p.11 抽出テキスト
表1 推奨クラス分類 クラスI手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがある,または見解が広く一致している.クラスIIaエビデンス・見解から, 有効・有用である可能性が高い.クラスIIbエビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない. クラスIII No benefit手技・治療が有効・有用でないとのエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している. クラスIII Harm手技・治療が,有害であるとのエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している. 表2 エビデンスレベル レベルA複数の無作為介入臨床試験またはメタ解析で実証されたもの.レベルB単一の無作為介入臨床試験または大規模な無作為介入でない大規模な臨床試験で実証されたもの. レベルC無作為介入でない小規模な臨床試験,後ろ向き研究,登録研究などの結果,または専門家の間での合意に基づくもの. 治療薬・再生医療やその他の補助療法など,および,患者背景でますます重要度を増している腎機能障害などについて,ページ数を割く,あるいは,項目を新設するなどして,詳述につとめた. 第四として,practical question(PQ)として,12個の臨床的話題をとりあげ,実臨床でいまだ明確な方針が示されていない臨床的課題について解説した. ガイドラインを作成するうえで問題となったのは,この領域におけるエビデンスレベルの高いデータの少なさである.対象群には緊急治療を要する患者や生命予後が不良の患者が多く含まれており,RCTの対象となりにくいほか,背景となっている生活習慣病の種類や重症度の違い,保有する全身リスクの違いといった患者側の多様性や,専門医の少なさ,治療環境の地域差,病院間格差などが,一様に高い推奨度で治療を推奨できない要因となっている.さらに,PADは前述のように非常に範囲の広い領域であり,共通の文献検索式によるシステマティックレビューが難しい対象であることから,Minds形式は採用しなかった.本ガイドラインでは,日本循環器学会が推奨する表1,2の基準に基づき,班員と協力員が14領域に分かれてグループごとに文献検索を行い,会議を繰り返し,複数回のメール会議と4度の班員・協力員全体会議を経て,全員のコンセンサスを形成した.対象とした文献は,原則2021年3月末日までに発表されたものとしたが,その後に発表された本 ガイドラインに不可欠と判断された文献については,班員のコンセンサスを得て採用した. 本ガイドラインは,前述のように多くの関連学会の支援のもと,多くの診療科の医師が一堂に会し,PADの定義,検査,診断,治療方針の決定,保存的治療,侵襲的治療,周術期管理,創傷管理,リハビリテーション,予防,サーベイランスなどを包括したものとして作成した.わが国におけるPAD診療の良きガイドとなることを期待している.一方,上述のように患者の多様性は著しく,本ガイドラインで記述した治療方針では規定できない病状がある場合や,本ガイドラインに記載のない別の治療方法や新しい治療法が各施設の倫理委員会の承認の下に実施されることもありうる.実際の診療は,あくまで施設や医師ごとの判断に委ねられるものとする. 本ガイドラインが,わが国におけるPAD診療の質の向上と患者の啓発に繋がることを,本ガイドライン改訂にあたった関係者を代表して,心から望むものである. 用語について 1)CLIとCLTI LEADの背景にある生活習慣病,特に糖尿病や腎不全の増加といった疾病構造の変化から,本ガイドラインでは,「重症下肢虚血(critical limb ischemia: CLI)」という用語よりも近年の実臨床を反映した「包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia: CLTI)」という用語を使うことを推奨している.しかし,これまで蓄積されたエビデンスの多くが,CLI患者集団を対象に構築されていることから,当該データが構築された背景によってはCLIという用語を使わざるを得ない場面も少なくない.CLIとCLTIが混在する文章が存在することで,読者には難解になる可能性を承知しつつも,正確な記述のため,CLIという用語をあえて残すこととした. 2)監督下運動療法 従来,監視下運動療法という用語が一般に使用されてきたが,患者が受ける印象として,「監視」よりも「監督」が適切であると考えられることから,班会議にて,新たに「監督下運動療法」という用語を本ガイドラインから提案することとした. 3)略語については,p.8~9を参照されたい.