p.95 抽出テキスト
737).The society of thoracic surgeons (STS)データベースからは手術死亡率は全体で42.9%であった.心筋梗塞発症後7日以内の手術死亡率は54.1%で,7日以降では18.4%であった.とくに発症後6時間以内に手術施行した症例では,死亡に関するオッズ比は6.18ともっとも高かった738).心原性ショックの患者は死亡率が高く,SHOCK registryでは87%であった739).しかし,手術患者の死亡率は内科的治療を行った患者に比べれば有意に低く,GUSTO-Iによれば,外科的治療群と内科的治療群の死亡率はそれぞれ47%,94%であった. 米国のレジストリでは,18例(5例は心筋梗塞発症後6日以内の急性期,残りの症例は梗塞の診断後14~95日に実施)にAmplatzer VSD occluderが用いられ,88.9%でデバイス留置に成功し,30日死亡率は28%であった.2例では残存短絡のために2回目の治療を要した.残存短絡は,軽微なものが6例,中等度のものが2例であった740).欧州の単一施設報告では,ASOあるいはVSD occluderを用いて29例治療し,初期成功率は86%,30日死亡率は35%であった.30日死亡率が高い理由は,超急性期治療(中央値1日)によるとされている.発症早期にデバイス留置術を行い,短絡を軽減させ壊死心筋が組織学的に強固になる発症3~4週後に外科的閉鎖術を行うと,治療成績が向上する可能性があるとの報告がある741). 51例の心室中隔穿孔症例に外科手術またはAmplatzer Post Infarct Muscular VSD Occluderを用いて閉鎖を行ったカナダからの単一施設報告では,治療までは平均4日間で,術後早期死亡率は33%であった.12例が経皮的治療を受け,予後不良因子である後壁VSD群の30日死亡率は42%であった742).同報告でも,中程度までの心室中隔穿孔症例は経皮的治療が可能であり,大きな心室中隔穿孔症例であってもデバイスを留置することによって心不全を改善させ,心筋の線維化を待ち患者を安定させ,待機的外科手術をより高い成功率で施行可能であるとしている.遺残短絡は溶血を起こすこともあるが,デバイスの血栓化,内皮化によって数ヵ月後に遺残短絡が自然消失したとの報告がある743).わが国では,2012年に発症28日目以降にASOを用いて治療し,生存退院したという報告がある744).ASO認可施設において認定術者による心筋梗塞後心室中隔穿孔閉鎖術が可能であることを証明している.閉鎖デバイスは複数あるが,治療成績の向上のためには,最適なデザインとサイズの器具を用いることが重要である.ADOなども症例によっては有効である745). 4.4.3 カテーテルによる経皮的心室中隔穿孔閉鎖術 4.5 弁留置後弁周囲逆流(表77)弁留置後弁周囲逆流(PVL)は,人工弁植込み術後の5 ~17%に生じるといわれている746).無症候性が多いが,溶血,心不全または双方を呈することがある.有症候例では外科手術が推奨されてきたが,再手術は基礎にある組織脆弱性,炎症,または石灰化のためにかならずしも成功するとは限らない.再手術に関する死亡率も高く,6~42%と報告されている.周術期の合併症が多く,再発率も20 ~37%と高率で,10年生存率は63%と報告されている747).こうした高リスク症例に対して経皮的PVL閉鎖術が行われるようになった. 1992年にPVLに対する経皮的閉鎖術が初めて報告された748).同報告では,7例全例でデバイス留置に成功している.1例のみ急性期合併症(溶血,乏尿,デバイス塞栓)を生じ,デバイスをより大きいサイズに交換するための再治療かつ肺動脈に飛んだデバイスをカテーテル的に回収する処置が必要であった. 2011年の報告では,115名の患者の141欠損孔に対し,適応外使用にてAmplatzer Septal Occluder,Duct Occluder,Muscular Ventricular Septal Defect OccluderおよびVascular Plug IIが用いられた.適応は溶血性貧血または心不全を有する開心術の高リスクの患者(STSスコアは平均6.9)であった.デバイスは125欠損孔に植込まれ 4.5.1 経皮的閉鎖術の歴史 表77 PVL に対する経皮的PVL 閉鎖術の推奨とエビデン スレベル 推奨クラスエビデンス レベル 経胸壁心エコー図にてPVLを認める症例では,定期的に心エコーを繰り返し, PVLの増悪の有無の評価を行う. I C有症候性のPVLを認める症例に経食道心エコー図を行い,PVLの位置,広がり,形態の確認を行う. I C有症候性のPVLを認める症例に対し,外科的再手術により閉鎖術を行う. I C難治性溶血または重症心不全といった症候性PVLで,欠損孔の形態が現在使用可能なデバイス留置に適している症例であり,かつ外科的修復術が高リスクである場合,経皮的PVL閉鎖術を熟知した術者のいる施設においてハートチームアプローチにて同治療を考慮する. IIa B無症候性のPVLに対し,外科的もしくは経皮的PVL閉鎖術を行うべきではない. III Harm C