p.94 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン ・MitraClip ®留置予定部位の石灰化.・MitraClip ®留置予定部位の顕著な裂隙.・2ヵ所以上で高度なMRを認め,MitraClip ®治療による病態の改善が望めない.・MitraClip ®治療により弁尖の動きが著しく制限され,僧帽弁狭窄をきたす可能性が高い.・後尖<7 mm・僧帽弁口面積<3.0 cm 2 ・僧帽弁の活動性感染性心内膜炎など僧帽弁に活動性 を有する変性病変が存在する.・僧帽弁位人工弁置換術後.・心臓内腫瘍,心臓内血栓,心臓内疣腫(vegetation)の存在.・食道疾患などにより経食道心エコーの実施が不可能.・MitraClip ®システムの素材,施術に使用する薬剤に対し,禁忌あるいは過敏症を有することが既知.・非心臓性併発疾患があり,余命が1年未満と推定される. e. 施設実施基準,実施医基準 チームとして行う治療法であり,特定の医師のみで施行すべきでない.カテーテル治療,心エコー検査,心不全診療,心臓血管外科の各領域の専門医を含むチーム構成が可能であり,MitraClip ®システムを用いた施術を安全に実施することが可能と判断される設備と実績を有する施設であることが求められる. 本件についてはすでに策定され関連学会に配布されている.前述のように,今後,継続的に当該基準の見直しが行われる予定であり,本項では割愛する. 日本循環器学会の「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)」において心筋梗塞後心室中隔穿孔に対する治療方針が解説されている730).しかし,明確なエビデンスは海外・国内を問わず存在しない.カテーテルによる経皮的心室中隔穿孔閉鎖術は未承認の治療法である.本項では,有効性・有用性についての報告があるか,専門家の見解が一致しているものについて記載した. 心筋梗塞後心室中隔穿孔はいったん発症すると予後不良であり,緊急の外科的治療が望まれる730, 731).しかし実臨床では,組織学的脆弱性から発症直後には緊急手術が困難であると判断され,理論的には早急な外科手術が必要な場合でも,壊死組織と周囲組織の瘢痕化や脆弱化が改 4.4 心筋梗塞後心室中隔穿孔(表76) 4.4.1 適応善するまで,大動脈内バルーンポンプなど種々の補助循環 装置を挿入し待機することもある732, 733).また状態不良でショックの患者も多く,開心術は不可能と判断される場合も多い.薬物治療のみでは予後不良であり,ほとんどの症例が死亡する.本治療はこのような症例に対して,早期に穿孔部を閉鎖する方法である. 心室中隔穿孔の発生率は再灌流療法の発達とともに減少し,急性心筋梗塞(ST上昇型)患者の0.2%程度になってきている734).以前は,発症から穿孔までの期間は3~5日とされていたが,GUSTO-IおよびSHOCK trial registryによれば,血栓溶解療法を受けている患者では心筋梗塞後最初の24時間がもっとも穿孔の可能性が高いとされている734, 735).左心機能が良好で血行動態が落ち着いている場合でも,穿孔部位の拡大から急激な循環動態の破綻をきたすことがあるため736),実際には血行動態が落ち着いていても緊急手術が施行されているとは言いがたい.最近の研究では,血行動態が落ち着いていれば外科手術を3~4週間待つべきであるという報告が相次いでいる737).外科手術では,穿孔部のパッチ閉鎖術が行われ,虚血が解除されていなければ冠動脈バイパス術(CABG)が同時に施行される.心筋梗塞発症3日目~4週間以内の早期手術の術後院内死亡率は52.4%で,発症1週間目以降~4週間目以降に施行された手術では術後院内死亡率は7.6%であった 4.4.2 外科的治療と内科的治療 表76 心筋梗塞後心室中隔穿孔の管理に関する推奨とエビ デンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心筋梗塞後心室中隔穿孔を併発した際には,血行動態の如何にかかわらずICUに搬送し,侵襲的モニタリングおよびIABP挿入を行う. I B心室中隔穿孔を合併した患者において,血行動態が維持できない場合には早急な外科的修復を行う. I B心室中隔穿孔の修復と同時に冠動脈バイパス術を行う. I B血行動態が維持できる場合には1週間以上あけてからの外科的修復術を考慮する. IIa C・わが国で承認されたデバイスが存在しないため,本ガイドラインではカテーテ ルによる心室中隔穿孔閉鎖術の推奨レベルを呈示しない.・補助循環装置にて血行動態が維持できる場合には,発症後1 週間以上あけてか らの治療が有効である可能性がある.・わが国でカテーテルによる心室中隔穿孔閉鎖術が施行される場合には,経皮的 心腔内短絡閉鎖デバイスを扱う施設および術者に限って行われるべきである.