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p.106 抽出テキスト

血管が罹患する疾患については,血管炎症候群の診療ガイドライン922)を参照いただきたい.

原発性血管炎は,1994年のChapel Hill Consensus Conference(CHCC)で国際的な分類法が提唱され,ANCA (antineutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎の概念が

取り入れられた.2013年には改訂版(CHCC2012)

907)が発表

され,分類・病名の変更,疾患定義の修正が行われた.

CHCC2012以後,わが国でもこれに則ったガイドラインが関連学会から発行されている922, 1034).診断と治療に関し各疾患で多岐にわたるので,個々の疾患に関して適宜参照する必要がある.

1 罹患血管のサイズと血管炎分類

近年では,大型血管炎の診断や活動性判定にFDG-PETが導入されるなど画像診断の進歩があり,ANCA測定試薬の精度向上がみられ,リツキシマブなどの生物学的製剤が適用されるなど血管炎の研究・診療の進歩には目覚ましいものがある.

血管炎の症状は,炎症による全身症状と臓器の虚血や出血による局所症状に分けられる.罹患血管サイズと罹患臓器・動脈別の症状を(表66)

1035)に示す.すべての疾患

において内科的治療が基本である.外科的対応に関しては,小型血管の障害では壊死部の小切断を要することがある.中型~大型血管の障害では,血管内治療(EVT)や末梢動脈へのバイパス術などが適応となる症例もある.疾患や病態が多彩であるため,手術に関する一定の推奨事項はなく,個々の症例に応じて適応を検討することになる.

2.抗リン脂質抗体症候群( anti-phospholipid syndrome:

APS)

APSは全身性エリテマトーデス(SLE)患者に最も多くみられる.SLE患者の約40%で抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies: aPL)が陽性で,追跡中に半数程度にAPSを発症するとされる.習慣性流産の原因となるが,静脈血栓のみならず動脈・静脈いずれにも血栓を生じ再発が極めて多い.動脈血栓症の90%以上が脳血管障害で,動脈硬化の危険因子のない若年性脳血管障害の最大の原因であり,同様に若年者の虚血性心疾患の原因となる. 2.1 症状

身体のあらゆる部位の動静脈に血栓が生じるが,多くは下肢を中心とした静脈血栓症であり,再発が多い.しばしば肺塞栓症を合併し,血栓塞栓の繰り返しから肺高血圧となる.肝静脈血栓症によるBudd-Chiari症候群,腎静脈血栓症,副腎静脈血栓症による副腎機能低下,網膜中心静脈血栓症による視力障害が生じる.

2.2 治療

動・静脈血栓症の急性期には通常の血栓症の治療に準じて血栓溶解療法,抗凝固療法を行い,慢性期には血栓再発防止のため経口抗凝固療法と少量のアスピリンの投与を行う.

2.3 劇症型APS

きわめて急激な経過をとり致死率の高い激症型抗リン脂質抗体症候群(catastrophic APS).重症感染症や外科的侵襲,抗凝固治療の中止などを契機に発症し多発性の微小血栓症により多臓器不全となり約半数が死亡する.播種性血管内凝固症候群(DIC)や血栓性血小板減少性紫斑病

表66 小型血管炎と大・中型血管炎の臓器症状

I. 小型血管炎による臓器症状皮膚:網状皮斑,皮下結節,紫斑,皮膚潰瘍,肢端壊死末梢神経: 多発性単神経炎筋肉:筋痛関節:関節痛腎臓:壊死性(半月体形成性)糸球体腎炎消化管:消化管潰瘍,消化管出血心臓:心筋炎,不整脈肺:肺胞出血漿膜:心膜炎,胸膜炎眼:網膜出血,強膜炎

II. 大・中型血管炎による臓器症状総頚動脈:めまい,頭痛,失神発作顎動脈:咬筋跛行眼動脈:失明鎖骨下動脈: 上肢の痺れ,冷感,易疲労性,上肢血圧左右差,脈なし腎動脈:高血圧,腎機能障害腸間膜動脈: 虚血性腸炎冠動脈:狭心症,心筋梗塞肺動脈:咳,血痰,呼吸困難,肺梗塞(日本循環器学会. 2008 1035)より)