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p.112 抽出テキスト

に生じる,一連の症状を指す.

1.1 解剖と病因

上肢の神経(腕神経叢)と動静脈(鎖骨下・腋窩動静脈)は,頸部および胸郭から上肢へと,骨・筋肉・靭帯などによって形成される間隙を走行し,1斜角筋間三角,2肋骨鎖骨間隙,3小胸筋背側の3ヵ所で圧迫を受けやすい.とくに1や2など,内側部での障害が多いとされている1062). TOSは,もともと頸肋,第1肋骨形成異常,前および中斜角筋走行異常などの解剖学的変異のある者(これだけでは大部分が無症状)において,交通事故,労働災害,スポーツなどによる外傷をきっかけに発症することが多いといわれている1063).

1.2 病状

TOSは女性に多くみられる.圧迫による障害の主体によって神経性,静脈性,動脈性の3型に分けられ,共通の症状は上肢の痛みである.神経性は全体の90%以上を占め,手のしびれや脱力,後頭部・頸部・肩・腋窩・前胸部の痛みを伴う.静脈性の頻度は約3%とされ,肋骨鎖骨間隙部での鎖骨下静脈の狭窄または閉塞によるうっ血により,患側上肢の腫脹やチアノーゼが生じる.これにはPaget-Schroetter症候群として診断されているものも含まれる1064).本ガイドラインで最も問題となる動脈性TOSはさらに少なく,TOS中の1%以下であり,多くは頸肋か第1肋骨の形成異常を伴っている.鎖骨下動脈狭窄,末梢への動脈塞栓症により上肢に虚血症状(冷感,しびれ, Raynaud現象,労作時痛,手指の壊疽)が生じる1062, 1065).

1.3 診断

鎖骨上の前斜角筋部の圧痛がほとんどの患者で陽性で,上肢を90°外転外旋させると,上肢の痛みが増強したり,橈骨動脈の拍動が減弱したりする(Wright’s test).単純X線検査で,頸肋の存在や鎖骨・第1肋骨の形成異常1066),横突起の肥大,鎖骨・肋骨の仮骨形成などがないかを確認する.骨格異常の約8割は先天的なものと考えられ,残りは外傷性に骨格異常をきたし,胸郭出口症候群の原因となったと考えられる1067).静脈性胸郭出口症候群では,さらに超音波検査(US)や静脈造影を行うと鎖骨下静脈の閉塞を認めたり,上肢の外転外旋位で鎖骨下静脈の狭窄を証明したりすることができる.動脈性胸郭出口症候群のUSや動脈造影では,斜角筋間三角部での狭窄・閉塞や狭窄後拡張の所見がみられる.

造影CT検査が本症に対するgold standardと考えられ,動脈瘤,動脈狭窄,動脈内血栓の存在を認めると共に,周囲の筋骨格構造による圧迫所見を確認することができる1065).また頸椎疾患などを除外するためにも,整形外科医との連携が重要である.

1.4 治療

神経性障害が主体の場合には,消炎鎮痛薬や筋緊張緩和薬の内服と,頸部運動療法,姿勢の矯正,呼吸訓練などを試みる.保存的治療で改善がみられない場合には,周囲からの圧迫に強く関与している第1肋骨切除と前および中斜角筋切除が行われることが多い1068).静脈性障害が主体の場合でも,保存的治療で改善がみられない場合に第1肋骨切除や,静脈狭窄部に対して,PTA(percutaneous transluminal angioplasty)やパッチ血管形成術を併施することを推奨する報告もある1064, 1069, 1070).動脈性障害が主体の場合には,しばしば頸肋がみられるので,前方鎖骨上経路でこれを切除し,同時に斜角筋切除を行って,動脈に対する圧迫を解除する.動脈瘤や塞栓源となる病変部動脈があれば,これを切除する.さらに腋窩-上腕動脈バイパスなどによる上肢末梢への血行再建を行うとともに,末梢に塞栓症がみられる場合には,可能な限り塞栓除去を行う1065, 1066, 1071–1073).

2 鎖骨下動脈閉塞症

表69 鎖骨下動脈閉塞症の管理の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

上肢の血圧差を呈するのみで,無症候性の症例に対しては保存的治療を考慮する1074, 1075). IIa C

● 鎖骨下動脈閉塞症によるsubclavian steal

syndromeは血行再建の適応となるが,subclavian steal phenomenonは無症候性であり,保存的治療の適応である.

ステートメント