p.29 抽出テキスト
に対するリスク因子管理は診療の基本である. ● 至適薬物療法(optimal medical therapy: OMT)に 加え,禁煙,運動,体重管理など包括的な管理が必須である. リスク因子の重複によってLEADの発症リスクは1.5倍から10倍に増大し185),LEADはCAD,CVDなどの動脈硬化疾患の合併が多く,年齢で調整後も心血管イベントの発症リスクが1.5~2倍高い161).このため,包括的なリスク因子の管理がLEADの発症,増悪防止に加え予後改善のために必須である.しかし,実臨床においてLEADは過少評価されており,LEADと診断されても管理は不十分であると報告されている172, 186–188).薬物治療のみでなく,運動,禁煙等包括的なリスク管理はPAD診療の基盤であると認識すべきである. 2.1 高血圧 表9 LEAD の高血圧の管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 75 歳未満の降圧目標は130/80 mmHg未満,75 歳以上では140/90 mmHg 未満とする143). I A LEAD で優先すべき降圧薬はなく,病態,合併疾患などに基づいて薬剤選択を考慮する189, 190). IIa A虚血性心疾患合併例にはβ遮断薬の投与も考慮する191). * IIa A * β遮断薬による下肢症状増悪は比較検討試験で否定されており,投薬禁忌とはならない.高血圧は動脈硬化の重要なリスクファクターであるが, TASC II 53)ではLEADに対するオッズ比は1.5~2倍とされており,LEADへの関与度はCVDに対する関与ほど強くはない.中国で行われたLEADのメタ解析192)では,高血圧のLEADに対するオッズ比は1.94(95%CI 1.48~2.53)と喫煙(オッズ比2.62)に次いで高く,糖尿病(同1.71)を上回る.わが国で高血圧関連臓器疾患の合併率を検討した研究では,高血圧患者296例(平均年齢61歳)のうち14例(4.7%)にLEAD(ABI<0.90と定義)を認めた143). 2.1.1 降圧目標 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では,LEADを含めた脳心血管疾患を有する高血圧患者での降圧目標を75歳未満では130/80 mmHg未満に,75歳以上では140/90 mmHg未満に設定している153).厳格な降圧は下肢虚血症状の改善に対して無効な場合が多いが, 禁煙をはじめとする危険因子の除去とともに,脳心血管病イベントを予防するうえにおいて重要であることがTASC IIで示されている1).糖尿病患者950例を対象としたABCD(Appropriate Blood pressure Control in Diabetes study)研究では,LEADを有する拡張期血圧80~89 mmHgの患者53例において,積極的降圧治療(平均血圧128/75 mmHg)はプラセボ投与(同137/81 mmHg)に比べて有意に心血管疾患の発症を減少させ,積極的降圧を行っても下肢の症状は増悪しないことが確認された193).一方,平均年齢67.4歳,男性59.7%,糖尿病合併36.2%,平均血圧146/84 mmHg の33,357 名を平均4.3 年観察したALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering treatment to prevent Heart Attack Trial)における検討では1,489名にPAD発症(4.5%)を認め,収縮期血圧が120~ 129 mmHgであった群に比し,120 mmHg未満では1.26倍, 160 mmHg以上では1.21倍,拡張期血圧60 mmHg未満で1.72倍の発症を認めたほか,脈圧が45~54 mmHgであった群に比し,45 mmHg未満で1.21倍,65~74 mHgで1.29倍,75 mmHg以上で1.49倍とU字型の相関が示されている194). LEAD患者では抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)が投与されることも多いが,頭蓋内出血を予防するためにも,脳,心臓,腎臓などの虚血症状,所見に注意しながら130/80 mmHg未満を目指して降圧することが望ましい53). 2.1.2 降圧薬の選択 下肢冷感・疼痛,間歇性跛行などPADに関連した症状の降圧治療による軽減の効果は明らかではないが,β遮断薬投与が下肢虚血症状を悪化させる懸念については,無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)で問題ないことが示されている195). LEAD患者の降圧薬治療効果に関するメタ解析では,脳心血管疾患の発症予防効果に薬剤間で有意な差がない189),下肢虚血は悪化させない190)といった報告に留まっていたが,最近になり,71,917名の患者を用いたRCTのメタ解析において,Ca拮抗薬がコントロール群に比し,オッズ比0.70(95%CI 0.58~0.86)と有意なPAD発症予防効果を示すことが示されている196).