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表61 ベーチェット病の動脈病変に対する管理の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル ベーチェット病に合併した動脈閉塞性病変に対しては,抗血小板薬やステロイド・免疫抑制剤による保存的加療を考慮する965-968). IIa Cベーチェット病に合併した動脈閉塞性病変に対しては,術後合併症のリスクを踏まえた上で,血行再建術を考慮してもよい969-972). IIb C 1 疫学 ベーチェット病は,口腔粘膜のアフタ性潰瘍,外陰部潰瘍,眼症状,皮膚症状を主症状とする慢性再発性の炎症性疾患である.本症は主に日本や韓国を中心とした東アジア,およびトルコやサウジアラビアなどの中近東に多く見られる.わが国では特定疾患治療研究事業の対象となっており,北海道,東北地方に多く,本症の2018年度末時点の特定疾患医療受給者は約15,000人である.20~40歳で発症することが多く,30代前半にピークを示す.男女比はほぼ1:1であるが,男性のほうが重症化しやすいとされる.病理学的所見としては,全身の動静脈,毛細血管を侵す血管炎が主体である973, 974).遺伝的な背景に加えて,細菌・ウィルス感染や他の環境因子によって自己免疫が活性化されることが主な要因と考えられている974). ● ベーチェット病に合併した動脈閉塞性病変は,保 存的加療で経過観察可能なことが多く,血管内治療(endovascular therapy: EVT)や外科的血行再建術は再閉塞・仮性動脈瘤形成などの術後合併症のリスクが高いため適応を慎重に判断する. ステートメント第11章 ベーチェット病 (Behçetʼs disease) ベーチェット病の動脈病変は,本症患者の1~12%で出現すると報告されており,圧倒的に男性に多い.性差が見られる原因は不明であるが,ホルモンあるいは遺伝的な要因が考えられている.深部静脈血栓症や皮下の血栓性静脈炎などの静脈病変を同時に合併する症例も多い965, 966, 969, 975–979).ベーチェット病発症から概ね4~10年程度で動脈病変が現れるが,動脈症状がベーチェット病の初発症状であるケースもある965, 966, 969, 977–982). 2 動脈病変 動脈病変は,動脈閉塞と動脈瘤に分類される.免疫学的機序による血管内皮細胞障害に加え,凝固線溶系の異常が伴うことによって動脈閉塞性病変が形成されると考えられている983).動脈病変合併患者の予後は,5年生存率90%,20年生存率73%と,動脈病変非合併患者に比べ不良である965). 動脈瘤は胸部・腹部大動脈に多く見られ,動脈閉塞は上下肢の動脈,腸間膜動脈,冠動脈など中小動脈に発症することが多い.動脈瘤は破裂予防のため外科的治療が必要になることが多いが,動脈閉塞は保存的治療で経過観察可能な場合が多い. 3 動脈閉塞性病変に対する治療 ベーチェット病の動脈閉塞性病変に対する治療法については,症例が少ないため大規模な比較試験が困難であり,いまだ確立したものはない.保存的治療としては,ステロイドやシクロフォスファミド,アザチオプリンなどの免疫抑制剤が有効であるとの報告がある965–967).また,ベーチェット病患者では血液中の活性化血小板が健常者に比べ多いため,抗血小板薬の有効性が示唆されている968).重度の虚血症状が出現することはまれであるが,その場合は血行再建が必要になる.