p.39 抽出テキスト
PQ 2 血評価または冠動脈CT)は心血管イベントのリスク層別化を考える上で有効であると思われるが,予後を改善するエビデンスは明らかではない.しかし,LEADの重症度の高いCLTI患者には,CAD合併率も高く,最適な血行再建術を含めた包括的管理のために,CADスクリーニングは必要であると思われる. 症候性LEADに合併した無症候性重症CADに積極的冠動脈血行再建術を行うべきか? Answer解剖学的に重症な冠動脈疾患で長期予後改善が見込まれる症例は積極的に冠血行再建を考慮すべきである. いわゆるpolyvascular disease症例では症候を有する疾患の治療が優先される.合併疾患の治療においては疾患の不安定性と重症度評価が重要である.病態の不安定性は症状,画像評価,生化学的マーカーなどから総合的に判断され,不安定な病態と判断されれば可及的早期の血行再建が望ましい.冠動脈病変の重症度評価は,病変の解剖学的局在,狭窄度,病変形態を加味したSYNTAX scoreや核医学検査などでの広範囲にわたる灌流低下,負荷時の一過性左室拡大,左室機能低下,肺野集積増加などの所見が参考となる.運動耐容能が低い症例も重症にあたる.高度跛行例は運動が制限されているために,重症冠動脈疾患であっても日常生活では無症候である場合がある点は留意が必要である.一方,下肢閉塞性動脈硬化症においてはCLTIが不安定な病態に該当し,血行動態的な重症度も判断の参考となる.不安定な病態や,解剖学的に重症冠動脈疾患であれば,冠血行再建の恩恵は大きく,無症候であっても血行再建を前提とし戦略を考えることが望ましい. 冠動脈血行再建の臨床的な意義は症候,QOLの改善と長期予後の改善にあるため,無症候性重症冠動脈疾患に対する血行再建は長期予後の改善効果が期待できるか否かにかかっている.すなわち,血行再建に伴う周術期リスクと,予想される生命予後改善を勘案することとなる. CABGに伴う周術期の死亡リスク,合併症発生リスクはSTSスコア,EUROスコアII,Japanスコアなどで予測可能である.一方,CABG,PCIによる血行再建で期待される4年生存率はSYNTAX score IIから推定可能である(欧米の成績である点に注意).なお,SYNTAX score IIにおいてPAD合併は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD),クレアチニンクリアランス,年齢,左室機能などの因子に加えて生命予後を規定する一因子として採用されている351).これは,冠動脈疾患の治療におけるPAD診断の臨床的意義を示唆するものと言える. 治療の順位としては,下肢動脈のEVTが困難で全身麻酔下の下肢バイパス手術が必要な時には冠動脈血行再建術を優先する.PCIであれば撓骨動脈アプローチで完全血行再建を目指す.解剖学的にCABGが必要な時はGSVを使用しない動脈グラフトを用いたCABG,人工心肺を用いないオフポンプバイパス手術が望ましい.補助循環などが必要な症例は下肢の虚血,再灌流障害などへの影響も考慮する必要がある. 4 慢性下肢動脈閉塞に対する診断・ 治療 症候別アプローチ 4.1 無症候性慢性下肢動脈閉塞 表20 無症候性LEAD の管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 無症候性LEAD 患者は総じて下肢の予後が良好であるが,一部には高度下肢虚血症例も含まれることを念頭において診療を行う164, 359). I C無症候性LEAD 患者に,動脈硬化のリスク管理を行う360). I C無症候性LEAD 患者の下肢動脈病変に対して血行再建術を行うべきではない359, 361 -364). * III Harm C *ただし血行再建後の患者に対しては個々に対応を考慮する. LEAD患者の中では無症候の患者の割合が最も高く,症候性の2~5倍と見積もられている45, 56). 血管病変や虚血が軽微であれば無症候となることは想像に難くない.しかし,無症候だからといって血管病変や ● 総じて下肢の予後が良好であるが,一部には下肢 虚血が重度な,いわゆる「潜在的重症下肢虚血(subclinical critical limb ischemia)」も含まれ,その場合,CLTI発症の前段階にある可能性がある. ● 生命予後は症候性と変わらず不良であるため,生 活習慣の改善,動脈硬化症リスクの管理を行うべきである. ● 下肢病変の予防的血行再建術は行うべきではない. ステートメント