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p.89 抽出テキスト

に連合弁膜症を治療することが必要になる.

僧帽弁閉鎖不全(MR)は,心臓弁膜症のうちもっとも頻繁に遭遇し,弁尖や弁輪,腱索などの弁構造異常,左室・左房機能障害などによって僧帽弁の閉鎖が不完全となり,血流が左室から左房に逆流することによって生じる疾患である.逆流により,左房圧の上昇と容量負荷・拡大が起こり,さらに逆流量の増加例では左室容量の増大が起こる.腱索断裂や乳頭筋断裂などで起こる急性MRでは,左房と左室は容量負荷を代償できず,急激な肺水腫やショックを呈し,緊急の外科的治療を要することがある.一方,慢性MRの進行は緩徐であり,容量負荷は左房および左室の拡大により代償され,左室駆出率(LVEF)も正常ないし亢進する.しかし,経過とともに代償機能は破綻し,左室拡大の進行,左室心筋の伸展から収縮力低下をきたす.この結果,肺うっ血と心拍出量低下が生じ,顕性左心不全となる.高度閉鎖不全例は約90%が10年間に外科手術適応となるか死亡するとされ,同時に突然死のリスクも高い.

僧帽弁複合体の構造に異常がなくても,拡張型心筋症や虚血性心筋症ではびまん性あるいは局所左室機能障害により,また慢性心房細動に伴う弁輪拡大により二次的にMRとなる.この病態は機能性MRとよばれる.左室拡大により乳頭筋と僧帽弁輪の距離が延長し,収縮期に僧帽弁尖が弁輪部まで戻れず(tethering),間隙から左房への逆流を生じる.上記左室拡大例における中等度以上の逆流は患者の予後を左右する.

一般に外科手術が原則である.外科手術の治療指針は,日本循環器学会他,関連学会合同研究班による「2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン」により示されている3).手術に関する適否は,重症度,心不全症状,LVEF,および左室収縮末期径からの判断が推奨されている(図15,図16).しかし,左室機能の低下を示す患者ではリスクが高く,遠隔期生存率はかならずしも良好でない.左室収縮力が高度に低下している患者では,逆流の消失は後負荷増大となり,術後低心拍出症候群をきたしやすく,手術死亡が多いため,手術の適応とはしがたい.したがって,左室機能低下に伴う高度MR患者は,手術の適応としていないのが現状である.このため,高度MRであっても,LVEFが30~40%の患者では62%,LVEFが30%未満の患者では

4.3 僧帽弁閉鎖不全

4.3.1 MRの病態

4.3.2 治療86%で,手術が実施されていない721).さらに慢性閉塞性

肺疾患などの心臓以外の全身麻酔が困難な重篤な合併症例では,手術を実施できない.

edge-to-edge法とは,僧帽弁前尖・後尖の中央に糸をかけて8の字状に縫合する外科手術法の一つである.この方法を経カテーテル的に可能とすることを目的に開発されたデバイスが,“MitraClip ®システム”である.本デバイスは,僧帽弁を把持するクリップ部とそのデリバリーシステム,スティーラブルガイドカテーテルから構成される(図17).全身麻酔下に,経食道心エコーガイド下で治療手技が実施される.経大腿静脈的に心房中隔穿刺術を行ったのち,留置されたワイヤを通じて左心房までシステムを到達させる.続いてX線透視装置および経食道心エコーガイド下でクリップ先端を進め,僧帽弁の逆流部位を通し左心室までクリップを進め,開いたクリップのArm-Gripper間に僧帽弁前尖および後尖をつかみ,両弁尖が十分に把持されたことを確認したのちに逆流の減少を評価する.左室流入波形より僧帽弁圧較差を評価し,MRの改善が十分得られたことを確認したあとにクリップを固定し,留置を行う(図18)

722).

逆流減少が不十分,あるいは十分な減少が得られても僧帽弁圧較差が基準以上に上昇するようであれば,把持したクリップを開放し,別の位置にずらして同様に固定を行う.1個のクリップ固定で逆流の減少が不十分であれば,2個目を追加することもしばしば行われる.

2018年4月よりわが国で使用可能となったデバイスは, “MitraClip ®NTシステム”(第二世代デバイス)であった.現在は,“MitraClip ®G4システム”という第四世代デバイスが使用可能となっている.第二世代デバイスに比べてクリップarmがより幅広いもの(NTW/XTW),より長いもの(XT/XTW)など,計4種類のクリップ選択が可能となり,各gripperがそれぞれ独立して弁尖の把持が可能となるなどの特徴を有している(図17).

欧米では,開心術が不可能あるいは高リスクな重症心不全患者を対象に,MitraClip ®が施行されている.すでに10万人以上の患者に施行されており,経カテーテル僧帽弁治療デバイスのなかでもっとも多くのエビデンスを有している.欧州では2008年に一次性MR,二次性MRに,米国では2013年に一次性MR,2019年に二次性MRに対して承認された.

欧州心臓病学会(ESC)/欧州心臓胸部外科学会により共同で策定された「心臓弁膜症に対する治療のガイドライン

4.3.3 Edge-to-Edge法による僧帽弁逆流の治療

4.3.4 MitraClip ®治療の欧米での位置づけと現状