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p.20 抽出テキスト

た96).塞栓症はしばしば再発するため,再発予防には塞栓源の同定と除去が肝要である97).

2.1 塞栓症

塞栓子が末梢動脈を突然閉塞し,組織虚血に陥る病態である.塞栓源により心原性塞栓症と非心原性塞栓症に分類される.塞栓閉塞は末梢血管の分岐部に起こりやすく,どの末梢動脈でも起こりうる.塞栓症の発症部位について,血管外科手術アニュアルレポート2014年では上肢21.5%,大動脈腸骨動脈領域15.4%,大腿膝窩動脈領域55.8%,3分岐以下19.5%と報告されている96).特に大きな塞栓子は腹部大動脈の分岐部で閉塞を起こし,いわゆる鞍上塞栓(saddle emboli)とよばれ,両下肢の急性動脈閉塞の原因となる.塞栓症は側副血行路の発達がないため,臨床症状は劇的で,経過とともに二次血栓を生じる.

2.1.1 心原性塞栓症

a. 心房細動,弁膜症

塞栓症はそのほとんどが心原性の塞栓子で,その中でも大部分を占めるのが心房細動によって生じる左房内血栓であり98),しばしば弁膜症に合併する.心房細動で血栓好発部位の左心耳は造影CTの早期相(動脈層)では造影効果が不十分であり,遅延相の追加撮影が有用である.機械弁による人工弁置換術後には弁に血栓が付着することがあり,術後の塞栓症が問題となる. b. 左室内血栓

心筋梗塞に起因する左室瘤や拡張型心筋症など心筋症に伴う左室壁在血栓による塞栓症に留意し,無症候性心筋梗塞の存在も念頭におく.わが国でも増加しつつあり,低心機能を伴う患者では生命予後は不良である. c. 奇異性塞栓

深部静脈血栓症が塞栓原因で,静脈系の血栓が開存卵円孔および心房中隔二次孔欠損[subclinical atrial septal defect(ASD)を含む]を通過して左心系に到達することによって,動脈塞栓症を併発する.奇異性塞栓による急性下肢虚血を検討したシステマティックレビューでは,82%に肺塞栓が併存していたと報告されている99). d. その他の原因

感染性心内膜炎,心臓/大動脈腫瘍(肉腫)

100),左房粘液

腫などがある.心臓腫瘍は若年者に比較的多い.不整脈のない原因不明の塞栓症に外科的治療を行った場合は,摘出した塞栓子を病理検体に提出して腫瘍との鑑別を行う101). 2.1.2 非心原性塞栓症

a. アテローム塞栓症

大血管の広範囲な不整粥状硬化病変(shaggy aorta)や穿通性動脈硬化性潰瘍(penetrating atherosclerotic ulcer: PAU),あるいは大動脈瘤壁からの粥腫や血小板血栓(platelet-rich thrombus)塞栓の頻度も増加しつつある102).これらの病態は足趾に突然強い疼痛とともに色調変化をきたす微細塞栓症(blue toe syndrome)の原因にもなる.血中好酸球増多が参考になるほか,血栓や組織の病理診断で,コレステロール結晶の証明によって確定診断される.大動脈瘤に対するステントグラフト治療などのEVTの発展に伴い,デバイス留置やカテーテル操作による医原性塞栓症も増加している103). b. 膝窩動脈瘤

壁在血栓により膝窩動脈以下末梢への遠位塞栓を生じる.

2.2 血栓症(thrombosis)

a. acute on chronic arterial thrombus

閉塞性動脈硬化症などの慢性閉塞性病変が,脱水,心拍出量低下,あるいはプラークの破綻などによって急性閉塞に陥ることをいう.慢性虚血による側副血行路の発達のため,塞栓症の劇的な発症様式とは異なり,比較的緩徐な経過を呈する.既往に間歇性跛行が存在することが多い.狭窄病変に塞栓子が詰まることもまれではなく,塞栓症と血栓症の明確な鑑別はしばしば困難である.慢性虚血肢に対する治療介入後の血栓性閉塞では側副路も退縮していることがあるので注意が必要である. b. 膝窩動脈瘤

急性下肢虚血症例の3.5%が血栓化した膝窩動脈瘤が原因であったとの報告や104),膝窩動脈瘤の約半数が急性下肢虚血で発症するとされており105),急性下肢虚血では常に念頭に置くべき疾患のひとつである.血行再建を行っても8~18%が肢切断となる肢予後不良の疾患であり106, 107),迅速な診断と適切な治療選択が要求される101). c. 血管炎

バージャー病,ベーチェット病,高安動脈炎,各種膠原病など.障害された動脈に血栓性閉塞をきたす.

2.3 その他の原因

大動脈解離,ステントやバイパスグラフト閉塞,外傷,過凝固状態,担癌状態,ヘパリン起因性血小板減少症(heparininduced thrombocytopenia: HIT)などがあげられる.