発達,血管新生,一酸化窒素による微小循環改善,骨格筋の代謝順応性改善などが関与するとされる417).加えて,運動療法には,リスクファクターを改善する効果も期待される. 運動内容に関しては,歩行(トレッドミルまたはトラック歩行)が他の運動(サイクリング,階段昇降,動的・静的下肢運動など)よりも優れている418).跛行を生じる強度で歩行し,痛みが中等度になれば休むことを繰り返し,1回30~60分間行い,週3回少なくとも3ヵ月間行うことが推奨されている.運動療法には患者のコンプライアンスが必須であり,監督下運動療法が非監督下よりも跛行改善効果が大きいことが示され403, 405),可能であれば監督下運動療法が推奨される.しかし,わが国では保険で認可された監督下運動療法施設が非常に少ないことが課題である. 現時点では,間歇性跛行を有するLEAD患者に対しては,運動療法+薬物療法が第一選択である.一方,運動療法の障壁となり得る心肺機能障害やADL低下を呈する患者や超高齢者が少なくなく,これら3ヵ月に及ぶ継続的な運動療法の適応となりにくい患者群に対するマネジメントは今後の課題であり,責任病変が近位部であれば血行再建術を第一選択に考慮することもある.いかなる血行再建術を行った後においても,運動療法継続の有効性が証明さ れている408–410). * わが国では「supervised exercise therapy」の邦訳として「監 視下運動療法」という用語が慣例的に使用されているが,より適切な「監督下運動療法」を本ガイドラインから採用した. b. 血行再建術(EVT,外科的血行再建) 表26 間歇性跛行を呈するLEAD の血行再建術の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 5 cm 未満の腸骨動脈閉塞病変はEVT を行う419). I C重篤な併存疾患を有する長区間または両側性腸骨動脈閉塞病変はEVT を考慮する420, 421). IIa B provisional stenting よりprimary stentingを考慮する420 -422). IIa B経験豊富なチームが行い将来起こりうる外科手術の妨げにならなれば大動脈を含む腸骨動脈閉塞病変はEVT を考慮してもよい423, 424). IIb B腎動脈直下に及ぶ広範囲大動脈腸骨動脈閉塞で,手術リスクの低い跛行患者に対しては解剖学的な大動脈– 両大腿(もしくは腸骨)動脈バイパス術を考慮する424 -426). IIa B非解剖学的バイパス術は,解剖学的バイパスやEVT が困難な場合に考慮してよい427, 428). IIb C i. 大動脈腸骨動脈領域1)EVT 大動脈腸骨動脈領域は足部への流入動脈でありEVTによる間歇性跛行の改善が期待できる.多分節病変に対してはまず流入動脈から血行再建を行い間歇性跛行の改善が ● 腸骨動脈病変はEVTを第一選択とする. ● 総大腿動脈病変は外科的内膜摘除術を第一選択と する. ● 大腿膝窩動脈病変は,短~中区域病変はEVT,長 区域病変は外科的血行再建を第一選択とする. ● 跛行肢に対する膝下動脈病変の血行再建は推奨さ れない. ● 動脈硬化リスクファクターの是正,薬物療法,運 動療法を検討,実施していない跛行患者に血行再建術を行うことは推奨されない. ステートメント