GL検索 v0.1.0
画像は 75 ページを描画したものです
page 75

p.75 抽出テキスト

ルを回避することが望ましい. ii. TAアプローチ(表66)

TA アプローチはSAPIEN導入初期から用いられ,確立したアプローチの一つである589, 599, 600).TAは唯一の順行性挿入経路であるが,自己拡張型デバイスではTAに対応するものがなく,SAPIENシリーズのみがとりうるアプローチとなっている.また左肋間小開胸での心尖部露出を行うため,全身麻酔が施行できない症例では選択することができない.

TAでは穿刺部破綻から生じる大量出血を回避することが重要である.そのため,心尖部の菲薄化・瘤状変化をきたしている症例は,適応から除外することが推奨される(図13f).穿刺部位としては解剖学的心尖部ではなく,その前側方の左室前壁を用いることになる.心尖部穿刺部位を確実に露出するためには,事前に心尖部の偏位の有無,胸腔の高度癒着を疑わせる所見の有無をCTで確認することが重要となる.アプローチ肋間の決定の際には,CTのみならず超音波検査もしくはX線を併用することが推奨されるが,これは吸気位/両上肢挙上位で撮像されるCTは手術体位/呼吸変動に反映されないからである.

心尖部穿刺部位には巾着縫合をかけて出血をコントロールするが,その際に冠動脈左前下行枝に近づかないよう注意する必要がある.また,冠動脈バイパス既往がある症例ではバイパスグラフトの損傷を回避するため,事前に冠動脈/バイパスグラフトの走行をCT等を用いて確認することが推奨される.

TAでは心筋を貫いてデバイスを挿入し,その後,縫合止血処置を行うため,左室の局所的機能低下が生じる可能性が報告されていることから601),高度低心機能症例においては慎重な適応判断が必要となる.Edwardsの新しいシステムにより,low profile化が進んだため,以前と比較して巾着縫合方

法および術後止血処置が容易となり,手術リスクはきわめて軽減できたと考えられる. iii. TAo/DAo アプローチ(表67)

TAo/DAo アプローチは,上部胸骨部分切開もしくは右肋間小開胸にて露出された上行大動脈から直接デバイスを挿入する手技である.多くの心臓外科医は,心尖部よりも上行大動脈のとり扱いに習熟しており,デバイスではSAPIENのみならずEvolutも選択できることなどから,近年ではTAに変わるアプローチとして選択される機会が増加している.同じ経胸郭アプローチであるTAとの比較では,TAを上回る良好な成績が報告されている600, 602-605).TA同様,全身麻酔が施行できない症例では選択できない.

切開法としては,上部胸骨部分切開法と右肋間開胸法(通常第2肋間)があるが,事前にCTによる上行大動脈の評価が切開法の選択の参考になる(図13g).また,冠動脈バイパス既往を有する症例において開存した右内胸動脈グラフトは,上行大動脈を横切るため,損傷リスクが高くなることからTAo/DAoの選択を回避するのが推奨される.

TAo/DAoでは,上行大動脈穿刺部位から大動脈弁輪までの距離が制限されいる.そのため,シース挿入の深さを確保しつつ,デバイス留置操作を行ううえで最低限必要な距離(Evolut: 6 cm,SAPIEN: 5.5~6.0 cm)を事前に計測し,穿刺部位を決定することが推奨される.限定されたワーキングスペース内でシースを挿入することになるが,シースの走行が大動脈弁輪に対して直線状に配置できる穿刺部を選択する

表65 TAVI における代替アプローチを施行する体制の推

奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

大動脈・心尖部の破綻や出血に即応可能である,経験が豊富な心臓血管外科,麻酔科,コメディカルを含むハートチームを構成する. I A代替アプローチを行う際の透視装置・モニター及び各機材の配置,人員配置を事前に十分にシミュレーションを行う. I A代替アプローチを行う前に,チームとしてTFアプローチによるTAVIを経験することを考慮する. IIa C施行経験のない代替アプローチを行う際,TFアプローチ手技の経験の多寡によらずproctorの招聘を考慮する. IIa C表66 TAVI のTA アプローチにおける推奨とエビデンス

レベル

推奨クラスエビデンス

レベル

胸部thin slice CTによる心尖部穿刺位置・アプローチ肋間/ 冠動脈バイパス既往例におけるバイパスグラフト走行の確認を行う. I C超音波検査もしくはX線によるアプローチ肋間を確認する. IIa C高度低心機能例に対し,TA アプローチを考慮してもよい. IIb C心尖部の菲薄化・瘤状変化例に対し, TA アプローチを行うべきではない. III Harm C心尖部縫合(手術)を行っている症例に対し,TA アプローチを行うべきではない. III Harm C左胸腔の高度癒着を疑わせる胸膜肥厚・胸膜石灰化を有する症例に対し,TA アプローチを行うべきではない. III Harm C