p.103 抽出テキスト
増加傾向がみられ,女性喫煙者の増加との関連が示唆されている1000–1002).患者分布は,タバコが多飲されるアジア,中近東,地中海地域といった亜熱帯,温帯地方に多い. 2.1 発生機序 原因は明らかでない.喫煙は発症と病状進行に強く関与する985–990, 1003).他の要因としては感染,栄養障害,HLA (human leukocyte antigen)に関連した自己免疫,血管内皮細胞の障害や1004–1010),慢性歯周感染症の関与も指摘されている1011–1013). 2.2 病理組織学的所見 内弾性板は構造が保たれる,炎症性細胞浸潤はおもに内腔の血栓と内膜に認められる,中膜の線維化を欠く外膜の線維化,外弾性板直下の浮腫,vasa vasorumの内皮細胞の肥厚,再疎通血管の内皮細胞の玉ねぎ様重層化などが特徴とされる1014, 1015). 3 臨床症状(表63) 動脈病変は通常,下腿以遠や前腕以遠の動脈に始まり,中枢側へと進展する.罹患肢は上肢よりも下肢が多い991, 1000, 1016, 1017).症状の多くは慢性動脈閉塞症と共通だが,本疾患に比較的特徴的なのは,上肢の罹患,足底筋の間歇性跛行,指趾の虚血性紅潮(Buerger’s color),遊走性/ 逍遥性静脈炎である.上肢の罹患は閉塞性動脈硬化症との鑑別に役立つ一方で,膠原病,および心原性や胸郭出口症候群による塞栓症との鑑別を要する.下腿動脈に閉塞の主座があるために生じる足底筋跛行は,膠原病患者でも出現することがある.上肢の労作時痛も同様に,しばしば手部から生じる.虚血性紅潮は四肢を下垂することなく体幹と水平な状態でもみられ,肢端静脈系の血液うっ滞を示唆する.安静時痛は激しく,睡眠を妨害することも多い.潰瘍・壊死病変は爪周囲に生じやすい.些細な外傷などが誘因で生じ,しばしば急速に進行する.潰瘍は初診時の患者の半数近くに見られる1000).遊走性静脈炎は一部の患者で認められ,疼痛と硬結を伴う線状発赤を呈し,すでに陳旧化し色素沈着となっている場合もある.また,長い罹患期間中に出現しうる1000, 1002, 1018). 4 身体診察と検査(表63,64) 特異的な診断法はなく,一般的な慢性動脈閉塞症に対する身体診察や検査を行う.ただし,上腕や足関節の血圧では手指や足趾の血流低下を十分に評価できないため,指趾 表63 バージャー病の臨床症状 A. 自覚症状1 四肢の冷感,しびれ感,色調変化(発赤,レイノー現象,チア ノーゼ,など) 2 間歇性跛行3 指趾の安静時疼痛4 指趾の潰瘍,壊死5 遊走性/逍遥性静脈炎(皮下静脈の発赤,硬結,疼痛など)お よびその既往B. 身体所見1 視診:四肢末端部の筋萎縮,爪の発育不良,体毛の減少,皮 膚の色調変化,色素沈着2 聴診:血管雑音3 触診:四肢末端部の皮膚温低下,末梢動脈拍動の減弱・消失4 負荷テスト:アレンテスト陰性(異常),四肢の挙上下垂テス ト陽性表64 バージャー病に対する検査方法 A. 動脈機能検査 アレンテスト,下肢挙上下垂テスト血流音のドプラ聴診四肢:血圧,足関節上腕血圧比(ABI)指趾:血圧,足趾上腕血圧比(TBI),脈波図皮膚血流:皮膚灌流圧(SPP),経皮酸素分圧(tcPO2)負荷や治療薬への反応性:サーモグラフィー,レーザードプラ血流画像神経性間歇性跛行との鑑別,治療効果の評価:運動負荷ABI,運動負荷近赤外分光法(保険適用外) B. 画像診断 デュプレックス超音波検査(血流波形,動脈硬化の有無)血管造影:CT血管造影(CTA),磁気共鳴血管造影(MRA),デジタルサブトラクション血管造影(DSA) *下肢では膝関節よりも末梢側に,上肢では肘関節よりも末梢側に病変がある.以下の像が特徴的.・多発的分節的病変・閉塞は途絶状ないし先細り状・動脈壁は平滑・二次血栓の延長による慢性閉塞像・コルクの栓抜き状・樹根状・橋状の側副血行路の発達*動脈硬化性の閉塞(動脈壁の不整,虫食い像,石灰化など)と 鑑別する.