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p.87 抽出テキスト

いてPTMCの適応が支持される(クラスIIa).

1急性肺水腫や心停止を呈したMSに対して,緊急の血

行動態再建を目的とする場合. 2妊婦または妊娠を希望する患者のうち,現在無症候で

あっても,妊娠ならびに出産に伴う血行動態負荷による心不全発症が懸念される場合706). 3無症候患者であっても,全身麻酔下で外科手術が予

定されており,術中の血行動態安定化が必要な場合.妊婦症例のPTMCは,妊娠後期に入って胎児の器官形成が完了して安定した段階において,放射線使用を最小限にして行う.

経静脈的経心房中隔的アプローチにより,左房を介して僧帽弁拡張形成デバイスを導入する.複数のバルーンを用

4.2.3 PTMCの実際いたダブルバルーンテクニックや金属製交連切開術用デバ

イスなどが使用されたこともあるが707),現況においては,イノウエ・バルーンの治療効率,有効性ならびに安全性が確立されているために,同バルーンによるシングルバルーンテクニックが主流となっている708).

MS症例に対する心房中隔穿刺術においては,左房拡張が著しいために,通常の解剖と比較して穿刺点が後下方に偏位することが多い.バルーンカテーテルの操作性を考慮すると,穿刺位置の選択はきわめて重要であり,一般的に, 1左房下縁から左房内に入ること,2高位の心房中隔筋性部の穿刺を避けることが勧められている709).心腔内エコーの使用は,心房中隔穿刺術を適切な位置で安全に施行するうえで有用である.左房内に挿入されたワイヤに沿って,イノウエ・バルーンカテーテルを挿入し,スタイレット操作により左房から左室にバルーンを導入する.その際,バルーンカテーテルが弁下部組織にトラップされていないことを確認したうえで拡張を始める.

注入する希釈造影剤量に応じて,単一のイノウエ・バルーンを用いて拡張径を段階的に調節する.患者の身長,年齢,臨床的背景,MRの併存,弁膜変形ならびに石灰化の重症度を総合的に判断して,開始拡張径,ステップアップの程度,目標最終拡張径を推定する.選択した目標最終拡張径から3~4 mm減じた径から開始して,血行動態の改善やMRの出現に留意しながら,1~2 mm幅で拡張径を段階的に増大させながら拡張操作を繰り返す710).

PTMCの治療効果のメカニズムは,癒合した交連部に裂開を形成することである.そのため,心エコー上の弁膜性状は,治療効果を予測するうえで重要な手がかりとなる.

交連部癒着が軽度にとどまり両側対称に分布し,弁腹部が柔軟で肥厚がないために拡張期にドーム状変形を示すような形状が,PTMCの理想的な適応症例である711).一方,弁膜変形と石灰化が重症化するにつれて,治療効果は低下し,リスクが増大する.交連部の一方に高度な癒着が偏在している場合には,過拡張により非癒着側に過裂開が生じる可能性がある.癒着の重症化に従って交連部に石灰化が生じると,拡張に抵抗して病変部の離開が困難になる例が増加する.弁尖,弁腹に硬化肥厚が進行した例では,交連部癒着の離開は達成されても,開口のパターン(スリット状の開閉)に改善が得られないために,不十分な弁口面積にとどまることが多い.弁尖・弁腹に石灰化病変が存在する場合,バルーン拡張により周囲の脆弱な非石灰化部分に裂傷が発生することがあり,前尖に高度裂傷をきたすと重篤なMRの原因となることがある712).

いずれの症例も慎重な段階的拡張法を行い,術中血行動態評価による左房圧と拡張期経弁圧較差の減少と,術中

表74 MS に対するPTMC 適応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

症候性 (NYHA心機能分類II ~IV度)の中等度以上MS(弁口面積が1.5 cm2以下)で弁形態がPTMCに適している症例に対し,PTMCを行う. I B無症候であるが,肺動脈収縮期圧が安静時50 mmHg以上または運動負荷時60 mmHgの肺高血圧を合併している中等度以上MSで,弁形態がPTMCに適している症例に対し,PTMCを行う. I B臨床症状が強く(NYHA心機能分類III ~ IV), MRや左房内血栓が合併しないものの,弁形態は,かならずしもPTMCに適しておらず,手術のリスクが高いために外科的弁膜置換術の適応が困難な症例に対し,PTMCを考慮する. IIa C症候性(NYHA心機能分類II ~IV度)の弁口面積1.5 cm2以上のMSで,運動負荷時肺動脈収縮期圧が60 mmHg以上,平均肺動脈楔入圧が25 mmHg以上,または平均左房左室間圧較差が15 mmHg以上のいずれかに該当する症例に対し, PTMCを考慮してもよい. IIb C無症候性であるが,新たに心房細動が発生したMSで,弁形態がPTMCに適している症例に対し,PTMCを考慮してもよい. IIb C軽症のMS症例に対し,PTMCを行うべきではない. III Harm C活動性の左房内血栓または中等度以上のMRを有する症例に対し,PTMCを行うべきではない. III Harm C