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p.77 抽出テキスト

i. 大動脈弁輪のサイズ測定とoversizing rate

術前の正確な大動脈弁輪サイズ測定は,致死的合併症である大動脈弁輪部破裂や術後長期予後悪化因子である弁留置後弁周囲逆流(PVL) 607, 608)を予防するうえで重要である.弁輪の面積,周囲長,長径,短径の計測を行って弁輪サイズを決定し,人工弁のサイズ選択を行う596).人工弁のサイズ選択では,各人工弁メーカーから提供されるサイジング表,および人工弁-大動脈弁輪サイズ比を表す“oversizing”が有用である.oversizingは以下のように定義される.

oversizing(%)=(人工弁ノミナルサイズ/測定弁輪サイズ-1)×100

バルーン拡張型人工弁においては,過剰なoversizingは大動脈弁輪破裂のリスクとなり,過少なoversizingはPVLのリスクと考えられている609-611). ii. 弁輪部石灰化および左室流出路の石灰化(LVOTカルシウム)

弁輪部石灰化および左室流出路(LVOT)の石灰化(LVOTカルシウム)の重症度評価を行う.LVOTカルシウムの重症度は,定性的あるいは半定量的に評価され,下記のように軽度,中等度,重度に分類される596, 609, 612).軽度,中等度,重度のLVOTカルシウムの例を画像に示した(図14a). 1 軽度: 大動脈弁輪と左室流出路において石灰化が「1つ」で,「5 mm以内の長さ,かつ周囲長の10%未満」609, 612). 2 中等度: 「石灰化が2 つ」または「石灰化が1つでその石灰化が5 mm以上の長さを持つ,または周囲長の10%以上を占める」609, 612). 3 重度: 「大動脈弁輪やLVOTの内腔に突出する石灰化がある」596)または「3 つ以上の石灰化がある」または「1 つの石灰化が10 mm以上の長さ,または周囲長の20%以上を占める」609, 612).

重度のLVOTカルシウムは,大動脈弁輪破裂のリスク因子609, 613)である.また,バルーン拡張型人工弁においては,過剰なoversizingは大動脈弁破裂のリスクになることから, LVOTカルシウムの存在下ではoversizing率にとくに注意を払う必要がある609, 610, 612).問題なのは重度のLVOTカルシウムは,同時にPVLのリスク因子であることである611, 612, 614-617).デバイス留置後に有意なPVLとデバイスの拡張,圧着不良を認めれば,後拡張施行が選択肢となるが,後拡張が弁輪破裂のリスクとなりうる.実際に重度のLVOTカルシウムがある患者は,ない患者に比べて後拡張を要する場合が多い618).理論上,自己拡張型人工弁は大動脈弁輪破裂を起こさないが,後拡張時に弁輪破裂に到る場合もあるため注意が必要である.重度のLVOTカルシウムがある症例においては,観察研究からバルーン拡張型人工弁より自己拡張型人工弁が大動脈弁輪破裂のリスクが低いと考えられているが619),エビデンスは不足している.いずれのデバイスを用いる場合にも,重度

のLVOTカルシウムがある症例では,高リスクであることは認知すべきである. iii. 冠動脈高,SOV径,大動脈弁尖評価

SOV径および冠動脈高の測定は,弁留置後冠動脈閉塞のリスク評価に有用である.冠動脈の高さの測定では,大動脈弁輪がなす平面と冠動脈入口部までの鉛直方向の距離を測定する.「冠動脈の高さが12 mm未満」と「SOV径が30 mm未満」の両者が並存する場合に,とくに冠動脈閉塞リスクが高くなる596, 620).また,エビデンスは不十分であるが,大動脈弁弁尖の石灰化も冠動脈閉塞リスクであることが示唆されている621)(図14b).冠動脈閉塞高リスク症例では,冠動脈プロテクションも考慮すべきである622, 623).

バルーン拡張型人工弁の場合には,人工弁のステントフレーム自体またはステントフレームで圧排された大動脈弁が直接冠動脈入口部を閉塞することで冠動脈閉塞が発生する.一方で,自己拡張型人工弁はバルーン拡張型人工弁のような直接圧排による閉塞のほかに,自己拡張型人工弁のインナースカート部分でSOV自体を閉塞する可能性がある.とくに, STJ高が低く,STJ径が小さい症例に自己拡張型人工弁を高い位置に留置した場合には,後者の機序による閉塞も起こりうる624, 625)(図14c).自己拡張型人工弁の製造メーカーが提供するサイジングチャートには,各デバイスサイズの最小SOV径と最小STJ高の記載がある.推奨基準に従うことでリスクを低減すると考えられる. iv. STJ径,STJ高

STJ径はバルーン拡張型人工弁使用時の大動脈損傷リスクに関係すると考えられている.人工弁径や人工弁留置前バルーン拡張時のバルーン径に比して,STJ径が小さく,石灰化を伴う場合には,大動脈損傷をきたす可能性があるため注意を要する.ただし,その頻度は明らかにはなっておらず,ごくまれであると推察される596, 626, 627).また,STJ径が小さく,STJ高が低い症例の場合には,自己拡張型人工弁使用時のSOV閉塞のリスクとなる(図14c).とくに自己拡張型人工弁が高く留置された場合には,そのリスクが高まる624, 625). v. 二尖弁

CTを用いて二尖弁の有無と二尖弁の形態を評価する628-631).二尖弁患者における術前CTの大動脈弁輪の測定は,三尖弁同様に弁輪を用いる632).二尖弁に対する新世代デバイス(SAPIEN3,EvolutR)を用いたTAVIの有効性と安全性は,三尖弁に対するTAVIと同等であることが観察研究から示唆されているが633-635),ランダム化比較試験は行われていない633-636).とくに,低リスクの患者に対するランダム化比較試験(PARTNER3 trial,Evolut low risk trial) 57, 58)からは,二尖弁は除外されている.日常臨床で遭遇する若年者の