p.117 抽出テキスト
屈や能動的底屈によって消失する1125).約1/4 の症例が両側性である1109, 1111, 1112).膝窩静脈の捕捉は肥満者やスポーツ選手での報告も散見され,若年者に生じた下腿浮腫では膝窩静脈の捕捉を疑う. 3 診断 PAESにおいては,ドプラ音を足背動脈か後脛骨動脈で聴取しつつ,足関節の他動的背屈および能動的底屈を行うと,音が減弱するか消失する.ただし陽性となるのは全例ではなく,また健常者でもみられることがある.USでは,腹臥位で膝窩動脈の偏位や膝窩静脈との間の異常筋腹の有無を評価する.足関節の他動的背屈および能動的底屈で膝窩動脈が圧迫され,ジェット血流が認められる.Duplex法では,同様の負荷によって狭窄した部位で流速波形の収縮期最大流速が有意に上昇するか,逆に有意に低下する1126–1128).膝窩動脈の拡張や動脈瘤を認めた場合は,壁在血栓の有無と狭窄度を算出する.造影CTでは,膝窩動脈の内側への偏位(図26),あるいは動静脈の間に腓腹筋内側頭または異常筋腹がみられる.進行すると動脈拡張や動脈瘤,限局性閉塞が認められ,その近位側に異常筋腹が認められる.筋腹の起始部を確認して病型を決定する(図25) 1114, 1129, 1130).血管造影では,安静肢位で膝窩動脈の内側への偏位がみられ,足関節の他動的背屈および能動的底屈にて血管が圧迫される.限局性閉塞や狭窄後拡張が認められれば本症を疑う.とくにI型,III型の限局性閉塞例では,閉塞の中枢側と末梢側の膝窩動脈の中心軸にずれが認められる.長期間に及ぶと閉塞範囲が広範になることもある1115, 1127, 1131).膝窩動脈領域の疾患として,膠原病,塞栓症,膝窩動脈瘤,外膜嚢腫を鑑別する.V型では,CTやMRIで膝窩静脈の走行異常や解剖学的異常(腓腹筋の異常など) が認められる.USでは,解剖学異常とともに足関節の他動的背屈による膝窩静脈径の変化を評価できる. 4 治療方針の選択 日本血管外科学会の血管外科手術アニュアルレポート96)によると,2014年にわが国で施行されたPAESに対する外科的治療はわずか28例であり,そのうち24例に血行再建術が施行されていた.本症は若年者に多く,長期的には狭窄後拡張からの塞栓症や限局性閉塞による下肢虚血症状をきたすことから,症状があり本症と診断した場合には,積極的に手術を勧めるとの意見が多く1113–1117),また良好な手術成績が報告されている1109, 1111, 1112).発症から間もない,あるいは無症状の段階であれば基本的には筋腹や線維束の切離ないしは可及的切除のみで良好な結果が得られるが,術前画像検査で狭窄がなくとも内膜変性を生じていることがあり,その場合には術後早期に狭窄をきたす可能性がある1111, 1112).狭窄や限局的閉塞に対して血管内治療(endovascular therapy: EVT)を施行した症例が散見されるが,本症の病因は血管外からの筋腹や線維束による捕捉であるため,きわめて早期に再閉塞をきたすことが多く,原則禁忌である.V型に対しては,不全穿通枝が出現する前に手術することが望ましい1132).踵の高い靴を履くことによって症状はある程度軽減する.弾性ストッキングを併用する. 5 治療 本症では術前の術式決定が困難なことも少なくない.最終的な術式決定には,術中所見および術中血管撮影検査やUSによる膝窩動脈内腔の評価が必要である.閉塞はもとより,内膜肥厚による狭窄や血栓付着を認める場合には,適切な血行再建を行う.通常,膝窩部S字切開による後方アプローチで膝窩動脈,および周囲組織の解剖学的異常を確認して捕捉を解除する. 5.1 腓腹筋内側頭あるいは異常筋腹や繊維束 の切離・ないしは可及的切除 膝窩動脈が開存しており狭窄や狭窄後拡張をきたしてい 左:右膝窩動脈は,やや中央に付着する腓腹筋内側頭の内側を走行右:右膝窩動脈は,圧排による狭窄図26 膝窩動脈捕捉症候群(II 型)の造影CT 検査所見