p.41 抽出テキスト
生の阻害373),微小還流量の低下374)なども認められ,単に動脈病変の結果としての血流供給不足以外の要因も関係している.さらに,慢性の血流低下により下腿骨格筋の構造や代謝が変化し375),細胞レベルではミトコンドリア機能が低下する376)など,筋自体の変化も間歇性跛行の病態生理に関与している. 症候性LEADのうち,70~80%が間歇性跛行を主訴とする.血管狭窄・閉塞部位は腸骨・大腿動脈に好発し,腓腹部に症状が出やすいが,内腸骨動脈では臀部(臀筋跛行)に,下腿動脈より末梢に病変があるバージャー病では足底部に症状が出やすい.しかし,CLTIの患者が全身の動脈硬化症を有しているように,間歇性跛行の患者でも,全身の動脈硬化症の1つの病態を診ているに過ぎない365)ということも認識しておく必要がある.したがって,間歇性跛行の患者に対しては,足の症状の治療と同等に脳心血管リスクの低減が治療の骨格となる. 4.2.2 患者・下肢・血管病変評価 表21 間歇性跛行を呈するLEAD の下肢・血管病変の管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 動脈硬化症のリスクを有する患者や,間歇性跛行や下肢機能低下のある患者では,血管疾患を疑って病歴と症状の聴取を行う150, 152, 172, 377, 378). I B動脈硬化症のリスクを有する患者や下肢機能低下のある患者では,末梢動脈の触診や聴診を含めた下肢の診察を行う150, 152, 172, 377, 378). I B病歴または診察所見からLEAD を疑う患者には,ABI 測定を含む客観的検査を行う24 -29, 377 -380). I B間歇性跛行を呈し,安静時のABI に異常を認めない場合は,運動後のABI 測定を行う35 -38). I B間歇性跛行を呈するLEAD 患者には,下肢機能の評価を目的に,運動後ABIの回復時間測定や歩行距離検査を考慮する35, 43, 44, 381). IIa B血行再建術を考慮する症候性患者では, CTA,MRA,血管造影検査などの画像診断を行う73, 82, 382, 383). I C治療方針の決定にあたり,画像診断による病変形態のデータは,症状や機能検査の結果と併せて分析を行う35, 43 -45, 53, 381). I C画像検査では,同時に腹部大動脈瘤のスクリーニングを考慮する45, 384 -386). IIa C a. 病歴聴取と身体診察 LEADのリスクファクター(図4)を有し,間歇性跛行などの下肢症状や下肢機能低下がみられる患者には,鑑別診断(表22,23)も兼ねた詳細な病歴の聴取と身体診察を行う.神経性の跛行症状を呈する腰部脊柱管狭窄症や,下肢の関節疾患は,いずれも高齢者で頻度が高く,LEADと併存していることも多い53, 365, 377–380, 387).慢性虚血を示唆する所見には,下肢の動脈拍動の減弱,四肢の皮膚の色調や温度の変化,汗腺の機能障害に基づく乾燥肌,筋萎縮,発毛の遅れ,爪の肥厚や成長遅延などがある.診察でLEADが疑われる場合は,機能検査や画像検査によって診断を確定する.動脈硬化性LEADは全身性動脈硬化の一部分症であるため,頸動脈や上肢の動脈の拍動や血管雑音も確認する. b. 機能検査(第2章「1. 機能検査」を参照) ABI測定は,間歇性跛行症状を呈する他の疾患との鑑別診断にも有用である.安静時ABIの正常値は1.00~1.40で,0.91~0.99 はボーダーライン,0.90以下は異常低値, 1.40 より高値は異常高値である.容積脈波記録(pulse volume recordings: PVR)を用いた装置では,波形と振動信号に減弱がないかもチェックする.可能であればTBIも測定する.ABIが0.91以上でPVR,振動信号,TBIに明らかな異常値がなくても,下肢虚血が疑われる場合は,運動負荷後のABIを測定する35–38).虚血肢では,運動負荷によって足関節血圧あるいはABIが低下する.運動負荷にはトレッドミル歩行を用いることが多い.トレッドミルの設定は,TASC IIにおいては,3.5 km/時で傾斜角12%,ESCガイドラインでは3 km/時で傾斜角10%が一般的とされ, ABIが20%以上低下もしくは足関節血圧(ankle pressure: AP)が20 mmHg以上低下した場合を異常としている(図4) 45, 53, 56).わが国におけるトレッドミル設定は,2.4 km/時,傾斜角12%とする場合が多い.歩行時間は最長5分以内で,施設によってさまざまである388–391).歩行速度は,他者との比較が不要な場合には,患者の歩行能力と安全性に応じて減速してよい.歩行が困難な患者では,他の運動方法(足関節屈伸運動など)を考慮する56, 392–394). 間歇性跛行の重症度評価には,比較対象間で統一した運動負荷量を用いて行う歩行検査が有用である.運動療法や血行再建術後の治療効果の判定にも,治療前と同一の運動負荷量を用いる.客観的評価には,運動負荷後ABIの回復時間の測定35, 381)や近赤外分光法395, 396)がある.歩行後に低下したABIは時間経過とともに負荷前値に戻るが,その回復時間は虚血に対する代償機能を反映しており遅いほど機能障害が強い397).安静時ABI値が同等の患者