p.88 抽出テキスト
先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 心エコーにより弁膜開口と可動性の改善を逐次確認する.そして重篤な逆流症の発生を未然に防ぐと同時に,最大の弁口面積を得るようにする. 成功率や合併症の発生は施設や術者の熟練度に多分に依存している.治療効果の平均像として,弁口面積が1.0 cm 2 から1.8~2.2 cm 2 へ増加し,経弁圧較差は13 mmHgから6 mmHgに減少し,左房圧は24 mmHgから19 mmHgに減圧する713).PTMC後に左房のコンプライアンスとポンプ機能が改善するため,心拍出量は平均20%増加し,肺動脈圧は10~25%減少する714).心房細動の改善がみられるのは20~25%の患者にとどまっているが,左房圧負荷による伸展のほかに,リウマチ性病変の心房筋への波及が発症に大きく関与していると考えられている. 合併症として,有意なMRを12.5%の症例で認めており, 2.5%の患者では重症MRのために入院中に外科的弁置換術が行われた715).入院中の死亡率は1%未満にとどまっているが,おもに高齢者,全身状態が不良な患者,ならびに心原性ショックに対して施術された患者にみられている.活動性の左房内血栓を確実に除外し,血栓が存在する場合も適切な抗凝固治療を十分期間行うことにより,脳梗塞の合併は1%前後に抑えられている.心穿孔は心房中隔穿刺術に関係するものとカテーテル操作に起因する例をあわせて約1%報告された. 肺体血流比が1.5を超える心房中隔交通の残存が2%の症例でみられるが,左房内圧が高い症例に発生しやすい傾向がある. 長期予後ともっとも強い相関関係があるのが,Wilkinsスコアである(表73).弁膜の形状が理想的な若年患者であれば,5年後のイベントフリー生存率は80%といわれている.一方,高齢患者にみられるように弁膜の変形が高度な症例では,5年後のイベントフリー生存率は60%に低下することが報告されている. 長期予後に影響を与えると同時に心血管イベント発生(死亡,外科的弁膜手術,再PTMC)の増加につながる因子として,Wilkinsスコアが8点を超えること,高齢患者,外科的交連裂開術の既往,術前の心機能がNYHA心機能分類IV度,術後の肺高血圧の持続,術前MRが2度以上もしくは術後MRが3度以上であること,そして心房細動の持続をあげることができる716-718). 弁膜の性状が良好な若年層に限ると,PTMC成功例の12年間のフォローアップでは,その予後は外科的交連切開 4.2.4 短期的効果と合併症 4.2.5 長期成績とそれを規定する因子術群と同等の成績であったという報告がある719). 以下の臨床的状況下では,PTMCは困難であるか不適応となる. 1胸腰椎の著明な変形,胸縦隔内の疾患または腫瘍によ る心臓の変形や圧迫などにより,心房中隔穿刺術が著しく困難な症例. 2新鮮な左房内血栓,または抗凝固療法に抵抗を示す左 房血栓を認める症例.とくにその存在位置が重要であり,左房壁に付着した血栓や可動性のある血栓については,絶対禁忌となる.左心耳血栓については,十分な抗凝固療法を3ヵ月以上施行したうえで,注意深い施術操作により左心耳へのデバイスの迷入を避けることができれば,可能であると考えられる720). 3術前に中等度~高度なMRが認められる症例. 4弁膜の変形と石灰化が著明な症例(Wilkinsスコアが 12点以上). 5心臓血管外科的手術の対象となる他疾患(バイパス手 術が必要な冠動脈疾患,三尖弁縫縮術が適応となる重症三尖弁逆流[TR],重症三尖弁狭窄[TS],重症大動脈弁逆流[AR]を合併した症例については,MSとあわせて一括して外科的に治療することが望ましい.とくに重症ARの合併例では,すでに大動脈弁の拡張期逆流により左室に著明な圧容量負荷が加わっており,PTMCにより経僧帽弁流入血流量が増加すると血行動態が破綻する可能性がある.そのため,外科的 4.2.6 PTMCの不適応症例(表75) 表75 PTMC が不適応と考えられる症例の推奨とエビデン スレベル 推奨クラスエビデンス レベル 僧帽弁の変形・石灰化が著明であり,とくに交連部石灰化を有する例に対するPTMCは推奨されない. III No benefit C外科的治療の適応となる連合弁膜症 (重症AR,TR,TSの合併)または冠動脈バイパス手術が考慮される重症冠動脈病変を合併する症例に対するPTMCは推奨されない. III No benefit C新鮮な,もしくは治療に抵抗性を示す左房内血栓を有する症例に対し,PTMCは行うべきではない. III Harm C 3度以上のMRを合併する症例に対し, PTMCは行うべきではない. III Harm C心房中隔穿刺術が著しく困難な症例に対し,PTMCは行うべきではない. III Harm C