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4.6 虚血再灌流障害

虚血状態の組織に血流が再開すると,局所で産生された毒性物質により局所性,全身性の重篤な障害が惹起される(虚血再灌流障害).急性下肢動脈閉塞に対する血行再建後には,以下の2つの病態に注意が必要である. 4.6.1筋腎代謝症候群( myonephropathic metabolic syndrome:

MNMS)虚血時間が長くなると,筋肉など軟部組織の細胞壊死が進行し,乳酸,カリウム,ミオグロビン,クレアチンキナーゼなどが局所に蓄積される.治療により血流が再開すると,これらの代謝物質が全身に放出され,代謝性アシドーシス,高カリウム血症,致死的不整脈,急性腎不全,呼吸不全などの重篤な多臓器障害を引き起こす(MNMS).MNMSの発症予防や治療として確立された方法はなく,予兆があれば重炭酸塩や利尿薬の投与を行い,乏尿やカリウム高値を認めれば血液透析の導入を考慮する.

4.6.2 コンパートメント症候群

虚血によって障害された組織に血流が再開すると,筋肉などの組織の浮腫が生じ,筋膜に囲まれたコンパートメントの内圧が上昇して,組織の灌流圧が低下し虚血が進行する(コンパートメント症候群).

患肢の疼痛や腫脹から本症候群が疑われた場合には,必要に応じて各コンパートメントの内圧を測定して診断を確定する.筋組織の内圧は通常8 mmHg以下であり,20 ~30 mmHg以上で本症候群と診断する.本症候群による虚血が6~12時間以上持続すると,筋肉や神経に不可逆的な変化が生じる.したがって,本症候群と診断された場合には発症から6時間以内の可及的早期に筋膜切開を施行する必要がある4, 115).なお,筋膜切開後は感染や切開創治癒遅延などに留意して管理する4).

コンパートメント症候群に対する筋膜切開術の適応決定のためにコンパートメント内圧を測定すべきか? Answer臨床所見でコンパートメント症候群の診断や筋膜切開術の適応決定が困難な場合には,コンパートメント内圧を測定することが望ましい.

コンパートメント症候群は,臨床所見とコンパートメント内圧測定によって診断される.

症状としては,安静時痛,他動的伸展時の痛み,腫脹,感覚・運動障害が挙げられる.臨床所見による診断は,特異度は高いものの感度が低いとされ,とくに意識レベルが低下した症例では難しい場合もある115).

臨床所見のみで診断が困難な場合には,コンパートメント内圧を測定する.内圧測定の正確性については議論があるが,触診単独に比べ内圧測定を行うことで診断精度が向

上するとの報告もあり,診断の一助として測定する意義はある116, 128, 129).

一般的には,コンパートメント内圧が30 mmHg以上になると,組織の灌流圧が低下するため筋膜切開術が必要と考えられている.一方で,内圧が30 mmHg台の症例の多くでは筋膜切開をせずに保存的加療で経過観察可能であったとする報告もあり,筋膜切開術の適応として内圧40 mmHg以上,50 mmHg以上,拡張期血圧と内圧の差が30 mmHg未満,などさまざまな基準が提唱されている115, 116, 130).

4.7 血行再建後 後療法

急性下肢動脈閉塞の治療後は,再発を防ぐために原因検索が必要である.最も一般的なの心房細動や心筋梗塞を背景とした心原性塞栓,そして大動脈の壁在血栓による塞栓に代表されるアテローム塞栓症であり,その検索のために心エコー検査,24時間心電図,胸腹部の造影CT検査などが推奨される.また,患者が比較的若年(60歳以下)の場合は,悪性疾患と血栓性素因の検索を積極的に考慮する119, 120).

心原性塞栓による急性下肢動脈閉塞症患者に対する抗凝固療法の有効性は確立している117).古くからワルファリンが用いられてきたが,昨今では,出血性合併症が低いdirect oral anticoagulants(DOAC)の使用を積極的に考慮する4, 118).心内血栓やその原因が確認されていない患者に対する抗凝固療法は確立した治療ではないが,考慮してもよい4, 121).

動脈硬化(および膝窩動脈瘤)が原因とされる急性下肢動脈閉塞患者においては,通常の二次予防としての抗血小板薬投与やスタチンの投与が推奨される45).また,血行再建方法としてEVTが選択された場合,EVTで用いたデバイスに準じた抗血栓療法を行うことを考慮するが,複数の抗血栓薬を使用する場合は,出血リスクを十分に勘案すべきである.

VOYAGER PAD試験において,血行再建(外科的バイパス手術もしくはEVT)後に,アスピリン100 mg/日に少