p.31 抽出テキスト
もが,すべてのPAD患者へのスタチン処方を推奨している45, 220, 221).特に,2017ESC Guidelines on the Diagnosis and Treatment of Peripheral Arterial Diseasesでは,治療開始前LDLコレステロールが70~135 mg/dLの症例では, 70 mg/dL未満または50%以上の低下を推奨している45).そして,2019ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidemiaでは,これら研究結果も踏まえて,PADはvery high risk症例とし,一次予防・二次予防においてもLDLコレステロール55 mg/dL未満または50%以上の低下を推奨している222). わが国において,動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版では,PADは高リスクとしLDLコレステロール120 mg/dL未満を治療目標として推奨している223).さらに,日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では,「二次予防において, PADを含む高リスク病態を合併する糖尿病患者の二次予防ではLDLコレステロール70 mg/dL未満という管理目標値を考慮する」とした224).具体的な目標値については2022年に発刊される日本動脈硬化学会脂質異常症診療ガイドラインを参考にされたい. 2.3.5 その他の薬剤 エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid: EPA)製剤に関しては,わが国で実施されたJELIS試験のサブ解析で,PAD患者においてもスタチンとEPA製剤の併用によりCAD発症が有意に抑えられた225).最近,PADおよびpoly-vascular disease症例では小腸コレステロールトランスポーター阻害剤やproprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)阻害薬によるLDLコレステロールの積極的低下治療が脳心血管疾患発症予防に有用であることが報告された212, 213).ゆえに,スタチンで十分なコントロールが得られない場合は,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤やPCSK9阻害薬との併用を検討する.しかし,これら併用療法とスタチンとEPA製剤の併用との有効性の対比は検討されていない.フィブラートに関しては, LEAD症例における脳心血管疾患発症予防への有効性は確認されていないが226),フェノフィブラートは下肢切断のリスクを軽減することが報告されている.その機序として脂質代謝改善以外の作用が推察されている227).LDLアフェレーシスもLEAD症例の下肢虚血症状を軽減するとする報告がある(「4.3.7 薬物療法・補助療法」を参照) 228). 2.4 糖尿病 表12 LEAD の糖尿病の管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 食事,運動,禁煙,肥満の是正などの生活習慣の改善により大血管症に由来するイベントの予防を行う229 -232). I C糖尿病に伴う大血管合併症に由来するイベントや死亡の予防には,血糖のみならず,血圧,脂質を含めた包括的リスク管理を行う229 -232). I Β厳格な血糖コントロールは大血管症によるイベントの抑制につながるが,治療強化による重症低血糖や肥満の増大につながる可能性に留意する233 -239). I Aリスク低減効果として,イベント高リスク患者ではSGLT2 阻害薬やGLP-1作動薬を考慮する240 -247). IIa Βリスク評価として,糖尿病患者に対して,下肢動脈の閉塞病変に対してはABIの測定を,硬化性病変に対してはPWV /CAVI の測定を考慮する248, 249). IIa C 2.4.1 スクリーニング 糖尿病患者では末梢神経障害を有する患者も多く, LEADと並存することで足病変が生じやすい250).LEADの評価として閉塞性病変に対してはABIの測定が,動脈血管壁硬化の評価には脈波伝播速度(pulse wave velocity: PWV)/心臓足首血管指数(cardio-ankle vascular index: CAVI)の測定が非侵襲的で有効であり248),糖尿病患者の大血管症予後の評価にも有用である249).また,糖尿病患者では末梢神経障害により虚血症状が自覚しにくいため, ABIおよびPWV/CAVI測定によるスクリーニングを年1回程度行うことが望ましい. 2.4.2 包括的リスク管理 糖尿病患者における大血管合併症に由来するイベントの抑制には血糖コントロールのみならず,高血圧症,脂質異常症などのリスクファクターを早期から包括的かつ厳格に介入することが重要であることが示されている229–232).日本における前向き介入研究であるJ-DOIT3では厳格介入群(目標HbA1c<6.2%,血圧<120/75 mmHg,LDLコレステロール<80 mg/dL)で脳血管イベントが通常治療群に比較して58%低下することが示された232).