p.96 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン (合計欠損孔の89%),19症例は多発性であった.成功を1度以上の逆流の減少と定義した場合,77%の成功率であった.30日以内の合併症は8.7%に生じた(突然死・原因不明死1.7%,脳卒中2.6%,緊急外科手術0.9%,出血5.2%). 2症例にてデバイスの脱落・塞栓を生じたが,すべてカテーテル的に回収可能であった.手技による死亡はなかった749). 2016年の報告では,259例の患者における308のPVLに対して経皮的閉鎖を行い(僧帽弁周囲44%,大動脈弁周囲48%,両方2%,TAVI後5%,肺動脈弁周囲0.4%),デバイス留置成功が91%であったが,院内死亡は2.9%にみられた.臨床的には術前の重症~中等症の逆流が95%にみられたが,術後には25%に減少していた750).2020年の欧州からの多施設国際共同研究の報告751)では,Occlutech PLDデバイスを用いて治療が行われ,136例が登録された(僧帽弁周囲67.6%,大動脈弁周囲32.4%).NYHA心機能分類クラスIII/IVの心不全患者は,治療前77.3%にみられたが,治療後16.9%まで減少した.溶血性貧血のための輸血率は,僧帽弁周囲へのPVL治療で36.8%から5.9%に減少し,大動脈弁周囲の治療では8.3%から0%と改善した. 6ヵ月間のフォローアップにおいて全死亡は7.4%であった.合併症は,デバイスの弁尖との干渉(0.7%),経皮的に回収したデバイス塞栓(0.7%),遅発性デバイス塞栓(0.7%),再発性溶血性貧血(2.2%),新規発症溶血性貧血(0.7%),外科的人工弁手術(2.2%),再経皮的PVL閉鎖(0.7%)があげられた. わが国では,2015年に最初の経皮的PVL閉鎖術の報告752)があり,その後少数例での報告が続き,欧州で承認されているOcclutech PLDデバイスを用いた前向き多施設臨床試験であるtRanscathEter cloSurE of pAravalvular Leaks (RESEAL)が行われた.本試験では29症例が登録され(僧帽弁周囲逆流26例,大動脈弁周囲逆流3例),グレード1以上の逆流改善をエンドポイントとした手技成功は, site解析で93.1%,core-lab解析で65.5%であった.安全性1次エンドポイントである30日および院内死亡は3.4%であった(unpublished data). 術前の経胸壁心エコー,CT,術中の3D経食道心エコー,透視画像は,PVLの位置,大きさ,形状を同定する鍵であり,これらの画像診断の果たす役割は非常に大きい. 僧帽弁周囲の欠損孔については,経大腿静脈での順行性経中隔アプローチにて治療が可能である(図20a).代替アプローチとしては,経大腿動脈での逆行性経大動脈弁アプローチ(図20b)や経心尖部アプローチ(図20c)があ 4.5.2 経皮的閉鎖術の実際げられる.欠損孔が楕円形または半月型の場合は,大きな デバイス1つを留置するよりも,複数のより小さいデバイスの同時・連続展開のほうが成功率が高く,人工弁とのコンタクトが最小限となり,よりよい結果と安全性が担保される.傍大動脈弁欠損孔では,経大腿もしくは上腕動脈の逆行性アプローチにてデバイスで閉じることが可能であるが(図20d),慎重な解剖学的評価と治療計画の立案が必要である.経皮的PVL閉鎖術は開心術後のみならず, TAVI後においても適応となる. 2017年に発表された欧州の弁膜症ガイドラインでは,外科的高リスク患者におけるPVLについては,ハートチームにて議論し経皮的閉鎖を考慮してもよい(クラスIIb)と記載されている581).また,同年にアップデートされた米国の弁膜症ガイドラインでは,経皮的PVL閉鎖術は難治性溶血またはNYHA心機能分類クラスIII/IVの心不全患者において,手術リスクが高い場合はPVL閉鎖の専門家がいる施設で行い,カテーテル治療に適した解剖学的特徴をもっている場合にクラスIIaで適応となっている753). 三尖弁は僧帽弁と比較して,coaptation zoneの幅が狭い.さらに右室圧が低く,僧帽弁ほどtightな閉鎖を要しないことから,軽度の三尖弁閉鎖不全は健常者にも高率に認められる.三尖弁閉鎖不全の病態は,リウマチ熱や感染性心内膜炎,外傷,カルチノイド,Marfan症候群,三尖弁逸脱,Ebstein病など,三尖弁の解剖が障害される一次性と,左心不全や肺高血圧に続発する右室の拡張や右心不全,さらには心房細動による右房拡大などが原因で発生する二次性(機能性)に分類される.頻度としては,二次性が主である754). 近年,未治療の三尖弁閉鎖不全の予後が不良であるとの報告が相次いでいる755-757).これを受けて,三尖弁閉鎖不全に対する外科的早期介入がガイドラインでも強調されるようになった. 三尖弁閉鎖不全に対する経カテーテル治療は,有症候性の手術高リスク症例に対する外科手術の代替治療として期待されるものの,現時点で欧米の弁膜症治療ガイドラインにおいても推奨度の記載は存在しない. 経カテーテル三尖弁閉鎖不全症の治療オプションとしては,経カテーテル三尖弁置換術,経カテーテル三尖弁輪形成術,経カテーテル三尖弁尖修復術などがあげられる. 経カテーテル三尖弁置換術は,既存の弁輪リングや生体 4.6 三尖弁閉鎖不全 4.6.1 三尖弁閉鎖不全に対するカテーテル治療