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p.35 抽出テキスト

要である.透析患者では,大動脈弁狭窄症(aortic valve stenosis: AS)は1.5~8.0%/年の発症率を有し,0.23 cm 2/年の早いスピードで狭窄が進行する282).AS進展スピードにはカルシウム・リン代謝異常やβ 2ミクログロブリンの蓄積が関与するため十分な溶質除去を行う必要がある.重度のASは透析管理を困難とし末梢循環障害を悪化させるため,AS合併の有無や進展に留意し手術や経カテーテル的大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation: TAVI)などの治療適応を適時考慮する.

2.6.3 定期的スクリーニングと病診連携

早期発見のため,定期的なABIやSPPなどによるスクリーニングを行う272).「透析患者の下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が設定されており,透析クリニックと基幹病院間で早い時期から連携することで重症化予防に努めることが重要である.また,普段からのフットケアが重要である.

2.7 抗血栓療法

2.7.1 抗血小板療法

表16 LEAD の抗血小板療法の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

症候性LEAD に対して抗血小板薬を使用する307). I C a. アスピリン

アスピリンは各種動脈硬化疾患の心血管死亡・心筋梗塞・脳梗塞予防について膨大な臨床エビデンスを有する308, 309).しかし,LEADのみを対象とした大規模なRCTは行なわれていない.LEADにおけるアスピリンの有効性を検証したメタ解析では,18の試験の5,269例にてアスピリンの心血管イベント予防における有効性を確認できなかった310).LEADではCAD,CVDの合併症例にて心血管イベント発症リスクが高い174).CAD,CVDにおけるアスピリンの有効性は証明されている.しかし,LEAD単独ではアスピリンの心血管イベント発症予防効果のエビデンスは十分ではない. b. クロピドグレル,その他のP2Y12 ADP受容体阻害薬

クロピドグレルはCAD,CVD,LEADを対象としてアスピリンに勝る有効性を示した307).LEADのみを対象とした試験ではないためサブ解析の域を出ない.2001年にクロピドグレルの薬効標的P2Y12アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate : ADP)受容体がクローニングされ311),その選択的阻害薬としてチカグレロル,cangrelorが開発された.症候性LEADを対象としてチカグレロルとクロピドグ

レルの有効性,安全性を比較するEUCLID試験が施行された312).13,885例を対象としたRCTでは心血管イベントの発症に群間差を認めなかった.重症虚血肢の発現率にも差を認めなかった312). c. そのほかの抗血小板薬

PDE(phosphodiesterase)-3阻害薬であるシロスタゾールには抗血小板効果もあるため日本では抗血小板薬に分類される.シロスタゾールは,末梢血管疾患による間歇性跛行の歩行距離を延ばすエビデンスがある313).脈拍数増加による心不全の増悪などが懸念されたが,長期安全性試験においてシロスタゾール服用群と非服用群の死亡率に差はなかった314).

トロンビン受容体阻害薬vorapaxarはCAD,CVD, LEADにおいて標準治療と有効性,安全性の検証が行なわれた315).LEADとして登録された約14%における心血管イベントのハザード比は0.94(95%CI 0.78~1.14)であった.

2.7.2 抗凝固療法

表17 LEAD の抗凝固療法の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心房細動を有し,CHA2DS2-VASC スコア>2 のLEAD 患者には,抗凝固薬(ビタミンK 拮抗薬ないしDOAC)を投与する45). I A症候性あるいは無症候性LEAD 患者の二次予防として,他疾患(心房細動,機械弁置換後,静脈血栓症など)のために長期抗凝固療法を要する場合には,抗凝固薬(ビタミンK 拮抗薬ないしDOAC)の単独投与を考慮する45). IIa B CHA2DS2-VASCスコア=うっ血性心不全+高血圧+年齢75歳以上(2点)+糖尿病+脳卒中ないし一過性脳虚血発作(2点)+血管疾患(心筋梗塞の既往,PAD,大動脈プラーク)+年齢65~74歳+女性. a. ワルファリン

脳動脈血栓疾患の発生をワルファリン高強度群(PT-INR 2~4.5)と抗血小板薬群で比較したRCTのメタ解析では,ワルファリン高強度群において脳・心血管イベントの抑制効果が大きいものの重篤な出血イベントも多かった316).下肢バイパス術後のRCTでも,静脈グラフト使用例ではワルファリン(PT-INR 3~4.5)のほうがグラフト閉塞や動脈血栓のリスクが低かったが,重篤な出血リスクが多かった317).PAD(下肢/頸動脈/鎖骨下動脈)において抗血小板薬単剤と抗血小板薬・ワルファリン(PT-INR 2~3)併用療法を比較したRCTでは,併用群では脳・心血管イベント抑制効果の改善なく出血リスクだけが高まった318).ま