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p.21 抽出テキスト

3 臨床症状と診断

表6急性肢下虚血(ALI)の診断の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ALI が疑われる患者には,末梢動脈のドプラ聴診を行う53). I C ALI が疑われる患者には,画像診断として造影CT 検査による全身の動脈検索を行う4). I C

3.1 身体所見

急性に発症し進行する患肢の疼痛(pain),知覚鈍麻(paresthesia),蒼白(pallor/paleness),脈拍消失(pulselessness),運動麻痺(paralysis/paresis)の“5P”が特徴である.また,これに虚脱(prostration)を加えて“6P”とする場合もある.さらに,筋肉硬直,水疱形成,壊疽の状態を把握する.また,大腿・膝窩動脈の拍動や腫瘤の触診(動脈瘤の有無の確認),ドプラ法による足背・後脛骨動脈の聴診を行う.初期病変から二次性血栓が進展すると症状はさらに悪化する.虚血に対する耐性は組織によって異なり,一般に発症から4~6時間で神経→筋→皮膚の順で不可逆的変化に陥る.知覚神経障害や,腓骨神経麻痺に起因するdrop footを認める場合は緊急性が高い. 3.2 病歴と既往の聴取

塞栓症と血栓症の鑑別診断を行うため,間歇性跛行・心疾患・不整脈・脳梗塞の既往,カテーテル検査・外傷・血行再建手術の病歴を聴取する.また,血栓溶解療法を考慮する際には脳出血や消化管出血など出血性疾患の病歴も重要である.

3.3 検査

心電図,胸部単純X線写真,血算,生化学,凝固系,尿検査に加え,血中・尿中ミオグロビン,CK,LDH,血液ガス分析を行う.画像検査として血管エコー検査,心エコー図検査,造影CT検査を施行する.ALIは肢のみならず生命予後も不良な疾患であり,閉塞部位の範囲,原疾患や塞栓源の精査および多発塞栓症の鑑別のため,下肢のみならず頭部から胸腹部・骨盤を含めた造影CT検査を可能な限り施行する4).高度腎機能障害やアレルギーのため造影検査がどうしても施行不可能な場合は,単純CT検査だけでも動脈瘤や動脈壁石灰化などの重要な情報が得られる.

3.4 重症度

重症度分類としてRutherfordが提唱し,TASC IIで改変された急性下肢虚血の分類(SVS分類)が汎用されており53, 108, 109),知覚障害,筋力低下,ドプラ音聴取の可否をもとに4群に分類されている(表7)

108, 109).知覚神経は障害

されているが,運動神経障害が軽度ないし中等度にとど

表7急性下肢虚血の臨床分類

カテゴリー予後所見ドプラ信号*

感覚消失筋力低下動脈静脈

I. 救肢可能即時性なしなしなし聴取可能聴取可能II. 危機的a.境界型ただちに治療すれば

救肢可能軽度(足趾のみ)

またはなしなし(しばしば)聴取不能聴取可能

b.即時型即時の血行再建によ

り救肢可能足趾以外にも,安静

時疼痛を伴う軽度~中等度(通常は)聴取不能聴取可能

III. 不可逆性広範囲な組織欠損または恒久的な神経

障害が不可避重度~感覚消失重度~麻痺(硬直)聴取不能聴取不能

* 重症例では罹患した動脈の血流速度が非常に遅いため,ドプラ音を検出できない場合がある.動脈と静脈の血流信号の見分けが肝要である.動脈の血流信号は律動音(心拍動と同期)であるのに対して,静脈の信号はより一定で,呼吸運動に影響されたり末梢のミルキングで増強したりする(ドプラプローベで血管を圧迫しないように注意が必要). (Rutherford RB, et al. 1997 108). TASC II Working Group, 日本脈管学会 編訳. 2007 109)より) Copyright (1997) Society for Vascular Surgery and International Society for Cardiovascular Surgery, North American Chapter., with permission from Elsevier.