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p.122 抽出テキスト

て,一般に,動脈硬化を起こしやすい人がこの病気になりやすいと言えます.動脈硬化の原因はいくつか知られていますが,なかでも,タバコ,糖尿病,透析は動脈硬化を強力に進めることが知られています.

ただし,タバコを吸うとすぐに下肢閉塞性動脈硬化症になるわけではありません.タバコを吸い続けているうちにだんだんと血管の動脈硬化が進んでゆき,何年もたってから下肢閉塞性動脈硬化症を発症することになります.何も症状がないからと言って安心してタバコを吸い続けていると,知らず知らずのうちに,下肢閉塞性動脈硬化症になるリスクを高めてしまうことになります.しかも,一度進んだ動脈硬化は元には戻りません.下肢閉塞性動脈硬化症になってからタバコを止めても,脚(足)の動脈硬化が消えたり下肢閉塞性動脈硬化症が完治したりすることはありません.

糖尿病や透析に関しても同様です.糖尿病になったり腎臓が悪くなったりしたとたんに下肢閉塞性動脈硬化症になるわけではありません.糖尿病の状態や腎臓が悪い状態が長く続くと,だんだんと血管の動脈硬化が進んでゆき,何年もたってから下肢閉塞性動脈硬化症を発症することになります.ただし,糖尿病や腎臓病自体は初期には症状がないことが多く,定期的に血液や尿の検査を受けていないと,いつ糖尿病や腎臓病になったのか分からないこともあります.実は何年も前に糖尿病や腎臓病になっていたけれども,それに気づかず放置していたという場合,糖尿病や腎臓病をはじめて指摘されたときには動脈硬化がかなり進んでいて,すでに下肢閉塞性動脈硬化症になっていたということも起こりえます.

一度動脈硬化が進んでしまうとそれを消し去ることは困難であり,注意が必要です.下肢閉塞性動脈硬化症が疑われる場合には,ABI検査を行い,早期発見につなげることが重要です(Q5「下肢閉塞性動脈硬化症は,簡単に診断できますか?」をご覧ください).

下肢閉塞性動脈硬化症は,なぜ深刻な病気ですか?

下肢閉塞性動脈硬化症のために病的な動脈硬化が腹部から脚への動脈に生じると,脚への血流が低下することで,歩行時に脚が痛くなり歩けなくなり,少し休むとまた歩けるようになる症状(間歇性跛行)が出現します.

このような患者さん100人を5年間調査すると,足の傷が治らなくなり足の切断が必要になった方は5人でしたが,30人の方が亡くなっていました.亡くなった方の75%は心筋梗塞,脳卒中が原因でした.また,生存しておられる方の25%が心筋梗塞,脳卒中を発病していました.

すなわち,下肢閉塞性動脈硬化症が生じると,脚が壊疽になって,脚を切らないといけないことも深刻ですが,それ以上に心筋梗塞,脳卒中で命を落とす危険が高くなるということが深刻です.

動脈硬化は下肢へ血液を供給する脚への血管のみに生じるわけではなく,全身の血管に等しく生じます.このため,下肢閉塞性動脈硬化症を認めた場合,同じ動脈硬化症が原因となる心臓を栄養する血管である冠動脈に生じる心筋梗塞や,脳を栄養する脳血管に生じる脳梗塞などのリスクを抱えていると考えなければなりません.冠動脈は冠動脈CT検査や冠動脈造影検査,脳血管は頸動脈エコー検査や脳MRI/MRA検査で動脈硬化の有無を調べることができます.

また,脚への血管に病的動脈硬化が見つかった患者さんは,深刻な病気(心筋梗塞,脳卒中,下肢壊疽)を発病しないように,食事,運動,禁煙といった生活習慣改善や高血圧,脂質異常,糖尿病に対する薬物治療を徹底し,全身の動脈硬化の予防に努めることが重要です.

足の血管に生じる動脈硬化を早くに見つけて,動脈硬化予防の生活習慣改善を行うことで,命に関わる,心筋梗塞,脳卒中の予防が可能になります.

Q3