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p.36 抽出テキスト

た下肢バイパス術後のLEADを対象としたRCTでも,アスピリン単剤と比較し,アスピリン・ワルファリン(PT- INR 1.4~2.8)併用療法では死亡と出血イベントが多く,バイパス開存の改善効果は細径人工血管の場合に限られた319).これらに基づき,2016年AHA/ACC PADガイドラインは,抗凝固薬は二次予防の目的では用いないとした(クラスIII Harm,レベルA) 56).2017年ESC/ESVS PADガイドラインは,症候性あるいは無症候性LEAD患者の二次予防に関して,他疾患(心房細動,機械弁,静脈血栓症など)のために長期抗凝固療法を要する場合には,抗血小板薬を加えず抗凝固薬(ビタミンK拮抗薬ないし直接経口抗凝固薬[direct oral anticoagulant: DOAC])の単独投与を推奨した(クラスI ~IIa) 45).

日本人などのアジア人は,ワルファリン使用時の頭蓋内出血が欧米人よりも多い320).心房細動の脳卒中予防では,高齢者ではPT-INR 1.6~2.6 を標的とするなど緩やかなPT-INR管理が行われている321).日本人の脳・心血管疾患患者では,ワルファリン単独投与はPT-INR中央値が2程度であっても,抗血小板薬1剤(大半が低用量アスピリン100 mg/日)よりも出血合併症が多かった322).LEAD患者はさらに出血リスクが高い集団である323).現時点ではワルファリンによる二次予防のエビデンスはない. b. DOAC

LEAD患者は腎機能低下の合併が多い.腎臓から排泄されるDOACは,腎機能が低下した患者では減量投与が必要である.透析患者では,PK/PD試験(pharmacokinetics/ pharmacodynamics study)に基づきアピキサバンが米国で適応を得たほかは禁忌である324).中和薬としてダビガトラン過剰には抗体325)が,Xa阻害薬にはdecoy 326)が開発されたが,高価である.実臨床ではXa阻害薬による頭蓋内出血は,中和薬よりも血漿製剤により治療されている327).

2018年,Xa阻害薬リバーロキサバンは,欧州では症候性LEADと虚血性イベントのリスクが高いCADに対し,アスピリンと併用する条件で,アテローム血栓イベントの抑制について適応症の承認を得た.米国でも,微量リバーロキサバン(2.5 mgを2回/日)と低用量アスピリン(75~100 mg/日)の併用療法が,慢性CADと動脈硬化性LEADの心血管イベントのリスク抑制に対して承認された.根拠となったのは,2013年から行われたCOMPASS(Cardiovascular Outcomes for People Using Anticoagulation Strategies)試験である328).低用量アスピリン(100 mg/日)・微量リバーロキサバン併用療法群,低用量アスピリン単独群,低用量リバーロキサバン(5 mgを2回/日)単独群のRCTが,安定期のCAD(90.6%)および/あるいは閉塞性動脈硬化症(頸動脈病変ないし症候性LEAD:27.3%)の患者(日本人5.6%,出血高リスク,重度腎不全,すでに抗血栓療法中

の患者などは除外)を対象に行われた.本試験は,試験途中にてアスピリン・微量リバーロキサバン併用群における有効性の優越性に基づいて,早期中止された329).

アスピリン・微量リバーロキサバンの併用群ではMACE (心血管死亡/脳卒中/心筋梗塞の複合)が有意に抑制された(4.1% vs. 5.4%).一方で併用群では,低用量リバーロキサバン単独群における結果と同様に,modified ISTH (International Society on Thrombosis and Haemostasis:国際血栓止血学会)による大出血イベント(致死的出血/重要臓器の症候性出血/再手術を要する手術部位への出血/出血による入院)が増加した(2.3% vs. 1.9%) 328).出血の多くは消化管出血(1.5 vs. 1.0%)で,致死的出血,頭蓋内出血,重要臓器の症候性出血では有意差もなかった.正味の利益(net clinical benefit: NCB)として,複合リスク(心血管死亡/脳卒中/心筋梗塞/致死的出血/重要臓器の症候性出血)は,アスピリン・微量リバーロキサバンの併用群でアスピリン単独群よりも低かった(4.7% vs. 5.9%).

サブ解析でPAD患者(有症候LEAD/ABI<0.9を有するCAD/頸動脈狭窄)においては,併用はアスピリン単独と比較し,出血イベントを増加させたが(3.1% vs. 1.9%), MACE(5.1% vs. 6.9%)だけでなく主要有害下肢事故(major adverse limb event: MALE) (大切断/新たな急性ないし慢性下肢虚血)の発症率が低かった(1% vs. 2%)

330).

さらに,LEAD患者(有症候あるいはABI<0.9)ではMALEの発生を43%減少させ(1.5% vs 2.6%),観血的治療を含めた下肢イベントを抑制した331).

続いて2015年から行われたVOYAGER PAD(Vascular Outcomes Study of Acetyl Salicylic Acid Along With Rivaroxa ban in Endovascular or Surgical Lim b Revascularization for Peripheral Artery Disease)試験は,日本も参加した,下肢血行再建術が成功した術後10日以内の患者を対象としたRCTである131).低用量アスピリン+微量リバーロキサバンは,アスピリン+プラセボとの比較で,主要複合評価項目(急性下肢虚血/血管疾患が原因の大切断術/心筋梗塞/虚血性脳卒中/心血管死)の推定発生率を低下させた(17.3% vs. 19.9%).大出血の推定発生率は,ISTH基準では併用群が高かったが(5.94% vs. 4.06%),TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)分類(大出血/小出血)では有意差がなかった(2.65% vs. 1.87%).

LEADは全身性の動脈硬化のためそれ自体が出血高リスクとされ323),患者にはさらに高齢,フレイル,透析患者,低体重などのリスクが重なる322, 332, 333).米国では,アスピリンを内服中で虚血性心疾患と肢虚血が共に高リスク(下