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p.99 抽出テキスト

およびデリバリーシステムの改良によりこの適応は十分変化しうることを考慮する必要がある. a.上行大動脈瘤

上行大動脈瘤に対する適応は,わが国および諸外国において,2019年 10月時点で認められておらず,現状のデバイスでは血管内治療は推奨されない.しかしながら上行大動脈の限局性病変に対するステントグラフトの報告は散見されており,手術不能例に対する治療手段としての潜在的可能性が論じられている780, 781).また,A型大動脈解離に対するステントグラフトの開発が進んでおり,米国ではA型大動脈解離を対象としたearly feasibility studyが2018年に開始されていることから,今後は上行大動脈病変に対する血管内治療の適応が大きく変化する可能性がある.

また,上行大動脈に限局せず弓部に至る広範囲の上行弓部大動脈瘤(A型大動脈解離を含む)に対しては,上行から弓部大動脈を人工血管置換し,末梢側にステントグラフトを追加する術式(オープンステントグラフト[frozen elephant trunk technique]あるいはelephant trunk + TEVAR) 782-748)が可能であるが,広範囲上行弓部大動脈瘤に対する通常手術のわが国の成績は海外と比較して良好であるので,各施設で十分に検討し,術式を選択することが望ましい.

b. 弓部大動脈瘤

瘤径は,通常外科手術における適応を遵守し,55 mm以上を適応としている.ただし,今後の流体力学的検討など,新しい方法を用いたリスク解析をさらに進め,その手術適応を検討する必要があると考えられる.

大動脈弓部疾患に対するステントグラフトを用いた血管内治療は,弓部分枝バイパス(debranching)を併用するdebranching TEVARを主として発展してきた.Debranching手術(頚部分枝バイパス手術)は,ステントグラフト留置に必要な中枢留置部(proximal landing zone)を得る際に,被覆される弓部分枝の血流を確保するために行われる785, 786). Debranchingの術式は中枢留置予定部位に応じて異なり,上行大動脈(zone 0)への中枢留置を行う際には上行大動脈からのdebranching手術(開胸debranching)が一般的に行われ,zone 1,zone 2への中枢留置予定症例においては開胸を伴わないdebranching手術(transpositionもしくはbypass)が選択される.Debranching手術においては,上行大動脈もしくは弓部分枝の全遮断/部分遮断を要するため,術前造影CTによる塞栓リスクの評価ならびに脳血管画像による血流遮断リスクが評価されるのが望ましい.

表78 ステントグラフト治療の解剖学的適応の推奨とエビデンスレベル

大動脈瘤の部位外科手術のリスク,瘤の大きさ・部位推奨クラスエビデンス

レベル

55 mm以下の胸部大動脈瘤に対し,ステントグラフト治療を行うべきではない. III Harm C上行大動脈瘤に対し,ステントグラフト治療を行うべきではない. III Harm C

弓部大動脈瘤に対するdebranching TEVAR高リスク例,inoperativeに対して考慮する. IIa B

低リスク例に対して考慮してもよい. IIb C

下行大動脈瘤に対するステントグラフト治療高リスク例,inoperativeに対して行う. I B

低リスク例に対して考慮する. IIa C

胸腹部大動脈瘤に対するhybrid TEVAR高リスク例,inoperativeに対して考慮する. IIa B

低リスク例に対して行うべきではない. III Harm C

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療最大短径(男性55 mm以上,女性50 mm以上)に対して行う. I A

最大短径(40 mm以上,50 mm未満)に対して考慮してもよい. IIb B juxta,supra AAAに行して行うべきではない. III Harm C

すべての症例は,TEVAR,EVARの解剖学的適応内であること. juxta: 傍腎,supra: 副腎,AAA: 腹部大動脈瘤,TEVAR: 胸部大動脈ステントグラフト内挿術,EVAR: 腹部大動脈ステントグラフト内挿術