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p.111 抽出テキスト

り,血小板数との関係が報告されてきた1055).それとともに1970年代からアスピリンが治療に有効であることは報告されており,それに伴い活性化された血小板のプロスタグランジン代謝により症状を呈すると報告される1056).活性化した血小板により血小板由来増殖因子が産生されたり,血小板凝集が惹起されると,内膜肥厚や指趾動脈等の細動脈の血栓閉塞が引き起こされ,肢端紫藍症に至ったり,指趾壊死を来たしたりする.治療は,低用量アスピリン内服(100 mg/day)に代表される抗血小板療法が有効であり1057),無効な場合には交感神経節切除やブロック等を考慮する.ナトリウムチャンネルの遺伝的な原因で本疾患を呈する場合にはブロッカーであるリドカインが有用であるとの報告もされるが,現時点では臨床応用されていない.肢端紫藍症に至ってしまった場合には,有効な治療法は少なく,まずアスピリンに加え血管拡張作用のある抗血小板薬を使用する.無効な場合には交感神経節切除を考慮するが,その効果に定まった評価はない.

3 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome: CRPS)

従来からカウザルギーと称される外傷後疼痛症候群や反射性交感神経性萎縮症を含んだ症候群であり,前者をCRPS type2,後者をCRPS type1 と大別する.type2 は,神経障害の結果生じるが,その痛みの範囲は必ずしも障害神経の範囲にとどまらない.type1は軽微な外傷後に発生し,単一の末梢神経の分布領域に限局せずに拡がり,明らかに刺激となった出来事と不釣り合いな強い症状を示す.

その病因として,外傷に対する局所の過大な炎症,交感神経系の異常調節,虚血再灌流障害説,中枢神経の鋭敏化説,神経外傷に由来,自己免疫障害,遺伝的要因や精神的要因などが提唱されているが,いまだ上記のいずれか単独ですべてを解明することはできない.

診断はBudapest criteria 1058)によってなされるが,画像所見や検査結果ではなく,徴候と症状によってなされ,疼痛の専門医による詳細な診察に基づく診断が必要である.

治療の目的は患肢の除痛と機能維持になるが,本疾患は多元的な症候群であり,治療は患者教育から薬物療法,理学療法から心理的なサポートまで多岐にわたり,絶対的な治療法はない.本疾患の進行は多岐にわたり,治療によって改善するエビデンスはないが,治療が遅れて慢性期にいたらないように治療を進めるべきである.近年メタ解析で,症状発症12ヵ月以内であれば薬物療法としてまずビスホスホネートを用い,次いでステロイドを用いることがよいとされる1059).また12ヵ月以上症状が継続している場合には,カルシトニン,次いでビスホスホネートと血管拡張薬がよいと報告されている1059).薬物療法が有効でない場合には,交感神経ブロックや外科的な交換神経節切除などを考慮する1060).またCRPSは外傷後の経過について不安を感じていることも指摘されており,精神心理学的な治療も必要とされ,理学療法による機能障害への治療,精神心理学的な治療,疼痛に対する治療を並行して行うことが国際的にも推奨されている1061)が,いまだ十分なエビデンスは得られていない.

● 上肢の痛み,しびれや脱力に加えて,後頭部・頸

部・肩・腋窩・前胸部などの痛みを伴う場合には胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome: TOS)を念頭に,専門医への受診を勧める.

ステートメント1 胸郭出口症候群(TOS)

胸郭の出口の狭い部分で神経や血管が圧迫されるため

第16章 胸郭出口症候群・鎖骨下動脈閉塞症